行間
私はベット替わりに使っていたハンモックの上で目を覚ました…
「交互に気絶すんなよ」
と、セイレーンが私の顔を覗き込む…
「ねえセイレーン…空に人が居るって考えれる?」
私は体を起こし横に置いてある座台に片肘を付く。
「空に人?何の話だ?夢の話か?」
「違うよ!でっかい人が居たんだよ!女の人…」
「うーん…居たのか?街の中に?…」セイレーンは考え込む
「それって…女神様の事?」
とマキちゃんが割って入った。
「女神?」
「うん…お父さんから聞いたこと有る」
「霧の深い街で…空に女の人が浮いてる事が有るんだって…深い霧の奥に…すっごく大きな女の人…昔話だよ?」
「人魚伝説と似たようなもの?」
「うーん…人魚は居たでしょ?女神様は…そんなに具体的なものでは無いよ…」
「詳しく教えて!」
「うーん私も曖昧なんだよなぁ…」
「昔…猟師の男が道に迷って辿り着いた街で…盗賊に襲われたとか…でも気付いたら、眼の前に盗賊達が倒れてて…空を見上げると…巨大な女の人の顔が有ったとか…」
「で…きっとそれは女神様何だろうなって話なんだけど…でもその女の人無気味なほど笑っていたんだって…そんで盗賊の人達は全員死んでたとか…」
「女神様が助けてくれたとか?」
「違うよ…女神様は、自然の味方何だよ…無益な狩りをする人間を決して許さない…自然を汚す人間を決して許さない」
「女神様って良いやつじゃあ無いの?」
あの不気味な笑顔が脳裏をよぎり鳥肌がたつ。
「分かんないけど‥私達にとって『神様』って感じの存在じゃ無い事は確かよね」
「あ…そういえば『女神崇拝』って聞いたこと有る…街の外れにボロい教会が有るんだけど‥そこが女神様を崇拝してるとか…」
「マキちゃん‥福田は?」
「フクダ?さっきまで居たけど…どっかでカブトムシでも追っかけてるんじゃない?」
「マキちゃんにとって福田は面白いやつなんだね‥」
「マキちゃん…良いことを教えて貰ったよありがとね…」
マキちゃんはエヘヘと喜んでいた。
人魚に次いで‥風に乗った女神様か…
全くこの世界は退屈しないね。
「おっ目覚ましたな…急にぶっ倒れるからビビったぜ…てか聞けよ!あの人魚…メチャクチャ金になるぞ…一匹…えっと円に換算すると幾らだ…」
福田は、通貨を使い慣れていないので、どうしても円に換算したがる癖が有る。
「一匹80オンス‥あれだけ居れば豪邸くらいは建てられるぜ」とセイレーン
「どれだけい居たの?」
「さあね‥数えちゃいない‥でも明らかにおかしな量居た‥泉に毒でも撒いたのかい?」
「知らないよぉ」
「花形?どうした?今日から金持ちだぞ?ごっつい指輪とか全ての指に嵌めたりしようぜ?」
楽しそうだなこいつ‥
「よし!最高の酒を用意しろ!宴じゃあ!!」
乗っかってあげるよ。
女神の事も取り敢えずは今日はいいって事にしとこう。
馬車を追加で手配していると言う。
到着までもう半刻は掛かるらしい…荷物を運ぶ用だ
必要なのは人魚のヒレと眼球一つといったところだろうか…もうセイレーンと福田があらかた取ってくれてる。
生物討伐には、討伐した個体を証明出来るものが必要だ。私達が、敵対組織の人間の首を持って自首してたのと似てるような気もする。
でも、今回はお金が貰える。これに便乗して、
指名手配の方も取り下げて貰えないか交渉してみよう。…いや…やっぱりいいや。
私は正しい事をした。間違ってるのは連中だ…なんで私が頼み込まないといけないんだ?
等と考えていたら…福田が話しかけてくる
「難しい顔してるな…さっきまで宴とかなんとか言って無かったか?」
「いや…何でもないよ…てか宴も何も酒もメシも無いじゃんかぁ」
「まっそれは戻ってからにしようぜ」
「それよかお前またあの生首見たんだって?」
「うん…」
「ついてねぇな…日に何度も気持ち悪いもん見たくねぇよな」と福田がまた笑う。やっぱりこいつと居ると安心する。