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白い海原

作者: 檸檬

時雨、時雨て 夕刻に霧雨が止んだ


子供の鼻詰まりが苦しいというので


耳鼻科にゆく


昨日まで両方の鼻の穴に詰めていた


白いティッシュ


沢山の息吹と鼻水と鼻詰まり


花曇りの街角は


くれてゆく


ゆっくりとくれてゆく


時雨明けの春宵は


鳥たちと虫の声少しずつ


合わさって


くれてゆく 


ゆっくりとくれてゆく


なめらかな山並みの上を


白い霧が昇る


くれてゆく 


ゆっくりとくれてゆく


春宵の夕陽は


白い明かりを放ったまま


あかくあかくならないように


やさしくやさしく夜に溶けてゆく


雲が白い光を包みながら


どこまでも青く澄む雲海となる


街灯のひかりも車のヘッドライトも

走り去る音も


湿度が上がり

学校の体育館に響き出したシューズの

キュッキュッという音も


少しずつ白いまま 


くれてゆく 


ゆっくりとくれてゆく


誰かを思う気持ちも


転がり 息詰まり 


それでも白いまま 白いまま


ゆっくりとながれゆく


くれてゆく 


ゆっくりとくれてゆく


あなたへの思いも 白いまま 


くれてゆく 


ゆっくりとくれてゆく


見上げると 白いまま浮かぶ月 


 夏への扉は淡い輝き


鯨の細い白ヒゲが波打つ


ふるさとへ泳いでゆく海原


いつだって くじら、この胸の中にいて


あけてゆく ゆっくりとあけてゆく













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― 新着の感想 ―
[良い点] 昼から夜、春から夏、といった移ろいが鮮やかにイメージできます。何か平安時代の和歌を読んでる感じもして、日本語と日本の風景の両方の美しさが際立たせ合ってる感じがします。特に好きなのは白いまま…
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