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対ワイバーン戦

〔~バアル視点~〕


「死にましたかね?」


 アルガは観客席からそう判断する。


 なにせ先ほどのブレスよりも広範囲に、それも空中で息継ぎをし、執拗にブレスを吐いているのだから。


「へぇ~」

「……え」


 炎が収まると、闘技場の光景にアルガは思わず言葉が漏れ出る。











〔~アーク視点~〕


 ワイバーンが空に飛び立つと僕たちは急いで三人の元へと駆けだす。


「お願いします!!」


 そして炎が吐き出される前にカリナの魔法で僕たち全員が大きな水の幕で包まれる。


 ジュウゥウウウウウウウウウウ!!


 すぐに沸騰して蒸発する音が鳴る。


「ダメ、まだ、今これが無くなったら!!」


 カリナは懸命に魔法を維持する。


 水が無くなると共にようやく炎が収まる。


「カリナ!!」


 カリナは気を失ったのか倒れそうになって、それをソフィアが支える。


「大丈夫?!」

「ええ、少し魔力が底をつきそうになっただけ」


 魔力を急激に消耗すると、カリナみたく体に力が入りにくくなるのだ。


「安心してカリナ、僕があいつを倒すから」

「……頼んだ」


 そういうとカリナは目を閉じて気絶してしまった。


「さて、カリナが倒れちまったか、なら正体とか気にしている場合じゃないな」

「そうだねオルド」


 カリナの精霊魔法が無ければワイバーンのブレスが防ぐことができない、なら吐かれる前に決着を決めないといけない。


「んじゃあ、行くぜ『戦鬼化』!!」


 オルドは格闘術の高等(アーツ)を使用すると体から赤いオーラが出てくる。


「僕も『青天ノ戦鎧』!!」


 体から出た魔力が形を作り僕に纏わりつき、しだいに青色の鎧が出来上がっていく。


 これはユニークスキルの新しい(アーツ)だ。トロールを倒した際にレベルアップしたことにより使えるようになった。


「行くよ!!」

「ああ!!」


 僕たちは先ほどよりもはるかに早く走りワイバーンに纏わりつく。


「オラ!!!」


 オルドの拳でワイバーンの足が軽く動く。


「ハ!!!!」


 走っている最中に生み出した光剣でワイバーンを切り裂いていく。


 ガァアアアア!!


 さすがのワイバーンもこれらの攻撃には拙いと思ったのか自身を巻き込む形でブレスを吐こうとする。


「させねぇよ!!」


 オルドの掌底で口を閉ざす。


 ガァアアアアアアアアアアア!!


 ワイバーンは炎を吐き出すことができなくなり自爆した。


「この調子で!!」







 このときは誰しもが、もしかしたらと考えた。


 だが考えてほしい、なぜ竜や亜竜であるワイバーンが強いとされているのか。


 トロールも脅威であると知られているが、あれは群れを作る観点から脅威として知られているだけで本体はそこまででもない。


 だがワイバーンは違う。


『群』で脅威となるのでなく、『個』で脅威と認定されているのだ。






 シュゥーーーーーウ


 どこからか空気が漏れ出た音がする。


 そしてその音が止まると同時にワイバーンに変化が現れる。






「?!」

「ッガ!?」


 僕たちはワイバーンの尻尾に当たり吹き飛ばされる。


「っ痛て~~~!?」


 そして痛みを言う暇もなく、即座にその場から飛び起きて回避する。


 ドバン!!


 先ほどいた場所は黒い焦げ跡がついている。


「さっきとはまるっきり違うじゃねえか」


 ワイバーンを見ると先ほどまで緑色だった鱗が赤い色に変化しほんのりと輝き、目も血走っている。


「これはやばいね」

「ああ、向こうは本気になって、俺たちのは効果が切れかけている」


 僕の『青天ノ戦鎧』やオルドの『戦鬼化』は常時魔力を消費するアーツだ。


 そしてそれは身体強化よりも魔力を消費する。戦いが長引けば負けるのは必然だろう。


「でもやるしかないよ」

「そうだな!!」


 僕たちは駆けだす。


 ゴゥ!!


 だが向かっていく二人にワイバーンは球体になったブレスを吐き出す。


「っく!」


 オルドは何とか避けることはできたが僕は炎の余波を食らってしまった。


「アーク!!」

「問題ないよ!!」


 本来なら炎で大規模のやけどを負っているはずのなのだが、その痕はない。


 その理由は『青天ノ戦鎧』にあった。


 作り出した『青天の戦鎧』は【身体強化】よりもステータスを伸ばすことができ、さらには全属性の耐性までも与えてくれる。これにより炎の勢いは軽減されて“熱い”程度で済んだ。


 グルゥ!


 ワイバーンは猫のように体をしならせると二人に襲い掛かった。


 それはその体形では考えられない動きだった。


「『極光ノ聖盾』!!」


 任意に発動できるようになったアーツを使用し、オルドの前へ出る。


 ゴン!!


