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タイミングのいい人材

カクヨムにて先行投稿をしています。よろしければそちらもどうぞ。


https://kakuyomu.jp/works/16816452220569910224


「リョウマが出奔したのは理由は理解できた。だがそこまでを聞いてもアシラを仲間、言い戻すと家臣に求める理由が中途半端としか思えないが?」


 リョウマが出奔する理由を聞いたが、それがアシラを欲しがる理由にはならなかった。


「純粋に気が合いそうで腕の立ちそうな奴らだから、とは言わないよな?」

「いえ、まさにそれです」


 思わず口に出した予想が、答えだとリョウマは言う。


「先ほど俺は出奔したと、そして故郷を見捨てられないと言いましたが。それは何もしないわけではありません。せっかく出奔した身なので少々各地を回り、様々な見識を摘もうと思って入ります。現にこうやってネンラールの一大行事に参加しています」

「……つまりは護衛にという事か?」

「いえ、未だ言ったことがない町や土地に共に行ってみないかというぐらいの気持ちの勧誘でした。もちろん、私の旅路で安全性を高めることと、もし俺が緋炎家に戻る際にあわよくばついて来てくれないかなという下心はありますが」

「ずいぶん正直だな」


 確かに出奔した理由がそれだった場合、リョウマは放浪者として生きることになる。そして人生を悲観していないのなら、これを機に色々と見識を深めるという選択も間違っていない。また気が合う者を旅に誘うのもそうおかしい話ではないし、なにより付け加えた下心も本当なのだろう。


「どうだ、アシラ、いろんな場所に行ってみねぇか、砂漠の王国や水に浮かぶ古城、宝石の洞窟、小人になったような大きな樹、道中で見るヘンテコな生物や景色、そんなものを見てみたくないか?」


 リョウマは楽しみでしょうがないとばかりに


「すまんが断るぜ」

「……そうか」

「わりぃな、俺もいろいろと立場がある。それにさすがに長くあいつ(・・・)をほったらかしにするのもできないからな」

「なんだ、妻帯者だったのか……それを聞いて、断ってくれてほっとしたぜ」


 リョウマはアシラに妻がいることを聞くとさすがに諦めた。


「アシラ、おまえ結婚していたのか」

「おう、って言ってなかったか?」

「聞いてな…………いや、確かに……どっかで聞いた気が」


 記憶をほじくり返してみると、似たような話をどこかで聞いたことがある。直接本人からじゃなく、他人の話を聞いたかもしれない。


「へぇ、奥さんがいるのに、こんな場所に長くいるんだ」


 いつ間にかやってきたクラリスが好みの酒を見つけたのかグラスを持ちながら隣にやってくる。


「大体2,3か月だったかしら、奥さんをほったらかしにしているの」

「いや、その、そういじめないでくれよ」


 さすがにそのことに触れられるとアシラもそのことについては少々バツの悪い表情を浮かべる。


(前世なら、出張という事でおかしくない期間だが……獣人達からしたらだいぶ長いだろうな)


 色々な設備や施設が揃っていないこの世界だ。できれば夫婦はお互いが助けることが出来る距離にいてほしいと思うのが普通なのだろう。


「話を戻すが、今回の件なかったという事でいいか?」

「仕方がない、俺の懐の問題もあるだろうし、なによりアシラを早く妻の元に返さないと恨まれそうだ。あ、すみません」


 リョウマがアシラのノリで話しかけていることに気付くと謝罪してくる。


「そのままでいい。とりあえず最低限の礼儀をわきまえているのなら、無理に口調を変えなくていい」

「それは……いいのか?」

「ああ、公の場では厳しいだろうが、身内しかいない場所なら畏まっても堅苦しいだけだ。現にアシラにはその口調を許しているだろう?」

「じゃあ、そうさせてもらうぜ」


 リョウマは楽になったとばかりに再び酒瓶に口を付けて飲み干し始める。


「酔っぱらう前に聞くが、そちらが聞きたい二つ目の事とはなんだ?」

「ああ、それか。なに、話しは簡単だ。さっきも言ったが、俺は見分を広めるために色々な場所を回りたい。そして――」


 リョウマの視線がアシラとレオネ、クラリスと向かう。


「なるほど、アルバングルとノストニアへ行けるのかどうかを聞きたいと」

「その通りだ。行けるか?」


 今までの話を考えると、リョウマが様々な土地に行きたいと思っているのは理解できる。そしてそれゆえの質問なのだろう。


 だが――


「今のリョウマの状態ではどちらも頷けない」


 ノストニアは交易町ルナイアウルとノストニア側の交易町は行けるがそれ以上ともなるとまずいけない。そしてアルバングルなのだが、現在のところ生き方は飛空艇に乗るしかない。そして現在、飛空艇はグロウス王国の機密となっているため、一度や二度あった人物をほいほいと乗せるわけにはいかない。


