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最終日三回戦目・三位決定戦

 昼食から帰ってくると、早速とばかりにアギラがマシラを連れていった。


 そして数分もしないうちに、ステージにリティシィが現れる。


『さぁて、残り二戦となりました!!この試合に勝った者が三位に決定し、皇帝からご褒美がもらえるでしょう!!!』


 ワァアアアアアアアアアア!!!


 観客が褒美という言葉で沸き上がる。


「二位と三位も褒賞がもらえるんだな」

「そこらへんは詳しくないのですか?」

「ああ、一位は直接、王へ願いごとが出来るとは聞いているが」


 ユリアの言葉に頷きながら問い返す。


「なるほど、一番の報酬は聞いていたのですね。ただそれは正確ではありませんね」

「というと?」

「この大会には二つの褒賞が与えられます。一つが順位に会うだけの魔具、もしくは金銭、そしてもう一つがバアル様も言っていた、願い事ですね」


 ユリアの話では、一位から三位にはそれぞれが渡されるという。


「一位だけではないのか」

「はい、もちろん一位のように幅広く願いはかなえてもらえませんが、その順位と戦いぶりに見合う願い事はかなえてもらえます。また、過去にさかのぼればここで負けた四位の者を称えた褒賞もあったそうですが、それは例外中の例外らしいですね」

「よほど素晴らしい戦いをしたらしいな……それよりも魔具についての情報は開示されないのか?」


 四位にも褒賞が与えられた話よりも、二位、三位の報酬が欲しがるものでない場合の方が気になった。


「そこらへんは大丈夫そうですよ。何も直接の付与ではなく、目録が与えられて、そこから選ぶ形式らしいので」


 ということでほしい魔具の傾向が違うなんてこともないらしい。


「へぇ~じゃあ、マシラおばさんが勝ったら何を貰うのかな~~」


 こちらの話聞いていたのか、レオネがそういいながらステージを見詰める。


「ねぇ、勝つのはマシラさん?」

「ん~~だと思うよ?」


 セレナは念のため、レオネに問いかけると、レオネからは不安げな声が返ってくる。


「今回は賭けていないのか?」

「え、えぇ、まぁ」


 セレナの顔つきから両方とも負けたから、やや不安定に見えていることがありありと分かる。


「なら、次は?」

「そっちは賭けます。レオネちゃんから何もしなければテンゴさんが勝つと言われているので」


 セレナが、レオネを見てしっかりと頷く。どうやら何しなければと付け加えられた部分に、あのステージ上では何もできないと踏んでの言葉らしい。


「それで負けが回収できるのか?」

「いえ、残りを全部賭けても、せいぜいが一番多い時の半分ほどでしかありません」


 さすがにテンゴとドイトリだったら、今まで全勝しているためか、ドイトリの方が倍率が高いらしい。


「忠告だが、止めておけ」

「えっと、それは体面を気にしてですか?」

「いや、純粋な忠告だ。もとでよりは儲かっているんだろう?」

「そ、そうですね……」


 セレナは自身のスカートのポッケを触りながら、しどろもどろに答える。


(もう買っていたのか……しかしいつの間に)


 昼食が終わってから、そう時間も経っていないどころか、買える場面があったかすらも怪しい。考えられるのは二回戦が終了して、出かける前には買ってた場合だった。


(俺なら、ここらでやめるが……損切りできないなら―――)


 セレナの未来が何となく理解できると、視線をステージに向ける。そこには丁度入場してくる二人の姿が合った。


『それでは入場です!!“黒手遊戯”オーギュスト選手、“武芸百般”マシラ選手!!!』


 ワァアアアアアアアアアア!!!


 歓声が鳴り響く中、二人の姿を観察する。一見すると双方ともこれまでと何ら変わらない風貌で、気軽に参加しているようにも見えてしまう。だがここにまで届く張り詰めた気迫が、二人を向かい合う猛獣に感じさせていた。


 そして双方がステージに乗ると、ステージにカウントダウンが映し出される。


『……それでは~~始め!!』


 リティシィの声で幕が切って落とされた。













 そこからは長いようで短かった。


 カウントダウンが終わると同時に二人とも、即座に姿を変える。オーギュストはテンゴの時の様に翼の無い悪魔の姿となり、マシラは手先から肩、足先から太もも、毛量が増え、尻尾が若干の伸びた姿になり準備は整う。


 そしてそこから一切の言葉が交わされることは無く、動き出す。


 マシラは当然とばかりに疾走し、オーギュストは悪魔の姿のまま尻尾の先を分裂させ、元の体から出していた触手のように動かし始める。


 そして触手を見るや、回避すると誰もが思った時、マシラは逆に加速して触手に突っ込んでいった。ここまでを見ればアシラと同じような動きだが、マシラの動きは違った。触手の上をまるで樹々の枝を駆けるかの様ににオーギュストへと接近していく。それを見て、オーギュストも触手から新たに触手を生やしたり、駆けられている触手を揺さぶることで妨害しようとするがマシラは慣れているとばかりに一切速度を落とさずに駆けていた。


 その様子を見てオーギュストも判断を変える。即座に伸ばした尻尾を切り離して、徒手格闘の構えを取る。


 そこから始まるのは激しい激突だった。双方とも、拳、足、尻尾、頭突き、マシラに至っては棍での殴打、オーギュストに関しては角より放たれる魔法で超近距離戦がなされる。


 それこそ、数分間は目を激しく動かし続けて、目を回す観客がいたほどだった。


 だが、徐々に優劣が着き始めてしまう。その理由は決定打の差だった。マシラの攻撃は主に連撃による。だがそれは言い換えれば攻撃が軽いと言う事。前回の戦闘のようにユライアのあの技が効く相手ならば早々に決着がつくのだろうが、今回は悪魔の皮を被っているせいか、オーギュストに効き目はなかった。となればそれ以外の攻撃に頼るしかないのだが、テンゴの一撃に何度も耐えたオーギュストの体を絶命させるには圧倒的に手数が足りない。それこそテンゴの技を真似てもテンゴよりも腕力で劣るマシラの攻撃などそうそう効くわけがない。それに対してオーギュストの攻撃はほどほどに効いてしまう。その理由はオーギュストが強いと言うよりもマシラの方に原因があった。マシラ自身もそれなりに強化されているのだが、それは当然テンゴやアシラと比べれば脆弱と言い表せていいほどだった。そのため、テンゴやアシラにはかすり傷でもマシラにとっては有効打となってしまう。もちろんその有効打を食らわないように、マシラの体はしなやかで繊細な動きが出来るようになっていた。だが、それでも超近距離戦ともなれば、避けきれないためうまくガードするしかない時も存在してしまう。またそれに付け加えて年の功とでもいえるほどオーギュストの技量は優れていたのも要因の一つだろう。


 当たれば有効だとなるオーギュストと、技量で手数を与えてできるだけ避けるマシラ、双方がぶつかるとなれば当然、削り合いとなる。マシラは微量だが手数でオーギュストにダメージを与えて、オーギュストは躱されやすい攻撃をなんとか当てて有効打を着実に入れていく。


 観客からしたら、それぞれの技量が高すぎて、日が暮れるまで続きそうに感じられるほど進展がないように見えた。


 だが、決着は突然訪れる――

カクヨムにて先行投稿をしています。よろしければそちらもどうぞ。


https://kakuyomu.jp/works/16816452220569910224

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