 鈍い音が響き渡る。


「サンキュー!!」


 その間にオルドは懐に入り込もうとするのだが、ワイバーンは学習したのか腕を振るい、風を起こす。


 その風圧でオルドは動けなくなった。


「だめだ!あれをされると俺たちじゃ吹き飛ばされる」


 僕たちは同年代にしては大きい体をしている。


 だがそれは常識の範疇でだ、つまりはまだまだ子供で体重は軽い。大人ですら吹き飛ばされそうな風に耐えきれるわけがない。


「どうする!!」

「手詰まり……」


 僕たちは何とか打開する方法を考えるがいい案が浮かんでこない。


 なにせ二人ともほとんど接近戦のみしかできないのだ、あのように近づけなくなると二人には成す術が無くなる。










『大丈夫、そのまま突っ込みなさい』










 僕とオルドはこの声を聴くと笑い、ワイバーンに走る。


 ゴゥ!


 先ほどと同じように炎を避けて接近する。


 すると同じようにワイバーンは襲い掛かってこようとするのだが、なぜだか襲い掛かってこない。


「ガ!?!?!?」


 ワイバーンの足元はぬかるんで踏ん張りがきかない状態になっている。


 カリナの精霊魔法で一度ぬかるんだ状態になったが、ワイバーンのブレスですでに乾いていた。


 だとすれば、このぬかるみは急に現れたことになる。


 そんなことができる人物は今、この闘技場にいないはず(・・・・・)







 僕はワイバーンが動けないうちに接近する。


 ゴゥ!

 ゴゥ!

 ゴゥ!


 沼で動きを阻害され、満足に動けないワイバーンは僕たちを近づけないようにブレスを何度も放ってくる。


 けどすべてが直線で迫ってくることから避けるのは容易なことだった。


 ワイバーンの眼前に来ると今度は手や足、尻尾を使って排除してこようとするが、沼から手のようなものが現れて、掴みさらに動きを阻害している。


 それにより本来は避けられない攻撃すらも避けることができる。


「ガァアアアアアアアア!!!」


 突如としてワイバーンは悲鳴を上げた、よく見てみると眼球に矢が刺さっていた。


 好機とリズが矢を放ったものだった。


 これにより片側が死角になりさらに攻撃しやすくなった。


 僕の手にある光剣で鱗ごと切りつける。


「こっちも忘れんな『破城拳砲』!!」


 僕に気を取られている間にオルドは顎の下から『破城拳砲』を放つ。


『破城拳砲』はゼロ距離でしか使えないアーツだが効果は絶大だ、熟練の格闘家はこれで城壁すらも崩したとされている。


 熟練とはいかないが『戦鬼化』としたオルドだ、ある程度の効果はあるだろう。


「!?…………!!!!」


 ワイバーンは一瞬気絶し動かなくなる。


 そのタイミングで尻尾から背中に駆けあがることができ、そのまま頭上を目指す。


 トロールでもそうだが頭を破壊すればたいていの生物は死ぬからだ。


(これで、!?)


 突如として足場(背中)が傾く。


 沼の触手を振り切り、空に飛び立ったのだ。


(まずい!今ブレスを吐かれたら)


 カリナは気絶していて水の幕を張れない、そうなると下にいる全員が焼け死ぬだろう。


『大丈夫、今からワイバーンを落とすから』


 しがみついている僕に声が聞こえてくる。


 左右を見るが見える場所に声の主はいない。


『落ちてくるとき下からオルドが、上からはアークが今使える最大の技を使って仕留めなさい』


 その声に頷く。


「じゃあ行くわよ、『―――』」


 すると上から風の塊で殴られたような形でワイバーンが落ちていく。


 衝撃でワイバーンから振り落とされるが不自然な風が体を抱えてくれている。


「アーク!!」


 下からオルドの声が聞こえる。


 何とか体勢を整えるとオルドを見る。


 そしてともに頷き大技の準備をする。


 僕は先ほどまでの光剣に残りすべての魔力を注ぎ込み、オルドは落下地点に移動すると集中した。


 そしてそのままワイバーンが地面に衝突する瞬間


「『太陽ノ光剣』!!」

「『鬼王拳・破』!!」


 上からは防ぐことができない光の剣が、下からはすべてを破壊しそうなほどの拳が、それぞれは首に振り下ろされ、顎が打ち上げられる。


 ワイバーンの首は、さながらギロチンされたかのように空に舞う。


「…………は、はは、やった!!」


 風が不自然に動き体を優しく地面に下ろしてくれる。


「やったな!!!」


 僕とオルドは笑い、そして座り込む。


「はは、勝てたら力が抜けてきた」

「俺もだよ」


 二人で頭の無いワイバーンをみる。


「僕たちが力を合わせれば、勝てない敵はいないね」

「ああ、そうだな」


 僕とオルドは拳を合わせる。


「……あ、あれ?」


 意識が遠くなっていく。


 視界の隅で僕と同じように気絶していくオルドとこちらに駆け寄ってくるソフィアとリズが見えた。


(はは、すこし魔力を使いすぎたかな)


 僕はカリナと同様、気絶した。

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