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5 アグー、状況整理。

またお久しぶりの更新です。短めの裏話的なお話となっています。

妾は、話界精霊赤ずきん系担当のグラーシス。

神様に頂いた本名はあるが、なぜか主であるりほからは『アグー』なんて名前をつけられている。


実はまぁ……その、結構気に入っているのは、主には秘密な。




さて、ちっとばかし妾の話を聞いてもらうぞ。


少し時を遡る。


本物の赤ずきんが話界を飛び出して、とりあえずパニクッた妾は、とりあえずパニクッた。


その後落ち着いて、人間界に赴いたのじゃが、赤ずきんはどうやら東京にワープしたらしく。人が多すぎて捜索時間が膨大になることは確実だった。


そこで妾は、いざという時のために作っていたメガネを設置し、主、つまり赤ずきんの身代わりをしてくれる人の子を待っていたというわけじゃ。


主は、メガネをかけたことで妾が見えたと思っているようじゃが、実際はそうではない。

あの黒縁メガネは、主の中にある『ある力』を引き出し、妾が見えるスイッチのような役割を果たしたまで。力が安定したため、しばらくするとかけなくても妾が見えるようになっていたのじゃ。


そして、無事に主が赤ずきん系へと旅立ったわけじゃが。




控えめに言って、超スーパーハイパーやばいのぅこれが!!!!!



赤ずきんにより、無理矢理開いた「穴」のおかげで、赤ずきん系のものは人間界に影響し、人間界のものは赤ずきん系に影響する。赤ずきんがワープしてきたのは鬱蒼と茂る森の中の家。ワープしたのは、東京。


つまり。



ニョキッ!


「おいやべーぞ! どういうことだ!?」

「何でこんなに木の枝が……!?」


ギュギュンッ!


「キャァァァ! 助けて! こっちからも伸びてくるわ!」

「よせ、押すな! って、どぅわぁぁ!?」


モサァ…………


「…………」



「名付けて、東京中心部近辺、もっさり緑を増やそうキャンペーン!


…………なんて言ってる場合じゃないっつーの!」



ハッ! いかんいかん。ついつい口調がっ。


高層ビルのガラスを突き破り、恐ろしい勢いで蔓延る木の幹と蔦。生い茂る葉に、異常に咲く花々、道路を埋め尽くす茶色い根。


成長スピードが速すぎるため、当たっただけで怪我をする。人々は悲鳴を上げながら逃げ惑い、そこを容赦なく割れた窓ガラスの破片が襲う。


まさに、地獄絵図。東京、大パニック。



「あぁぁやばいのぅやばいのぅ……」


本当に赤ずきん、なんてことをしてくれたんじゃ……泣きたい……。


いやでも、実はこの妾、この状況をもと通りにしようと思えば、出来なくもない。りほのメガネと同じ機能が、妾には備わっておるからな。


首から下げているでか板を外し、無限空間になっているポケットに突っ込む。


代わりに、対変質用の魔法をぶっ放すための杖を取り出した。先端が本を開いた形になっており、そのさらに上にクリスタルがキラキラと回っている。神様からもらった、妾の大事な仕事道具じゃ。



というわけで。いっちょやるしかないようじゃな。



「そいやっ」


ん? なんかそれっぽいカッコいい呪文?

……そんなのないぞ。神様は効率的なお方であるゆえな。


シュゥゥゥゥ——ン……


静かな音を立てて、蔦という蔦、枝という枝が消滅していく。文字通り、妾の杖から光り出す閃光に絡めとられ、そのまま別次元へ呑み込まれて消えていくのだ。


割れたガラスや落ちた物も、綺麗さっぱり元通りになっていく。フハハハッ、妾にかかればこれくらい楽勝じゃよ!


一連の現象は、人間には到底理解しがたいじゃろう。あー後で記憶操作もしておいた方がいいかのう。全く、人間界で力を使うのはあまり得意じゃないんじゃが……。



次から次へとビルの間を飛び回って杖を振りまくり、地下街へ通じる通路へと飛び込んで、手早く処理。気分は都市全体に広がる大火事を消化する消防士。


「ふぅ……これで全部じゃな」


あらかたの植物を異次元にぶっ飛ばした妾。こんな小さくてか弱いのに、さすが妾。誰か褒めて。


じゃが、まだやることは残っておる。えー本当にここで誰か労ってくれる人はおらんのか……?


正直何万人もの記憶操作には時間と力が大量に必要になる。やむを得ん、シンデレラ系のグラーシスと人魚姫系のグラーシスにでも協力を頼んでしまおうかのう。あいつらが神様に告げ口しないかどうかだけが心配じゃが……。


無限空間から杖とでか板を交換しつつ、悶々と考えながら某ショッピングモールをパタパタ周る。一応、植物の痕跡や消し残りがあるやもしれんからな。



と。

ホームセンターの、害虫や害獣対策らしきモノが売っているコーナーにて、妾の目に何かが引っかかった。


小さめの背丈に、ブラウンのウェーブした髪。ピンクのエプロンを着た少女。

そいつが、おそらく中級動物を捕まえるようなワナを持ち上げては床に投げ捨てる、というイカれた暴挙に出ていた。


もちろん暴挙は許されないことじゃが、妾は、その少女のことを、よぉぉぉぉぉく、知っておる。



「くぉぉぉぉらぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」



妾の怒号を聞き届け、振り返って見開かれる翠色の瞳に、確信する。


「お前……お前……


赤ずきんんんんんん!!!!!!」

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