1.ON
無気力に生きていた。
良い歳したおっさんになってるのに、未だにゲームしてアニメ見て、ろくに仕事をしない。
ろくでなし。
彼を現代で表すならそうなるだろう。
そんな彼にも転機が訪れる。
「なんだろう? これは」
手に取ったのは、頼んだ覚えのない宅配便。宛先は同居している両親でなく彼になっている。
「まあ、開けてみるか?」
彼は自分の部屋に戻り、その箱を開けてみることにする。
それが、どんな意味を持つのかも知らずに――。
「結局、なんだこれ?」
彼は、不思議そうに段ボールの内容物を眺める。
説明書のようなものを見つけたので引っ張り出して確認してみている。
「ほーん。VRゲーム機ねぇ。なんでそれが僕に来るんだかねぇ?」
その疑問も、説明書を読むことで解決していく、彼が手に取った説明書には『特別抽選』の文字があったのだから。
「特別抽選? ふむ? 不特定多数の方に、無作為にお送りしています。こちらのVRマシンは特別製の物で、試作段階の物でありますが、従来にはない画期的な技術が使われているため、今までにない体験を味わえることでしょう……。ってなにこれ。人体実験??」
彼はわが身がまず心配なようですね。
「でも、面白そうではあるんだよねぇ」
興味はあるようです。
「まあ、いっか。とりあえずやってみよう。そうしてみよう」
狂人のごとく、考えなしに器具をセッティングしていく彼。
何が楽しいのか終始ニヤニヤしている。
「これがソフト? タイトルは『異世界より君へ』ってよくわからんタイトルだね?」
「まあ、とりあえずやってみるかね」
彼はニヤッと笑う。
すべての準備は済んでいる。
後は本体の電源を入れるだけ。
仮想空間を見せるという『ヘッドギア』は装着済みである。
説明書通りにベットに横にもなっている。
後は右手に握ったスイッチをONするだけである。
「さぁ、ONっと」
彼はスイッチを押した。
それがどのような結果をもたらすのか知らないままに――。