風に乗った女神様
私達は、またこの街を歩いてる‥
あの時とは違って今回は、散策が目的だ
要するに遊び心だ。
「おいおい花形!こりゃぁメンコだぜ」
「メンコ?メンコってあのメンコか?」
「そのメンコだよ!ってコレは‥花札か‥」
確かにこれらは、メンコに花札‥間違いない。
似たものでもない。日本の玩具だ…でもなんで、それがここに…
「ううわぁぁ!!」
「どうした福田…」
「これ‥ベースボールで使ってた奴だ」
と、福田は野球で使う軟式ボールを持っていた
っておい、ベースボールってお前‥戦時中の人間だろ?そんなもの日本にはなかったんじゃあ
「有ったんだよ!戦争が始まる前は‥戦争が始まって、そういった遊び事も大幅に規制されちゃったけど‥昔はよく空き地でやったもんな‥」
そうだったの?
因みに私達は、この世界で出会っているが、
私と福田では、福田のほうが、産まれた年代的には、10年ばかし先に産まれている、
故に私と福田では認識が10年ほどズレているのだ‥もっといえば、私はこの世界に来て、見た目が変わってしまったから分かりづらいが、
私は33歳で福田は、22歳だ。
実は福田の方が私より10歳も年下なのである。
てか、この場所‥日本と繋がってない?
「ってキャー!これ私を刺したドスじゃんエンガチョ」
「なわけないだろってっコレタカシが使ってた教科書じゃねーか‥タカシ‥あの時はごめんよ‥」
『‥‥‥』
「ここマズくない?」
「何か嫌な感じがする。」
私達は踵を返し元来た道を歩く‥歩けど歩けど元いた場所に戻れない‥
あれ…迷った?
歩けど歩けど…同じ所に戻ってきてるような感覚がする…青木ヶ原の樹海では方向感覚が狂うというが、
こういった感じなのだろう‥
「ねえ福田…私達」
「言うな!」
「…」
暫く歩いてると、吹き抜けた場所に出た。
そこは、以前来たことのある場所、すなわち
生命の泉こと、生命のドブだ。
「福田!ここ!」
「ああ…でも気を付けろよ‥またあの歌が聞こえて来たらマズイぞ‥あの時は、セイレーンが居たからなんとかなったけど‥でも、お前が居るから大丈夫蚊‥」
「セイレーンも言ってたけど‥あの歌を聞くと魂を取られるの?」
「多分そうだろう‥元に俺はあの歌を聞いていて魂を奪われた訳だし‥」
ふーん‥あの時‥私も魂を奪われかけてたのかも‥
それはゾッとするな‥でも、だったら何でマキちゃんは平気だったんだろ?
おっかなびっくりで泉に近寄った私達だったが‥心配は希有だったようだ‥
「あれ…何も聞こえないぞ…どっか行っちゃった?人魚」と福田が言ってる横で私は恐ろしいものを見てしまった…
「ねえ福田これは本当にマズイかもよ」と私は、泉の隅を指差して言った。
余りの光景に福田も言葉を失っていた。
「‥‥」
泉の周辺を囲うように、肉の塊が輪を描いて重なり合っていた‥それはあの時私の前に現れたそれと同じだ‥
肉肉肉
腐った酒池肉林とはまさにこの事だ。余りの光景に吐き気さえ覚え、この場に居るのも苦痛に感じる。
まるで生命の泉自体が、周辺の命という命を、奪っているように見えた‥私は思わず顔をそらす。
天を仰いだ私は、また不可解なものを見てしまった。
あの時、福田と一緒に見たあれだ、淀んだ雲の中に
巨大な女の顔が浮かんでいる。
一つあの時と違うのは、その女は笑っていた
歯を剥き出して、満面の笑みを浮かべていた…私は思わず気を失った。