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本戦五日目一回戦目

カクヨムにて先行投稿をしています。よろしければそちらもどうぞ。


https://kakuyomu.jp/works/16816452220569910224

『それでは入場していただきましょう!!“破壊剛腕”テンゴ選手対“六法剣斬”レシェス選手!!』


 貴賓席に戻るとグラウンドから元気のいいリティシィの実況が聞こえてくる。


「あら、戻ったの。有意義な話は聞けた?」

「聞けたようで聞けないと答えたほうが正しいか」


 クラリスは扉の音が聞こえたのか、こちらに振り向き問うてくる。


「そう、面倒ごとが起こりそう?」

「……言いたくないが、俺の周りで面倒ごとが起きないほうが稀だろう?」

「ふふ、それもそうね」


 クラリスの問いに自虐的に答えると、クラリスはクスリと笑う。


「ご歓談中申し訳ありません」


 クラリスと会話していると、少し離れた位置にいるユリアが話しかけてくる。


「カーシィム殿下から得られた情報を共有していただきたい」

「それもそうだな」


 俺は口を開き伝える、昨夜の襲撃のことだけを。


「――なるほど、襲撃者は自害したわけですか」

「ああ、カーシィムの話だと、大勢の前で、それも頭と心臓が爆発したらしい」

「得られた情報はないと?」


 ユリアの言葉に頷く。


(それ以外の情報はさすがにユリアには流せない)


 ユリアが何を知っていて何を知らないかがわからない以上、情報は伏せておくに限る。


『さて!!!決まりました!!本日のステージ模様は『沼地』です!!』


 襲撃者の話をしているといつの間にか、ルーレットが終わり、ステージが変化していく。


 ステージ全体は水を吸ったぬかるんだ泥に変化しいき、ある個所には水たまり、ある場所にはこぶのようになっている泥の小山が存在していた。


「両方とも接近戦が主軸か、そう考えればぬかるんだ足場での戦闘はいろいろときついだろうな」

「さてどうだろうな」


 俺の様にマシラは笑みで答える。


「何かあるのか?」

「見ていればわかる。この場はテンゴにとってどれぐらい有利なのかをな」


 マシラはあとは見てみろとばかりにステージから視線を離さない。


『では~~~~~~“破壊剛腕”テンゴ選手対“六法剣斬”レシェス選手の試合、開始!!』


 テンゴは一回戦二回戦と全く同じ装備と服をしていて、なんの代わり映えもない。だが、レシェスは違った、防具がやや薄くされており、防御面はやや低下しているように見える。そして肝心の武装だが、今回は六本携えており、一回戦二回戦と二本ずつ増えている。


「それで正解だな」


 マシラの呟きが聞こえると同時に、二人がステージに乗り、カウントダウンが終わると、それぞれが動き出すのだった。
















「ふん!!」


 テンゴは足元にある泥を掬う様に腕を振るうと、泥がいくつもの球となり、レシェスに向かって飛んでいく。


『おぉ、まず動いたのはテンゴ選手!!足元の沼を手で払い、レシェス選手に向かって放つ!!』


「は!」


 そして高速で飛んでくる泥をレシェスは一本の剣ですべて切り伏せる。


『双方とも、一歩も引かずにやり取りを始める!!こう見ると、ややテンゴ選手が優位に見えますが、どうなる事か!!』


「いや、これぐらいで言われてもな」

「全くだ」


 リティシィの実況を聞くと二人とも笑う。まるで児戯を披露して喜んでいる子供を見るように笑っていた。


「それでは行きましょう『刀剣融合・火水』『刀剣融合・風雷』」


 レシェスは剣を二本抜き、宙に浮かべて融合させると、再び二本抜き、融合させる。そして最終的に普通よりも大きく鋭い剣を二本作り出した。


「そっちの準備は?」

「必要ない」

「では行くぞ」


 ドッ


 レシェスは一瞬で姿を消すと、その周囲の泥が跳ね大きな波紋を作り出した。


『レシェス選手、泥に足を取られることなく、テンゴ選手への疾走していく!!』


 レシェスは泥に足を取られることなくテンゴへと歩みを進めていく。


 そしてテンゴへある程度接近すると、レシェスはなぜか一度跳ね、空中で回転する。


「『流空斬』」


 レシェスが宙で回ると、それに合わせていくつもの斬撃がそれぞれ違う方向から弧を描いてテンゴへと迫る。


「なるほど、ふん!!」


 だが、テンゴは慌てない、左足を泥から上げると、そのままその場でしこを踏む。その結果、テンゴの周囲にある泥は大きく波打ち斬撃の壁となる。


 キィン!!


