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裏イベント始動

「ご存じの通りエルフはノストニアから出てきません、ですが今回不法に我が国に侵入したことで捕えることになりました」

「……嘘ですね」


 司会者の言葉にとなりのアルガがそうつぶやく。


「エルフはとても探知能力が高いのです、そんな簡単につかまるとは思えません」


 幼児ならまだしも、と付け加えて説明した。


「では金貨70枚から始めます」


 それからどんどん値段が釣り上げられていく。


「言うほど高値になってないな」

「やはり男だから需要が限られますから」


 それでもエルフという希少価値があるので最終的に金貨560枚で落札された。


 拍手が始まると落札者が立ち上がり、礼をする。


「若いですね……」


 落札者はまだ成人してまもない人物だろう。おそらく15,6ぐらいの歳だ。


(今回アークたちは参加しなかったか)


 これはアークたちのイベントと聞かされているが。何も動きが無い。セレナの情報の細部がずれている。


「何もないならそれでいいか」

「なにがです?」

「いや、なんでもない」


 こうしてオークションが終わると宿に戻る。そして夜になると組織の付き合いとしてアルガにカジノへと誘われる。


「これだとドレスコードは必要にだな」


 いつものマスクにローブ姿ではなく、今はきちんとした服装に被り物の仮面を着けている。


「ええ、さすがにあの姿では注目されすぎるので問題になるでしょうが」


 今はそこまで不自然ではない恰好をしている。


「お忍びで来ている方もいらっしゃるので仮面などはそうそう目立たないです」


 周りを見渡すと男性はスーツを女性はドレスを着て、場にいるがばれたくないのかほとんどの人は仮面やマスクをして正体がばれないようにしている。


「ではお楽しみください」


 まずは目の前にあるブラックジャックを行う。


(ここにはよく知っている賭け事が多いな)


 ポーカー、ルーレット、先ほど行ったブラックジャックなどなどだ。


 さすがにスロットは無かったが。古くから伝わる賭け事は一通りそろっていた。


 しばらくすると、アルガが近寄ってくる。


「キラ様」

「なんだ?」

「どうやら面白い催し物があるそうで、よろしければそちらに参加しませんか」


 別段やることはないので提案に乗ると、アルガに連れられて何やら厳重な部屋の前に連れて来られる。


「申し訳ありませんが」

「おい、この方はいいんだ」


 何やら一人のガードが止めようとするがもう一人が止めに入る。


「申し訳ありません、アルガ様」

「いえ、気にしませんよ」

「ありがとうございます、それでそちらの方は?」

「この方は私共の総督です」


 そういうとガードはビクつきながらも声をかけてくる。


「申し訳ありません……もしよろしければお顔を拝見しても」

「それは入るのに必要か?」

「い、いえ、次回来られる際にお顔のみで入ることができますので」

「なら結構だ」


 ガードはアルガに視線を向けるがアルガも処置なしと首を振る。


「では次におひとりで来られる際は紹介状が必要になるのですが、よろしいですか?」

「付き添いがいれば問題はないのだろう?」

「はい」

「ならば問題ない」


 処置なしと判断したガードがしぶしぶ扉を開ける。中に入ると先ほどの煌びやかな雰囲気とは違い暗いイメージが残る。


 どうやらここは裏カジノと呼ばれる場所だ。表面上は清潔にされていても何かが違った。


「キラ様、これが今回の催し物となります」


 部屋の中を進むと何やら闘技場らしき場所にたどり着いた。


「ここは?」

「裏カジノの大目玉である、闘技場ですよ」


 アルガの説明でここでは様々な戦闘を娯楽として見れるそうだ。


 人vs人、魔物vs魔物、人vs魔物、さらには家族や恋人同士での殺し合いなど、なかなか趣味の悪い催し物を行っているらしい。


「で、面白い催し物とはなんだ?」

「実はですね、本日は闘技場での予定はなかったのですが、なにやら大物が割り込みを入れたようでしてね、それが大層噂になっているのです……それがこちらになります」


 何やらチラシのようなものを渡される。


『急遽開催!!

