行間
ここで少し解説をしておきたい。
まず、大前提として、
『この世界に魔王という軍力は存在しない』
これを念動に置いて聞いてほしい。
この世界には、『魔王討伐軍』という者たちが居て。これは間違いなく存在する。
魔王討伐軍は、簡単に説明するなら‘警察‘のような存在なんだ。
私達は、この魔王討伐軍に逆らって喧嘩でもしようものなら。指名手配されてしまう。
まず捕まる事は無くとも、自由に行動は出来なくなるね。
じゃあ、‥そもそもに『魔王討伐軍』って何?って話なんだけど、
正直な所、恐怖で犯罪を減らしてる、
‘’必要悪‘’のような存在なんだよね。
私はそんなもの必要ないと思うけど。
だって魔王なんて居ないんだから‥それをでっち上げて、国の人間を魔王から守っていると、
大義名分さえあれば、大なり小なり、金は入ってくるから、連中からすれば美味しい事しか無い。
悪く言えば「国民を騙してやりたい放題やってるイカれた連中」
良く言えば「鉄壁の法律組織」とでも言えばいいのかな‥私から言わせれば。そんな身勝手な法律なんて、人を縛る鎖でしかないんだけど‥
それじゃあやってる事はヤクザと一緒‥でも、私達ヤクザは、身勝手なりに通す筋は必ず通して来たし、自分でやったことの落とし前も付けてきた‥
だから、時には英雄視される事も有った‥
私はくすぐったくて‥そういう風に扱われるのは嫌いだった。でも、魔王討伐軍は違う‥身勝手に私服を肥やして、
他人から平気で金も尊厳も奪い続ける連中が
英雄視されて言い訳がない!
それだけは、絶対に許さない。
私は、連中を全員白日の元に晒して、本物の英雄になる。その為には、福田の力が必要不可欠だ‥私は、大幹部にはなれても、
誰かの父親にはなれない性分らしいから‥
また、あの時みたいに、自分の舎弟に刺し殺される‥何てことも無いことは無いかも‥だし。
その分福田は絶対に信頼出来る。
アイツは、何を預けて居ても、必ず無事に全て持って私の所に戻ってくる‥そういう男だと不思議と確信出来る。
さてさて、少し事情を挟みすぎたので、ここで話を戻す。
この世界には魔王は存在しない。
この世界の人間は、有りもしない何かに怯え続けている‥もうそろそろ気付く頃だと思うけど、
私が元いた世界にも、この‘’ナニカ‘’は存在してたんだよね‥私達はそれに怯えていたんだよ。
君達も経験無いかな?誰かの顔色を伺って萎縮したり、夜の暗い道で幽霊が出たらどうしよう‥と不安になったり‥それと全く同じなんだよ。
まず私達は、この見えない‘’ナニカ‘’を打倒さないと行けないのかもしれないね。
この話はとても難しい話なんだ。だから、ここからは少しだけ、私が語り部に回ることになるけど、頃合いが来たら、また福田にバトンを渡すつもりだから、安心して聞いてほしい。
これから話すことがこの世界の在り方
だから。