12.はじめの結末
ちょっと短いです。
◇ ◇ ◇
そのおじさんは初めて会った時、私の味方をしてくれた。
でも、とても悲しそうな、寂しそうな顔をしていた。
誰も聞いてくれない話でもよく聞いてくれたおじさん。
きっと優しい人。すぐにそう思ったから私のすべてを語った。
けどやっぱり、おじさんは悲しい顔をしていると思った。
なんでそう思うんだろう?
お兄ちゃんの真実を探った夜。納得は行かなかったけど、仕方ないと思った。
現実はそういうものかもしれないと分かる程度の歳には成っている。
おじさんは会うたび悲しそうな顔をしていた。
他の大人と違って、今にも自分自身が泣きそうな顔。
実際にはそうじゃないかもしれない。
私とお話をしているときも笑ってるもの。
でも、泣いて見えてしまうのはなんでなんだろう。
なんで、おじさんが悲しそうに見えるか分かったのは、墓地でだった。
わたしは、その時になってやっと目を覚ましたのかもしれない。
その時になってやっと思い出すことが出来たのだ。
もうお兄ちゃんはいない。
きっと今おじさんに会ったら、おじさんはまた泣きそうな顔をするんだろう。
だっておじさんは、わたしが泣きそうなときに、泣きそうになっていたんだもの。
泣きそうなわたしを見ておじさんは悲しかったんだ。泣きそうなほど。
ーー。
お兄ちゃんはまたいなくなった。
2度も居なくなるとか最悪すぎて、悲しみの前に怒りがわく。
――。
* * *
僕がゾンビに殴りかかってしばらくの間は記憶が曖昧だった。
モンスターたちを粉々に吹き飛ばしていたのは覚えているが詳細は覚えていない。
気づきば周囲のモンスターが一掃されていたという感じ。
もしかしたら、キャミーも消し飛ばしているかもしれないと思ったが思い過ごしの様で安心した。
そんなキャミーはどこか怒っているようだった。
空を見上げて睨んでいる。
そしてそのまま、咆哮をあげた。
「あああぁああぁあぁ!!」
悲しみがあげる咆哮だと思った。
僕にはキャミーが泣いているのだと分かったから。
この墓地で出会ってから、ずっと片目から涙を流していた彼女だったが、そんな表面的な事じゃない。
彼女の心が泣いているのだと分かったのだ。
咆哮を上げ切った彼女は、著しく変化をしていた。
人間らしい部分はなくなり、皮膚はすべてが爛れ、ゾンビのなりたてと言える外見とまでなっている。
「ああぁあぁあああぁぁ!」
再び悲しき咆哮を上げると、彼女は僕へと襲い掛かってきた。
それは、他のゾンビたちの様に鈍間な動作ではなく、俊敏な、勢いのある突撃だった。
しかし、僕は迎撃した。
彼女の突進にカウンターを決めるように、顔を殴り飛ばしたのだ。
決して、意識してのことではなかった。
気づけばそうしていただけだ。僕は本能のままに迎撃をしていた。
殴り飛ばされても、彼女は突進をやめない。
そして僕も条件反射のごとく、彼女が迫れば、殴り飛ばしている。
彼女の腕が僕の顔面を裂こうとする寸前に。彼女の口が僕ののど元に迫ったその瞬間に。
そのたびに、殴り飛ばして、ついには彼女の上半身は消し飛びなくなってしまった。
結局殴ったのは4~5発だろうか。それで彼女はいなくなってしまった。
初めから彼女も死んでいたのかもしれない。あの爛れた姿が本来の姿で、元よりゾンビだったのかもしれない。
それでも、いま、彼女が動かなくなったのは僕がやったことだ。
彼女はもういない……。
僕が親近感を覚えて、お節介をした彼女は上半身が消し飛んでいる。下半身も今倒れてしまった。それも動く気配はない。
彼女に幸は訪れてくれなかった。それどころか自分の手で……。
辺りのゾンビはすでに一匹もいない。この墓地には僕一人だ。
また、僕一人だ――。
「ああああぁぁああぁぁ!」
僕は咆哮した。
その咆哮は誰に届くのだろうか――。
宿に戻る気力もなく、そもそもこの街に居続けるのも嫌になってしまった。
だからか、僕は墓地から離れるとそのまま、街を出ることにした。
どこに行くのかも分からないけれど、狩りをしながら旅をすれば何とかなるかなという、未だにゲーム感覚はなくならない。
街の門を潜るのも最後かもしれないと思うと感慨深い。まだ数日しかたってないというのに。
と、その時、やけにチャラい声に呼び止められた。
「アッレー?? もしかしてシュンちゃんじゃな~い? オレだよ。オレ。カモ小のエンジェル。藤堂ネオだよぉ!!」
居ないはずの、小学校の同級生と再会した――。
出来るだけ3人称で頑張ろうと思っていたけれど、うまく行かん><。
ここからは、シュンの一人称が多くなるかも。
一先ず、一章はここで終了です。
また、プロットを書いてから続きを書いていきます。
色々とつたない作品ですが、もし応援してくれる方がいたら、以下から評価をお願いします!><