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異世界より君へ  作者: 昨咲く
第一章
6/12

6.その後

 宿の目の前についたところで、シュンの方へと走りこんでくる人影が現れた。

 急なことでシュンはそれに気づかず、相手も慌てているのかシュンに気づいていない。

 あわやぶつかる。その瞬間になって、両者はぶつかりそうになっていることに気づき、慌ててよける。

 シュンとぶつかりそうになった人影は、よけた勢いのまま走り去ってしまった。


「おっと、危ないなー。というか、今のってキャミーのお兄さんのローバン??」


 急なことでほとんど後ろ姿しか見えなかったが、確かにローバンだった。

 なぜあんなに慌てていたのだろう?


「よくわからないけど、とりあえずまずは飯だな。そのあとキャミーの様子も見てきてみよう」


 思わずローバンを見かけることになったことから、キャミーの事が気になったシュンはそう決める。

 ゲーム的に考えるなら、イベントが完了しているのかもよくわからないのだから、確認してみようという考えだ。

 そもそも、イベントだったとして、完了したらどうなのだって話もあるが……。




 宿の昼食は、オムライス的な料理だった。

 卵でご飯を包んでいるのだが、ケチャップは無かった。

 オムレツの中にチャーハンが入っているような感じの料理で、まあ美味しかったので文句はない。

 それはそうと、キャミーである。

 とりあえず、家に行ってみることにした。




「やあ、こんにちは」


 ノックして出てきたのはキャミーであったので、普通に挨拶をする。


「あ、こんにちは」


「昨日の今日だから、ちょっと様子を見に来てみたんだけど、調子はどうかな?」


「えっと。と、とりあえず、あがってください」


「立ち話もあれだもんね。お言葉に甘えてお邪魔するよ」


「は、はい。どうぞ」


 キャミーの案内で、椅子に座る。

 屋内は2人暮らしの為か、広くない。


「こんなものしかないですけど、どうぞ」


 お茶が出てきた。


「ありがとう。頂くよ」


 ズズッとお茶を頂く。


「それで、どうしたんですか?」


 キャミーから聞かれる。


「いや、大したことじゃないんだけどねぇ。ちょっと気になって。昨日色々知っちゃって、キャミーちゃんは大丈夫かなって」


「いや、まあ大丈夫ですけど……。結局周りの大人たちが言っていたことが正しかっただけで、私が子供だったってだけですし……」


 拗ねたように言うキャミー。


「それに、問題が無いのなら良いんです……。そりゃ、私は夢を追ってるお兄ちゃんの方が好きですけど、家のことを考えてくれることも悪いことじゃないですし……」


「でも、やっぱり自分のせいでお兄ちゃんが夢を終えない状況はいやだなと思って、それで、私も働こうと思ってます。少しでもお兄ちゃんの負担が減って、また夢を追ってくれるように」


 決意したようにキャミーはそう言った。


「そっか。それもいいんじゃないかな。落ち込んでるわけじゃないって知れてよかったよ」


「……おじさんはなんで、私のことを心配してくれるんですか?」


「んと、そうだねぇ。おじさんも昔いやな目にあったんだよ。何を言っても変な目で見られてとても辛かった。正直今でも辛いままだよ。昨日最初にあったときのキャミーちゃんもその辛さを味わっているんだと思ったら、ほっておけなくてさ」


「そう、なんですね」


 どこか納得したようにキャミーちゃんは頷いた。


「だからおじさんはいつも悲しそうにしているんですね……」


 キャミーが小声で呟いた声には、シュンは返事を返さず。


「まあ、大丈夫そうだし。おじさんはお暇するよ。お仕事頑張って。応援しているね」


 そうにこやかに、去るのだった。




 シュンはキャミーの家を後にしてから、武器屋を探していた。

 これから狩りを主体に生計を立てるのなら、武器は必須になるだろうからである。

 むしろチュートリアルで『武器を買おう』があってもいいのではないかと思えるほどの事である。


 しばらく散策した後に、ひとつの武器屋を見つけ、シュンは入ってみることにした。


 それらしい剣等には、銀貨何枚、金貨何枚とかと値が付けられていて、シュンの手持ちでは明らかに手の届かない代物が並んでいる。

 なんと言っても、シュンはまだ銅貨しか見たことが無いのだ。


 そんなん中、小さなナイフが目につく。

 銅貨10枚。

 そう値段が書かれた一本だ。


 唯一変える武器がこれである。


 ないよりは良いだろうと、シュンはそれを手に取る。


 一瞬、このまま走り去ったらどうなるのだろうと、脳裏に過り、含み笑いをしてしまったが、実行には移さなかった。


「あのー。これを貰えますか」


 カウンターの奥に座る店主に声をかける。


「銅貨10枚だよ」


 無骨な声が返ってくる。


「じゃあ、これで」


 小銭入れから銅貨10枚を取り出して差し出す。

 これで、手持ちは今日狩って得た分の銅貨6枚だけとなる。


「初めてのお客さんじゃろ? これおまけだよ」


 そういって、店主のおじいさんは、ナイフの鞘をくれた。


「ありがとうございます!」


 こういうサービスをしてもらってしまうと、またここに来なければと思ってしまうシュンだった。




 武器屋を後にしてからは、時間も中途半端で狩りには行けそうになかった。

 新装備の試し切りはして見たかったが、狩っている間に夜になってしまってはまずい。

 そのため、することもなく、そのあたりを適当に歩き回っていた。

 街の中でも、まだ行ったことのないところは多い。

 この機会に散策するのも良いだろうと思いなおす。


 その中で、ひとつ気になる店を見つけた。

 本屋だ。

 シュンはリアルでは、あまり外出を好まず、良く家で読書する事が多かったのだ。

 本屋といっても、シュンがよく読んでいたライトノベルなどはあるはずもなく、近いものがあっても、騎士物語やら、姫の恋物語やらといったものであり、シュンの触手が伸びるほどのものではなかった。

 そんな中、一冊の本に目が留まる。


「これって……」


 シュンはその本を買って行くことにした。

 値段は銅貨5枚。

 他の本と比べても安く、今の手持ちでもギリギリ買える。だから買った。後悔はない。今のところ……。


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