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異世界より君へ  作者: 昨咲く
第一章
8/12

8.イノシシ危機一髪

「何か夢を見ていた気がする……。懐かしい夢で楽しかったような……」


 寝ぼけながら、起き上がるシュン。

 相も変わらずゲーム内の宿屋だ。

 いまだ、ログアウトは出来ていない。

 ゲーム内でも眠気もあるし、空腹を感じる。それでも食べれば空腹感はなくなるし、寝ればスッキリする。

 不思議なことだとも思うし、テレビすら部屋に置かず世間とのつながりを希薄にしていたシュンとしては、知らない間にすごい技術が進歩したのだなぁとのんきにも思う。




 宿で朝食を取った後、シュンは昨日と同じく狩りをするため、街の外に出ていた。


 ナイフがある分昨日よりもウサギ狩りは楽に行えるだろうとの心積もりもあり、気合は十分だ。


 実際ウサギ狩りは順調だった。

 だが、調子に乗って昨日よりも奥深くに進んだのがいけなかったのだろう。

 ウサギ以外のモンスターに始めて遭遇する羽目になってしまった。


「うあぁぁぁ! やばいやばい。無理じゃないのかなぁー! これ!」


 走りながら叫ぶシュン。

 背後からはドドドッと地面を勢いよく踏み荒らす音とともに”イノシシ”が突進してきていた。

 通常のイノシシと違い、装甲を纏ったイノシシである。鎧を着こんだという意味ではなく、外皮が装甲のように発達しているのだ。

 そんな装甲イノシシだが、明らかにシュンよりも走行速度は早い。

 それでも、未だにシュンがイノシシの餌食になっていないのは、単にイノシシがまさに猪突猛進、まっすぐにしか突っ込んでこないからである。

 闘牛さながらのアクションで突進を躱して、一命を取り留めているのだ。


 しかし、何時までもスタミナが持つわけでもなくシュンの疲れが出てきたころ、イノシシはシュンが避けた先の岩に勢いよくぶつかる。

 岩は半壊になったが、イノシシも脳天が揺れたために、ふらついている。

 この隙を逃すわけもなく、シュンは大急ぎでその場を逃げ去った。


 しばらくたってもイノシシが追いかけてこないのを確認してからシュンは一息つく。


 イノシシに出会う前に、3匹ほどウサギを仕留めていたが、抱えて逃げるには厳しく、泣く泣く2匹は捨て去っていた。一匹はシュンの執念のあかしだ。


 それともう一つ、今日は一日中狩りをするつもりでいたので、宿屋でお弁当を貰えないか交渉してみたのだが、快く頂けたのでそれも追いかけまわされる中でも、死守できていた。


 そんな弁当を今シュンは頬張っている。

 内容はおにぎりに唐揚げだ。

 シンプルだが、それが功をそうしたのかもしれない。

 おにぎりと唐揚げは紙に包まれ、さらに風呂敷で包まれていたのだが、ばらけて落としてしまうことを回避できたのだ。それはきっとシンプルにまとまっていたからだろう。

 ウサギ片手、風呂敷片手にイノシシから逃げ切る。それが今日のシュンだ!




 予定通りに午後も狩りを行う。というより行うほかない。

 なぜなら金が無いのだ。手持ちは銅貨1枚。恐らく食事一回分だ。このままでは宿にも泊まれない。先払いしてある分は明日の朝食をもって終わってしまうので、本当に後がない。


 それもこれも、昨日ナイフと魔術書を買ってしまったせいだが、それはそれ、これはこれだ。


 今日はもうイノシシは懲り懲りなので、奥まった方には行かないように気を付けつつ、夕方近くまで、無心にウサギを探し狩り続けた。

 結果、午後の成果は5匹。

 午前の分を合わせて6匹だ。

 昨日だったら、この数をもって狩るのは厳しかっただろうが、今日はお弁当を包んでいた風呂敷がある。

 ぎゅうぎゅうに詰め込むことでなんとか納まった風呂敷を手に抱え、街へと急ぐ。

 急がなければ、ギルドがしまってしまうかもしれないからだ。




「うへぇー。もうクタクタだよぉ」


 ギルドにはギリギリ間に合ったが、査定をするには時間が足りないとのことで、ウサギたちはギルドに預け、査定は明日ということになった。引き換え用の札だけ貰いシュンは宿屋にたどり着くところだった。


