エンドの街
馬車で走ること、2時間。
エンドの街までやって来た。
これ程に早く着くなら、最初から馬車でエルダの街まで行けばよかったと思う‥
馬二匹、私と福田、マキちゃんとセイレーンで
二人乗りしてきたが、大して負担は無かった‥
乗馬なんてしたことも無かったが意外と悪くわない‥
「にしてもクセー街だよな‥」とセイレーンが言う‥
まだ入っても居ないのに、セイレーンには匂いが分かるのだろうか?
「そうさなぁ‥取り敢えず‥俺とセイレーンで中を見てくる」
「お前とマキはここに居てもらってもいいか?」
「ええー私も行きたいよー」
「街で暴れた罰だ!」
「ええぇ‥」
「ま、お前が居ればマキはシェルターの中にいるより安全だろ?」
「ふへへまぁね」
我ながら情けないな‥と思う‥
「まっ私はあまり入りたくないし‥花形さんが居てくれるならここに居たいな‥」
「ああ‥ちょっとしたら戻ってくる‥ここにテント張って、明日~明後日までには人魚を捕まえようと思ってるから‥取り敢えずは俺達で様子見してくるよ」と福田はニヤっと笑う
「分かったよ‥行ってらっしゃい」
「ん‥行って来るわ」
そう言って二人は街の中に入って行く‥
「ねぇ花形さん‥花形さんってなんであんなに強いの?」
「ん?‥そうだなぁ」
「慣れってのも有るのかも知れないけど‥」
「そうだよね‥やっぱり場数の多さだと思うよ」
「マキちゃんも強くなりたい派?」
「いやいやーちょっと羨ましいな‥と思って‥」
「羨ましい?」
「うん‥この間、魔王討伐軍に私が乱暴されそうになった時、花形さん私の事守ってくれたじゃん」
「ああ‥」
「昔からそうなんだよね‥」
「もし、自分が男に産まれて来てたら‥こんな悔しい思いしなくてすむのかなって」
真剣に話す彼女の横顔を見つめて、私は思った事を言う。
「男に産まれて来てても悔しいものは悔しいと思うよ‥それにマキちゃんは女の子でしょ?別にそれって誰かに劣る事ではないと思うよ」
「ありのままでいいなんて思わないけどそれでも、今を誇る資格は誰にでも有る‥私はマキちゃんの事好きだよ」
マキちゃんはカアアっと顔を赤くして俯いた。
「でも‥私だって花形さんみたいに」
「ちょっと待って」と話を遮ってしまった。
何かが聞こえる‥何だろうこれ‥歌‥のような‥
「花形さん‥」少し怯えたようにマキちゃんが私の名前を呼ぶ。
「私の側に居て‥絶対に離れちゃあ駄目よ‥」
「うん‥」
声の方向はこっちだ‥私は枯れかけた木々の方に歩く
ペキペキと二人分の足音が小枝を踏み抜く‥近づく程に声が大きくなる。
何だろう‥このメロディ‥聞いてるとやけに落ち着く
私もそちらに行きたい‥そんな感じがする
もう少し‥あと少し
「花形さんっ!!」
後ろから二の腕を引っ張られて我に返った‥眼の前には‥余りにも見るに耐えない生き物が居た‥
さながら養豚場で食肉加工された豚に人間の髪の毛が生えたような、所々にゴミの破片が刺さり化膿しているのか、皮膚が変色している。
そして、下半身はまるで魚のようにヒレが付いていた‥
そうか‥コレが人魚か‥想像よりも千倍グロテスクだ
「マキちゃん‥少しそこを動かないでね‥」
「えっヤダよ!花形さん逃げようよ」
「大丈夫!3秒だけだから、それで無理なら逃げよう‥ねっ?」
「うぅぅぅ」とマキちゃんはジットリと私を睨んでくる。本当にかわいい子だな。
さて、遊んであげる人魚さん。