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とある試験会場

「珍しいな。紛争のない街から、鉄仮面の譲渡を求めてくるとは…。わかってるな? 何が待ち受けているのか。怖気付いて逃げ出すのなら、いまのうちだぞ」

「覚悟している」

「いい目をしている。いい受け答えをしている。その君が、どうして、鉄仮面を欲するのか」

「わかっているだろう、白々しい。誰もがわからずといられないんだ。ただオレに出会うだけで」

「そう、自分を卑下することないのぞ…。よし、みっつでいい。今から繰り出す、みっつの関門をクリアしたら、君に譲渡しよう。たったみっつだよ、みっつ。まあ鉄仮面を欲しがるやつなんて、ろくでおないやつばかり、ひとつの関門もクリアできないのばかりだけどね。君はどうだろうか…」

「受けて立つ。それからオレの名前はミラーだ。名前で呼んでくれ。名前で呼ばれないと、どうも疎外感で身の毛がよだつ」

「失礼…。意外と寂しがり屋なんだね」

「……」

「それでは、第一の関門を解き放つ。いでよ、最強妖獣エルビラ」

 すると、突然、ミラーなる男の前に、巨大な化け物が現れた。ミラーは、警戒心から、思わず、後ずさりする。

「辞めるなら、いまのうちだぞ。妖獣エルビラはビル破壊のアルバイトをさせているんだ。こいつのストレス解消と私の懐を温めるためにね。一瞬の解体に関わらず、割のいいバイトだ」

 ビルを一瞬にして破壊するパワーの持ち主だ。ミラーなる謎の男。太刀打ち出来るのか。

「化け物か。オレもよくそういわれたもんだ…」

「ほう…。身なりが整って、端正な顔立ちをしている君、いやミラー君がね…。それはどういう意味なのかな…。怪物クラスの才能を秘めているのか…それとも…」

「何度も何度も白々しいぞ…」

「ふ…」

 エラビラは、巨大な右手の掌握を振りかざし、ミラーを捕まえに行ったが、ミラーはひらりと交わす。

「ほう…。スピードはあるようだな。エルビラはああ見えて俊敏さも兼ね備えているのに…。だが、頭脳の方はどうかなあ…。瞬発的な判断力には欠けるかな」

 ミラーは、空間の広く開いている方に飛ばず、狭い方によけてしまったのだ。エルビラが差を詰めると、ミラーの逃走経路は、完全に塞がれた。

「チェックメイト…。ギブアップをしろ。死にたくなければね」

「……あったそばから、人を馬鹿呼ばわりしてくれるじゃなないか…。オレは、馬鹿じゃないぜ。どの方向に飛んでも、オレが勝つことには変わらないんだ」

「どこから吹き出てくる自信だ」

 エルビラがしっぽを振り回そうとしたとき、ミラーの顔つきが替る。

「怪物と呼ばれる同士妙な親近感がわくが、これもオレの夢実現のため、死んでも恨むなよ…」

 ミラーの全身から、眩いばかりの光が発せられる。

「ほう…。これは光の魔法…『マクラウス』…」

 光で目をやられたエルビラが、ひるむと、ミラーはすかさず、拳と蹴りのラッシュを叩き込む。

「なるほど、えらそうな啖呵を切ることはあるな…。速くそれでいて破壊力も十分」

 そして、ミラーの手ぶらだったはずの両手に、一本の剣が握られている。

「今度は、剣の魔法『ラローシュ』…か」

 突然現れた神々しいその剣で、ミラーはエルビラを真っ二つに斬りつける。

「……!! 切れ味もとんでもない!!」

 そして締めは、ボルケスの上位互換バージョン『エル・ボルケス』の雨あられ。エルビラは何重もの炎に焼き尽くされて、絶命する。

「どうだ…。これが光の剣士ミラーの実力の一片だ」

 こえだけの攻撃と魔法の連続で、ミラーは息一つ乱してはいない。

「攻撃力だけでなく、体力も十分のようだな…。驚いた…久々にみる逸材だ…」

「お褒めの言葉はありがたいが、オレの目的は、あなたの持つ鉄仮面だけだ…。次の関門を早く出して来れ…」

「そう急かすこともないだろう…。ひとつミラー君に聞きたいことがある」

「なんだ」

「どうして鉄仮面が必要なんだ」

「いわなくても分かるだろう? あなたの鉄仮面を狙うやつらの目的はただひとつだけだ」

「想造魔銃剣士試験対策か…」

「想造魔銃剣士になるためには、戦いや魔法の実力だけではない…。心が整うことも求められるんだ…」

「そうだな…。だから、心のやましいならず者たちが、私の鉄仮面に目星をつけてくる。だが、ミラー、君はどうだ? 一見、どうみても立派な青年…。綺麗な心といっても、聖職者である必要はない。普通の心の持ち主なら、通るはずだぞ」

「ふん…。白々しい…。オレが子供の頃からずっとだ。ずっと、ずっと、ただオレも一目見ただけで、誰もがオレを遠ざける。誰もがだ。クラスの学級委員も、担任の先生も、優しそうな近所のおばさんも、人生に達観した老人も、そしてオレの実の両親までも…。誰もが、オレを一目、見ただけで、レッテルを貼り付ける…。そして影でオレのことを怪物だの化け物だのいうんだ…。あなたもそうだろ…。あった瞬間にわかったはずだ…。オレが醸し出すどす黒い悪意が…」

「……ああ…ひしひしと感じていたよ…。どうしてただろうね…。どうして君のような素質を持った青年に悪意がまとわりつくのか…」

「だから必要なんだ。鉄仮面が…。心の一部分を取り出し、押し込めることができる鉄仮面がなければ、オレは生涯…想造魔銃剣士になれないんだ…」

 ミラーが求める鉄仮面とは、かぶった者の意思で自由に心の一部を押し込める性質を秘めた代物である。

「だがどうしてかわからないが、オレとごく普通に接してくれた者が一人いたんだ…フアンズという同級生だ…。そいつもオレくらいの才能を秘めた男だ。今頃、想造魔銃剣士になっていてもおかしくないくらいにな…。オレはどうしても想造魔銃剣士になり、フアンズと同じ世界にいたいんだ」

「そうか…。それは悲しいなあ。想造魔銃剣士くらいすぐにもなれそうなミラー君が…。だからといって容赦はしないよ…。第二関門は一筋縄ではいかないぞ…」


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