「つっ!?」

「そこか」


『え?えぇ!?レシェス選手が接近して泥の壁を破壊しようとしますが、なぜか金属音が聞こえてきます』


 リティシィは本当に謎だと言う感情を込めて実況する。


 それもそのはず、再び、地面に降り立ったレシェスが泥の上を走り、泥の大波を切ろうとしたのだがなぜか、剣が泥に触れるとなぜか金属音が鳴り響いていた。そして次の瞬間には再び剣が泥をかき分け、泥の波を割り、テンゴへの道を作った。だが、音で位置がばれていたのかレシェスのすぐ目の前にはすでにテンゴが存在していた。


『すごい!!レシェス選手、泥の上だと言うのにまるで関係ないとばかりに疾走していき、華麗に(アーツ)を使用して、テンゴ選手へと攻撃を図る!!だが、今回はテンゴ選手が上手だったのか、やられそうになってしまった!!』


 リティシィの実況で観客が唾を飲む。なにせレシェスは完全に出遅れた形となってしまっていた。


「はぁ!!」

「!?『属性解放・爆』」


 テンゴが足を止めたレシェスに向かって掌底を放つ。それを見て避けられないと判断したレシェスは泥の中に、赤く輝く剣を差し込む。


 ググッ、パァン!!


 赤い剣が差し込まれた下の泥が膨らみ、自身を含めて破裂する。そしてその後起こる衝撃により、レシェスは強制的にテンゴから距離を取り、テンゴの掌底を回避するのだった。


『凌いだ!!レシェス選手何とか凌いだ!!自信を巻き込む爆発を作り出し、傷を受けながらも回避する。また、テンゴ選手も先ほどの攻撃を食らっているようで今回は痛み分けか!!』


 その言葉に会場が沸き上がる。だが、その中で静かに観察している者達がいた。











「痛み分けか、だいぶテンゴの方が有利そうだな」


 リティシィはああ、実況したが、俺はとてもそうは思えなかった。


(確かに爆発を受けたという部分は二人とも変わらないだろう。だがそれでもダメージは差異があったに違いない)


 テンゴはいつもと変わらない普通の格好だが、それでも獣人特有と言えるタフさと頑丈さが備え付けられている。またそれだけではなく、現在は軽くとはいえ『獣化』した状態のため、多少身体能力も強化されていると判断できる。


 それに対してレシェスだが、今回の試合においてはなぜか防具が薄くなっている。そのため当然防御面が薄くなり、いつもよりも傷を負いやすい状態だった。


「それにしても……」

「なんだ、アレが気になっているのか?」


 俺がある場面に疑問を抱いているとアシラが、笑みを浮かべながら問いかけてくる。


「以前言っていた、テンゴの最後の能力がアレか?」

「その通りだ」


 マシラはこちらの言葉に簡単に頷く。


(まさか、泥の波から金属音が聞こえてくるとはな)


 テンゴが生み出した、泥の波は一瞬とはいえレシェスの剣を止めて、金属製の盾で防いだような音を発した。当然、液状化している泥は結合力が弱く、簡単に剣で割ることが出来るはずなのに、だ。


「能力はなんだ?」

「はは、当ててみな」


 こちらの問いかけに応える気がないのか、マシラは予想してみろと言う。


(硬質化、は違う。波として動いている以上、ある程度の柔らかさはあると判断するのが普通だ。そして今までのテンゴの試合では、物に変化を与えている部分は存在していない。なら、その部分じゃないところにヒントがあるだろう、――――)


 頭の中で今まだの情報を精査して、様々なピースを当てはめて、一番可能性がありそうな物を探す。


 そして出た答えが――――

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