夢
雨が降っていた、俺がアンガウルに来てから随分の時が経った。もう100人は敵兵を殺害しただろうか?先日の戦闘で、肩と足に致命傷を負ってしまった。傷口にはうじが湧き、どうやら骨も数か所折れているみたいだ。
軍医はそんな俺を見るなり、自決用の手榴弾を渡していった‥俺は何の為この地に戦いに来たのだろうか‥これで最後と、国の両親に、手紙と
遺書を書いて、俺は手榴弾のピンを抜いた‥
またあの時の夢を見ていた。嫌な汗が全身に纏わりついている。
確か、あの時の手榴弾は不発に終わったのだった。元来、少々の傷は一日もあれば治ってしまう体質であったので、少し体を休ませ、次の日ほふく前進で敵の屯所に乗り込んで、弾薬庫を爆破させたのだったか‥その後、敵兵に顔を撃ち抜かれて、俺は絶命した。不思議なことに、次に目を冷ましたとき俺はこの世界にいた。先程まで血まみれで全身打撲裂傷、全身火傷、複雑骨折数か所、敵兵に顎をライフルで撃ち抜かれて絶命したなどとは想像も出来ない。
この世界に来て何度も、戦場の夢を見る。
花形もそうなのではないだろうか?
出来ることならもう一度国の為に戦いたいと思ってしまう自分がいるのだ。
さて、生命の泉を探すべく旅を始めた訳だが、
そもそもに、なぜ俺たちがそんな泉を探すのかについて話していかないといけない。
俺と花形は、良くも悪くも気が合った。もし、生前に出会っていたとしても、良き友になっていただろう、
奴には、不思議と信用に足る何かがあるのだ。
これは、お互いに死線を潜って来たゆえに、性格に滲むものが有るのだろう‥
「花形よこの世界には季節が5つ有るらしいぞ」
「何だ春夏秋冬‥と何だよ」
「雨の季節らしい」
「はぁ?梅雨か何かか?」
花形は、疑わしそうにこちらを見ている。
「まあ近いな‥でもな、雨の季節に降る雨の量は梅雨の比ではないらしいぞ‥ここらの建物を見てみろ」
「ん?まあ変な形だよな」
ここら辺の建物は丸みを帯びた、特殊な土を原料に造られているのが不思議だった。
酒場で聞いた話だ
「雨の季節にはここら辺の建物は‥というよりもこの辺全てが水に浸かるらしい‥だから水に浸かっても平気なように敢えてああいった形状に建物を造るらしいんだ」
「へぇそうなのか!道理で機能性の無い建物だと思ってたよ‥そういった理由が有ったんだな‥」
「なあ福田」
「何だ花形」
「もう10日以上雨止んでなくない?」
花形か青ざめているのが分かった。
この世界には雨の季節というものが有る。