 五人の学生vsワイバーン

 ・

 ・

 ・

 ・

 』









(………これってもしかしなくてもあいつらのことだよな?)


 五人の学生なんてあいつらしか思い浮かばない。


 しかもレートもワイバーン1.1倍に対して学生組が17.9倍。


「どうしますか、手堅くワイバーンに、それともイチかバチかを狙って学生組にしてみますか?」


 アルガも学生組が勝てないと予想を立てているみたいだな。


「そうだな、学生組に金貨50枚ほど賭けてみるか」

「?!……では私も学生組に賭けると致しますか」


 賭け札を受け取ると闘技場に備えている席に着く。


「一つ教えてもらえませんか、なぜ学生に賭けたのですか?」

「なんだ知らないのか、あの五人はトロールを倒したことがある。そのことを考えれば可能性は十分だろう」


 アルガなら既に調べていると思ったが、どうやらあのことは騎士団の情報規制がうまく働いているようだ。


「そうなのですか、詳しく教えてもらっても?」

「このくらいの情報すら知らないのか?」

「……自分で調べるとしましょう」


 数多くの情報を集められるようになってもらわなければ困る。そのためにお前たちを利用しているのだから。


「どうやら始まったようですね」


 ステージにライトが集まると二つある出口のうち一つが開き、司会と思われる人物が出てくる


『急遽開催したにもかかわらず多くのお客様にお越しいただき誠にありがとうございます。それでは今宵の対戦は、かの有名なグロウス学園の生徒です』


 先ほどの出口から仮面を着けた5人の子供の姿が現れる。


「彼らがですか………強そうには見えないのですが」


 一目しか彼らを見ていないのであれば弱く見えてもおかしくないだろう。


 子供であるがゆえに背が低く弱そうな印象を受け、普通に売っている武器に防御力の低そうな学園の制服なのだ強そうに見える人物がいたら眼球を洗ってこいと言うだろう。


『そして対する相手は亜竜と呼ばれますが、歴とした竜の1種であるワイバーン!!』


 反対側にある扉が開くと大きな檻が出てくる。


 ギャァアアアアアアアア!!


 中には肉食恐竜の頭と鰐のような尻尾、腕は蝙蝠のような翼となっておりそれが弱そうと言われればそうは感じないほど十分な太さを誇り、後ろ脚は太く頑丈そうだった。


 大きさも体長10メートルはあり、この大きさで本当に飛べるのかと思うほど。ただその反面、どんな生物にも負けなそうな雰囲気はあった。


(あれが前世にいたのなら人類はあそこまで発達しなかっただろうな)


 銃弾も効かなそうな鱗にとても鋭い爪と牙。前世なら戦車でも引っ張り出さないと太刀打ちはまず無理だろう。


(アレでもこの世界ではそこまで脅威ではないんだからな………)


 そんなワイバーンもこの世界の実力者が集まれば簡単とまでにはいかないが狩れてしまう存在だ。


 なにやら達観した感想が出てくるが、思考を切り替えてどのような戦闘を見せてくれるかを期待した。


『それでは~~~~はじめ!!』


 いつもまにか司会は実況席らしき場所に移り鐘を鳴らす。


 ガシャン


 檻が開き中からワイバーンが解き放たれる。


 ガァアアアアアアアアアアアア!!!


 外に出ると同時に雄叫びを上げるワイバーン。


 その叫び声に当てられて動けなくなっている五人。


『初めてのお客様もいらっしゃると思いますので、ご説明をします。この会場は特殊な魔具を用いて観客席には一切の影響が出ないようになっていますのでご安心ください』


 観客席との間に鉄の柵しかないのに皆が何も言わないのはそういうことらしい。


「はじまりましたね」


 再び闘技場の方に目を向けると本格的に試合が始まった。


(さてさて、どうなることやら)

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