とある試験第二関門
t「まさか、妖獣を倒すものがいるとはね。これだけの素質があるものがいるとは。それも紛争のない街から出てくるとは…」
「四の五のいわず、次の関門をだせ」
「そう急かしなさんな。第二関門は、内なる戦い」
「内なる戦い? どういうことだ?」
「つまり、自分自身との戦い」
「どういうことだ」
「みればわかるさ…。さあ出よ! 第二の関門!!」
謎の声がそういうと、煙が吹き出て、それが消えると、ミラーの目の前には、ミラーが立っていた。
「オレがいる…?!」
「そう、これが第二の関門の正体。ミラー君、君は、君自身を倒すのだ。」
「そういうことか」
「ありがちと思わない方がいい。これは今の君自身ではなく、君の望む未来の君なのだ」
「未来のオレ?」
「そうだ。晴れて、鉄仮面をかぶり、悪意を押し込め、想造魔銃剣士になった君だ」
「なるほど…」
実体のあるミラーと、幻影のミラーが対峙する。ジリジリと距離を詰め合うが、攻撃には打って出ない。
「スキがない…。どう攻めても、防御されそうだ…」
剣魔法『ラローシュ』を唱え、魔法剣を携えていた実体のあるミラーだが、いったんそれを納める。
「常時剣を出していたら、魔力の無駄遣いだ…。魔法の剣は威力は絶大だが、それだけ食う魔力も膨大だからな…」
剣を引っ込めとなれば、肉弾戦に出るしかない。だがスキを見せぬ幻影のミラーの前に、実体のあるミラーは、蛇に睨まれたカエルのようだ。
「攻撃にでない? ならオレの方からいかせてもらう」
「しゃべれる?!」
「口があるなら、言葉が言えて当然だろう。不思議がることはない…」
先に攻撃に出たのは、幻影のミラー。逃げも隠れもしない。正々堂々と正面から攻めてくる。
「は、はやい!!」
幻影のミラーは、スピード自慢の獣のように足を運び、差をつめる。
「君とオレとの絶望的なレベル差を見せてあげよう…。剣魔法『ララ・ラローシュ』!」
ララ・ラローシュは、ラローシュの上位互換。刃がラローシュの4倍の太さで、威力は10倍に及ぶ。
「なんだ、あの大きさは!!! 食らったら、ひとたまりもない!!」
刃が巨大なだけに、スピードも劣るのが幸いした。実体のあるミラーは、寸でのところで、攻撃をかわす。
巨大な刃先は、地面をえぐりとる。真っ二つの割れた地面は、大地震が起きたかように、深い亀裂が刻まれる。
「逃げ切れなかったら、死んでたぞ…。だが、この攻撃でオレが優位に立った。ラローシュの魔力消費は膨大。上位魔法となれば、それ相応の魔力を消費しているだろう。もう魔力の残りはないはず」
「それは見くびりすぎだよ」
「なに?」
「この程度の魔法で、魔力を底にしては、想造魔銃剣士の名がすたる。それでは証明してあげよう。さらなる上位互換魔法『ララララ・ラローシュ』!!!」
「なにい」
身長の4倍以上の剣が現れ、それをものすごい勢いで振り回すと、刃先の回転の中にいた実体のあるミラーは、何重も、胸を切り刻まれて、大ダメージを受ける。
「ぐ…」
胸からドロドロと流血をし、片膝をつく。
「さ、さすが、想造魔銃剣士だ。とんでもない実力を秘めている…。くそ、どうしたらいい? さっきの妖獣の一戦に魔力を使いすぎだ。残る魔力はわずか。回復、攻撃、補助のみっつを成り立たせるほどの魔力はない。せいぜい使えてふたつ…。攻撃魔法と回復にするか。補助魔法と攻撃魔法にするか。それとも補助と回復…。みっつの選択肢がある。攻撃魔法と回復魔法。これを取るのがありふれた戦術かもしれないが、これはまずい。相手はレベルの高い想造魔銃剣士だ。補助魔法使わずして、ろくな攻撃を仕掛けれるわけがない。補助と回復? これもまずい。距離をつめる肉弾戦を仕掛けるのは、距離を保つ魔法を使う相手に分が悪すぎる。ならば、補助と攻撃魔法だ。これしかない! この体じゃ、スピードも攻撃力も落ちるが、補助魔法を使い、相手をオレのレベルまで落とし、攻撃を仕掛ける。体の痛みがなんだ。それくらいガマンだ」
なるほど、さすが実体のあるミラーといえよう。わずか数秒の間に、これだけ思考をめぐらし、適切な答えを導かせるのだから。
だが、奇妙なことがある。
幻影のミラーが攻撃をしかけないことだ。わずか数秒とはいえ、スキをみせていたのは事実。想造魔銃剣士ならば、そのスキをつくことは十分可能のはずだが。
「考えはまとまったか?」
「なに」
「待っていたんだよ。オレは想造魔銃剣士。弱りきり逃げ道を探す者に止めなんて、マネしちゃあ、想造魔銃剣士の名がすたる」
「そうか。御慈悲か。なるほど。さすが想造魔銃剣士だ、清々しいな。だが、その余裕が命取りだ。戦場は情けをかkたら負けだぜ」
実体のあるミラーは、ズボンをやぶき、それを包帯のようにして、胸にまき応急措置をとる。息も整い、魔法を使わずして、一応の回復をみせた。
「次だ。次のたったひとつの攻撃で、お前を地面に沈めてやる」
「やれるならどうぞ…」




