旅路にて
俺達は、あれからエルダの街を目指して旅をしている。随分と歩いて来たが‥ここは何だ?
辺一面にゴミの山が出来てやがる。
空気は淀んで、水は汚染されて、辺りも薄暗く
控えめに言って、死んだ土地だ。
「見てみろよ花形」ケホ
「なんだなんだ?」ケホ
「水の中‥大仏みたいなのが沈んでんぞ」
「うはぁこえぇ」
ゴミだらけの湖の中に、巨大な人工物と思わしき
塊が沈んでいた。それは、俺たちのよく知る
仏像だ‥この世界にも、宗教の類は有るのだろうか?
「見て見て福田」花形が空を指差す
指の指す方を見てみると、煙のような霧のような淀んだ雲の中に、巨大な女の顔が見えた気がした
すぐに雲の間に消えてしまったので、よく見ることが出来なかった‥
「なんだ今の‥こ‥こぇぇ」
俺達は「こぇぇこぇぇ」と咳ゴミながら、『死んだ土地』を通り抜けた。
その世界の終わりみたいな土地は随分な広さがあった。街一つ分は有っただろうか‥
「そろそろ晩飯になりそうなもん捕まえ寝床作んねぇとな」
「メシは任せて」と花形が言うので
俺は寝床の用意をすることにした。
それにしても、エルダの街まで随分と距離が有るんだな‥こりゃあケチらずに、街から出てるキャラバンに同行するのが得策だったかもな‥
俺一人なら別に問題無いんだが‥今の花形にどれほどの体力が残ってるのかが分からないからな‥
「こうやってのんびりとするのも悪くねぇよな」
「うん‥私が生きてたころって、みんな仁義とかメンツとか‥そういったものを守るために必死だったから‥自由そうに見えても辛いことばかりだったかも」
「違いねぇな‥俺だってそうさ‥国の為家族の為
命を落とすことに躊躇いも何も無かったからな‥
勿論人を殺すことにも‥心が休まる事なんて無かったわな」
「後で風呂でも入るか‥」
旅路に水を張ることなどそうそうは出来ないのだが、
珍しく、豪雨に撃たれた後なので、自然の水溜りが出来ている。
「ねえ福田メシ‥出来たよ」
「なんだコレ?」
「分かんないけど美味そう」
確かに美味そうだ‥
さて、夕食も終わり日も沈んでしまった。
いつものように、ねぐらを作り、布で屋根を作る。
雨が降れば、布に染み込みそれは飲水にもなる。
今日はやけに星が綺麗だった。まるで雪が降った後の澄んだ夜空のようで、こういった星空を俺は戦場で
幾度も見てきた‥然し、一度も心を打たれた事は無かった。それ程に余裕も無かったと言う事だ。
「お前‥本当に良いのか‥普通は外見って大事にすると思うんだが‥」
「またその話?しつこいな‥まぁ確かにそうなんだろうけど‥私、別に外見とかこだわったことが無くってさ‥それに‥今まではなんだか何時もムシャクシャしてて、何時も何かを恨んでたんだよね‥だからかな
今、こうして空を見てるだけで泣きそうな程綺麗な空だな~とか思うんだよね‥」
「きっと前みたいに戻っちゃうと、今感じてることもまた分かんなくなんのかなぁって‥だったらこのまんま‥有りの儘の世界を見てみたいなって思うんだよね」
成程‥確かにそういう事なら分かる気がする。
「もう少し起きとくか」
「だな」