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本戦五日目最終戦

カクヨムにて先行投稿をしています。よろしければそちらもどうぞ。


https://kakuyomu.jp/works/16816452220569910224

『本日三回戦目、勝者は“剛武”ドイトリ選手!!』


 ワァアアアアアアアアアアアアア!!!


 リティシイの宣言で会場が沸き立つ。


『いや~それにしても――――』


 勝利宣言を行うと、観客に向けて感想が始まるが、貴賓席内ではほとんどの者が興味を持っていなかった。








(……とりもちだな)


 先ほどの戦いを思い出しながら、退室していくドイトリとリフィネを見る。


 実際、泥を自由自在に動かすことが出来るのなら今回は沼地すべてが操作可能と言える。そのため一度地面に下ろしさえすればあとはリフィネを飛ばさせないようにできたのだろう。


「今回は、ステージに恵まれたな」

「そのようね、正確には装備にだろうけど」


 俺の言葉に隣にいるクラリスが反応する。


「それにしても、だいぶ希少な代物ね、アレ」


 クラリスは退出をしていくドイトリの外套を見ながらそう告げる。


「そういうのはわかる物なのか?」

「ええ、希少で強力な魔具ほど、私たちの目には輝いて見えるから」


 どうやら魔力を含んでいる魔具などはエルフたちには判別が出来ると言う。


「そうか……」


 クラリスの言うことが気になるため、『亜空庫』からモノクルを取り出して、ドイトリを鑑定する。


 ―――――

 泥の被りの鎧套

 ★×7


【泥鎧】


 ぬかるむ地にて、これを被る者には心せよ。瞳で見えぬのは当たり前であり、彼の者の地には決して踏み入れるな。踏み入れたが最後、すべてが飲み込まれるだろう。

 ―――――


 外套を被っているからか、ドイトリ本人は見ることはできなかったが、あの外套についての情報は得ることが出来た。


(七か相当幸運だったようだな)


 レア度は7ともなれば人生を掛けてダンジョンに潜り続けた末に、手に入るか入らないかと言った代物だ。逆に言えばそれを手に入れるということはそれなりに大成しているとも言えた。


「そういえば、ロックルと第五王子を合わせる場は整えたの?」


 ドイトリを見ているとふと思い出したかのようにクラリスが問いかけてくる。


「まだだが、丁度いいか、おい」

「は!」

「これをドイトリに届けてくれ」


 俺は一つの手紙を取り出して騎士の一人に届けさせる。


「その際に伝言をしてくれ、できればドイトリにも出席してほしいと」

「わかりました」


 騎士はこちらの言葉に従い、部屋を出てドイトリの元へと届けさせる。


「さて、次はマシラだが、問題ないな?」


 騎士が退室したのを確認すると次の出場選手であるマシラに問いかける。


「ああ。どうやらいい相手に巡り合えたようだからな、今から楽しみだ」


 マシラは獰猛な笑みを浮かべながらステージを見詰める。


「今回はさすがに相性最悪だと思うが?」

「確かに前回の相手を見てみるといろいろと問題がありそうだが……そのために昨日用意した()もあるからな」


 マシラは席の背後に置いてあるものを取り出して見せてくる。


「それが勝つための手段か?」

「ああ、それと見ていな、あいつの技を奪ってきてやるから」


 アシラはこの後の戦いが楽しみだと、笑い出す。







 そしてしばらくするとアギラが迎えに来てマシラが退室していく。その時の好戦的な笑みはさながら、極上の肉にありつく前の獣と言えた。














『さてさて!!本日も最後の試合になってしまいました~~、ですがこれで最後ではないので、皆さん存分に楽しみましょう!!』


 ワァアアアアアアアアアアアアア!!!


『それでは入場です!!“一蝕生骸”ユライア選手対“武芸百般”マシラ選手!!!!』


 リティシイの言葉でグラウンドに二つの影が入ってくる。


 ワァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!


 二人の姿が露になると観客から盛大な歓声が飛んでくる。


 一人はユライア、女性にしては大柄な体躯を持ち、特徴的な褐色の肌と、美しい赤髪を腰まで無造作に伸ばしている美女。武装は二回戦目とう同様の胸当て、籠手、脛当て、繊維の服、そして今回新たに両の前腕に小さいバックラ―を装備していた。


 そしてもう一人は先ほどまで貴賓席にいたマシラだった。獣人にも関わらず普通の人族と変わらない容姿であり、特徴的な黒髪を同じく腰ほどまでに延ばしている、ややけだるげな表情をしている美女。それもどう見ても二十歳前後の子供がいる年齢としては若々しい見た目をしていた。そして装備なのだが、獣人が来ている獣の皮で作られた服にアルヴァスところで購入した金属製の棍を持っている。それに付け加えて、今回は肩から指先までを覆う、何やら帷子と何かの鱗で覆われた籠手を装着していた。


(さて、アレでどれほど、有利に戦うことが出来るのか)


『さて、それでは紹介も終わりましたので、双方ともステージに上がってくださ~~い』


 リティシイの気の抜ける声にも関わらず、二人は笑みを崩さずに沼地のステージへと上がっていく。


『両者とも準備が整いましたね?それでは~~~試合~~~開始!!』


 二人が上がるとステージにてカウントダウンが始まり、それと重なる様にリティシィは開始の宣言を行う。


(……見方によっては、俺とカーシィムの力比べとも取れるわけか)


 ふとそう思うが、それに何の意味があると思い、試合は始まったのだった。











「ふっ!」

「しっ!」


 開始の合図が始まると二人はあらかじめ示し合わせたかのように急接近する。


『二人とも!迷わず接近していく!!それほどまでに接近戦に自身があるのか!!!』


 リティシィの言葉に賛同する様に観客は固唾を飲んで二人が本格的にぶつかるのを待つ。


「しゃ!!」


 まず動いたのはマシラ、鋭く棍の突きを放つ。棍のリーチがあるためか、必然的に先制は彼女だった。


 ゴン


 だが、ユライアも慌てない、冷静に前腕に付けているバックラーで棍を受け止めると、もう片方の手で棍を掴もうとする。


「ちっ」


 同然マシラは掴まれることを嫌がり、急いで棍を引き、掴まれないようにする。


 そして掴むこと自体がブラフだったのか、ユライアは棍が引かれると同時にさらに前進する。


「……ふっ」

「はぁ!!」


 その様子を見てマシラは棍を引く反対の腕でユライアを殴りつけようとするが、その瞬間にユライアは迎えるようにマシラの拳を掌で受け止める。


「っぐ、くそ」


 ブン


 そして次の瞬間にはマシラは地面に棍を突き、そのまま後ろに一回転しながらユライアの顎に向かって蹴りを放つ。


 さすがのユライアも気絶するかもしれない一撃はもらえないのか、体を引き、回避する。


『ぶつかりあい激しい攻防!!これぞ接近戦同士の醍醐味と言える戦いです!!さて、いくさ、き、え!?』


 そして双方とも距離が出来ると共に構えを取るのだが


 ブラン


 マシラの殴り掛かった腕は力が入っていないのか、そのまま力なく垂れ下がっていた。

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