 もう黄昏時で空は紫色に染まっている。


 風呂なんて物は宿に内容だけれど、体を拭くための布と水は貸してもらえるので、それでスッキリしようと考え思い脚を宿に進める。


 その時キャミーの兄、ローバンを見かける。

 今日も何か慌てている様子だ。

 そう思ったのも束の間、どこかに走り去ってしまった。


「なんだったんだろ?」


 そう思うも、今はとにかく体を綺麗にして、ご飯にしたい。その一心だった。




「そういえば、まだログアウトしないなぁ……」


 そう思ったのは夕食も終えベッドに横になる時だった。


 いまだ、自力でのログアウト方法が見つからないのもあるが、日数的にいい加減リアルでヘッドギアが外されていてもおかしくない頃合いだ。むしろ遅いぐらいである。


 それなのに、シュンの意識はゲーム内に留まったままなのだ。


 これはどういうことだろう? そう考えようとして、すぐにシュンは眠気に負けて寝てしまったのだった。




 朝起きて、朝食の後ギルドへ向かった。

 宿を出る前には、『今の部屋は継続して取るから残してほしい、金は今撮ってくるから』と伝えている。


 道すがら、昨日寝る前に何か考え事をしていたような気がするとシュンは思ったが、思い出せなかったので、まあいいやと気にしなかった。




 ギルドにつくと、多くの人が順番待ちをしていた。

 これまでに見ないほどの人数だ。と言ってもシュンはギルド歴三日目であるが。


「なんか、人多くないですか?」


 シュンは近くのギルド職員らしき人に声をかけてみた。


「まあ。朝一はいつもこんなもんですよ。依頼は早い者勝ちですからね。割のいい依頼が欲しければ、皆この時間帯に来ますよ」


 とそう教えてくれた。


 そういうことかと、納得したシュンはとりあえず今は関係ないので、大人しく人が空くのを待つことにした。

 ただ、手持無沙汰だったので、列が短くなるまでの間、依頼表を見て時間を潰すことに。


「へー。モンスター討伐だけじゃなくて、こんな依頼もあるのかー」


 そう言って見ていたのは『墓地の見回り』という物だった。

 内容としては、墓地で不審人物をよく見かける為、警備強化を図りたい。というものだ。

 先日宿屋で聞いた噂話のゾンビも関係するのかなと、少し興味を引かれたのだ。


 そうこうしていると、列は短くなっており、すぐにシュンの順番になった。


「査定でしたらすでに終わっておりますので、問題なければお受け取りください」


 対応してくれたのは、ギルド初日にも会った没個性の眼鏡受付嬢さんだ。

「大丈夫です。ありがとうございます」


 そう言って、受け取ったが内心では。


『お、査定額があがってる』


 と、ウキウキだった。

 前回は銅貨2枚だったのが3枚になっていたのだ。

 きっと、石による撲殺ではなく、ナイフによる刺殺や斬殺だったため、皮へのダメージも少なく済んだおかげだろう。

 持ち込んだウサギは6匹であるから、これで手持ちの1枚と合わせて合計銅貨19枚となった。

 ほぼ初期の所持金に戻ったこととなる。

 シュンとしてはこれで一安心だ。


「あと、ポイントカードはお持ちですか?」


 ほくほくのシュンに受付嬢が聞く。


「あ、はい」


 ズボンのポケットからポイントカードを受付嬢に渡す。

 受付嬢は受け取ると、スタンプを押して、シュンへと返した。

 ポイントカードには、『3pt』となっていたものが『9pt』と変わっていた。

 特に重なった表記もなく、綺麗なものだ。

『本当に上書きされるんだなぁ』とシュンは内心で驚いたが、列の後がつっかえていることに気づき、すぐにその場を後にした。




「さぁ、どうしようっかなぁ」


 シュンは、宿に一度戻り1泊分の費用を払った後だった。


「武器屋にもう一度行ってみようかな」


 そう言って、武器屋へと向かうシュンは浮かれていた。

 寸前まで銅貨1枚だけしか持っていなかったのに、一気に19倍になったのだ。

 先ほど宿屋に払った費用を抜いても、14倍である。

 シュンの中では買い物欲がムクムクと盛り上がっていた。




 現在のポイント―9pt


 現在の所持金―銅貨14枚


ポイントは大切だね。

この下でポイント評価ができるよ!

ぜひどうぞ!

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