今の(・・)、ということは行く方法がないわけでもないんだな?」

「ああ、俺の部下、もしくは食客としてなら、すぐにとはいかないが、ある程度時が経ち、制限を掛けられることを飲めば可能だろう」


 ノストニアにはあくまで俺の部下、もしくは連れということにすれば重要な施設以外は赴くことが出来るだろう。またアルバングルは完全に飛空艇の情報が漏れないと確信したうえで、そしてアルバングルについてからも監視の目があるうちは可能になるだろう。


「あ~~、部下は論外だが、食客か…………シイナ、どう思う」

「可能性としてはありかと、ですが、二つの地を訪れて、はいさよなら、と行きますか?」

「俺の元を離れることは別に構わないが、それ以上に俺の信用を得て、連れて行っても問題ないと判断されるまでが長いと思うが?」


 二人は食客になった後のことを考えているが、それ以上にまず連れていけるほど信用を重ねる段階で時間が掛かるだろう。


「確かにな……」

「でしたら、話は今すぐに出なくてもよろしいですか?」


 リョウマが話を考えているとシイナが答える。


「こちらとしては構わんが、状況によってはどうなるかわからんぞ」

「……リョウマ様、まずは西に行けるところまで行き、その後、再び東に戻る際にバアル様の元によればよろしいのではないでしょうか?」

「その考えもありだな」


 どうやら二人はアルバングルやノストニアよりも先にクメニギスやフィルクの方角に進むことに思考が傾いているらしい。


「そちらの段取りは任せるが、あらかじめ食客になるかもしれないとなると、現在よりも信用を重ねるのには時間が掛かるぞ?」


 あらかじめ予定が決まっているなら、そこに悪意の芽をしのばせることは簡単だ。それこそ、急に始まった話よりもだ、なにせよからぬ意思が介在するよりもない。


「そこは仕方ないかと、なにせ元の状態でもいつまで食客でいればいいのかが予想できてない以上、私たちからしてみれば同じです。ここから先はリョウマ様がお決めください」

「そうだな……俺は明日明後日とはいかないが、それでもいつ故郷戻るかもしれない身だしな……バアル、オレたちは先に確実に行ける西に向かいたい、その後そちらによるつもりだが、それでいいか?」


 俺はリョウマの言葉に肩を竦めて答える。


「再度言うが、状況によっては食客の話が無くなる可能性もあるからな」

「……致し方ない。様々な地に置きたいのはこちらの我儘だしな」


 リョウマはその言葉を出すと手に持っている酒瓶をラッパ飲みする。


「ん?西に行くのはすぐにか?」

「いや、さすがに大会が終わるまでは、ハルジャールに滞在するつもりだぜ」

「……なら、一つ、依頼がある」

「なんだ」

「何簡単だ、護衛(・・)を頼みたい。保護しなければいけない人員が増えて、少々自体がきな臭くなってきてな、多少でも信用できる腕利きが欲しい」


 暗殺騒ぎに加えてヴァンの孤児たちの保護もしているため、正直人員は多ければ多いほどいい。もちろん信用できることが前提だが。


「なるほど……いいだろう、こちらとしても渡りに船だ」

「そうですね、正直言って路銀はあればあるほどいいですから」

「こちらも助かる腕のある者はいくらでも欲しいからな」


 リョウマはアルバングルやノストニアに行きたがっていることを考えると十分信用できると判断した。


 その後、ある程度話がまとまると、報酬の話に入るのだが、これはリョウマは参加せず付き人のシイナが対応していた。


 そして一通りの話し合いが済むと―――


「さて、こちらの最後の質問だ。昨夜の襲撃者(・・・・・・)について、どう思う?」

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