試合後のごたごた
カクヨムにて先行投稿をしています。よろしければそちらもどうぞ。
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『終了~~~!!!勝者はアシラ選手!!初日にふさわしい最終戦で――って、あれ!?』
観客全員がリティシィの声を聞くと、即座にステージに視線を向ける。
そこには光の膜から吐き出され、転がされるアマガナの姿と、ステージの上で未だに『獣化』を続けているアシラの姿があったのだが
ドッドッ
『ちょちょちょ!?試合は終わっていますよ!?』
アシラはいまだに赤い目をしたまま、アマガナに向かって歩いていた。
「なんだ?やるってのか?」
グゥル、ラァ
低いうなり声の後、獣の呼吸の様な音が聞こえてくる。
「テンゴ!」
「おぅ」
その様子を見て、マシラとテンゴは即座に動く。
席を跳ねるように達がると、手すりまで全力で疾走して、手すりを足場にして一足飛びでステージまで向かって行く。
トッ、ドン!
「手間のかかる坊やだ」
「全くだ」
二人はアマガナとアシラの間に降り立った。
「ほら、帰るぞ、試合は終わ――――」
ガアアアアアアア!!
マシラが優しく諭そうとするが、返答は威嚇の咆哮だった。
「悪い子には躾が必要だな――」
〔~アシラ視点~〕
(あれ?殺したのに死んでねぇ……なら、もう一度コロスか)
光の粒になり、再び離れた場所に現れた相手を見て、再び歩み寄ろうとすると邪魔者が現れた。
「ほら、帰るぞ、試合は終わ」
ガァアアアアアアアアアア!!
(うるせぇ、そいつをコロサせろ)
四肢に力を入れて、邪魔者を排除しようとする。
「悪い子には躾が必要だな」
俺は邪魔者に向かって腕を振り下ろす。
「たくっ」
目の前の邪魔者は携えている棒を振るう。
ギャリ!
振るわれた腕は横からの棒で軌道をずらされて、地面に激突する。
「母親に向かって腕を振るうとはな!!」
ガッ
腕を振り下ろしたことにより、四足歩行になってしまう。そして瞬間を見逃さずに邪魔者は顎に向かった蹴り繰り出してくるのだが
「ぐっ、やっぱこいつの相手は勘弁だな」
衝撃を受けるが、それを逃がすように頭を上げて、二足歩行に戻る。
だが、邪魔者の足も無事では済まなかった。俺の体に当たった部分の皮膚が剥げ、血がにじみ出ていた。
(つよいけど邪魔だ)
ガァアアアアアアア
俺は立ったまま邪魔者を潰すように何度も腕を振るい始める。
ギャギャギャ
だが振られた腕は全て棒に阻まれて、逸らされる。
「たくよ、その力が、いつでも発揮できればよかったが」
もう一人の邪魔者の声が背後から聞こえてくる。
そして――
「眠れ、阿呆」
ドン!!
背後から腹部にかけて衝撃が走り、意識が消えていく―――
(………………あれは、俺はなんで―――)
意識が消えていくと同時に、いろいろと冴えていくが、どうやら遅すぎたらしい。
〔~バアル視点~〕
『え~~~っと、何がどうなっているのでしょう?』
リティシィが困惑の声を上げる。
それもそのはず、終わったはずなのに、アシラは戦闘を継続しようとするし、急に二人が乱入、そしてアシラと戦って意識を刈り取ってしまったのだから。
『あ、はい。なるほど、え~~入ってきた情報だと、乱入したテンゴ選手とマシラ選手はアシラ選手の実の両親だそうです。なのでアシラ選手の様子がおかしいことを察知して、介入したようです』
リティシィは傍に居る人から事情を説明されるとすぐに観客に説明し始める。その甲斐あって観客の動揺は収まる。
『では、変なアクシデントがありましたが………………第七回戦目終了で~~す!!いや~~色々とありましたね。私は中でも―――』
リティシィの感想が述べられる中、貴賓席の中ではバタバタとしていた。
「騎士の手配は?」
「現在、あの三人の元に急行中です」
「急げよ」
三人に付けていた騎士を大至急三人の元に急がせる。
「三人はそこまで危険なのですか?」
アルベールは三人の身が危ないと判断しているのだが。
「アルベール、アシラが元に戻っているという保証はどこにある?アシラが一般大衆のいる場所で暴れてみろ」
「あ」
確かに三人の保護するという部分もある場、それ以上に問題なのが、アシラが暴れ出さないかという問題だった。
(こちらが連れてきた人物だが、それが大勢いるところで暴れられたら信用問題に関わる)
ゼブルス家、退いてはグロウス王国の看板を背負っていると言っていい。そんな中で信用を落とす問題は避けなければいけなかった。
「話は変わるが、アルベールはどうだった?楽しかったか?」
「はい!!」
アルベールの返答を聞き満足感を覚える。その後は三人を無事に回収が出来してからホテルへと戻っていった。
「なぁ、バアル、明日にもう一度、アルヴァスのところに行けないか?」
ホテルに戻り、晩餐を済ませてから、ラウンジでゆっくりしていると、マシラが話しかけてくる。
「なぜだ?武器の新調は行ったばかりだろう」
「その武器が問題なんだよ」
質問が返されると同時に棍が投げ渡される。そしてその棍棒を観察するのだが。
「……なるほど、一つ聞くが」
「ああ、その跡はアシラの攻撃を受けた時に受けたものだ」
棍の表面には数多くの傷跡があった。そのすべてが表面が何度も削られて、中には芯の部分に到達しそうな部分もあった。
「確かに新調が必要だな」
「だろ?だから明日、お願いしたい」
「わかった、時間を作ろう」
明日は俺達の中で参加者はいない。それを考えれば少しの時間コロッセオに到着するのが遅れても何も問題ない。
「それと傷跡で思い出したが、足は大丈夫か?それにテンゴも」
アシラを止める際に顎に蹴りを食らわせているのだが、その結果、マシラの足の甲には深くはないが、削れるような怪我が存在していた。
またテンゴも、背後から掌底を食らわせたのだが、こちらもマシラ同様、とはいえ一直線での衝撃だっため軽微だが、掌に傷を負っていた。
もちろんそれらは光魔法の治癒で問題なく回復したのだが、何かしらの不調があってはいけなかった。
「ああ、食後の運動で、テンゴと手合わせしたが、ひとまずの不調はなかった」
「ならいい、それでアシラは?」
「まだ寝ている。あの状態になったのは久しぶりでな、疲れがたまりやすかったんだろう」
普段は中途半端に発動している『獣化』だが今回は全力で行った。そのため疲労感か普段とは比べ物にならないほど溜まっているらしい。
「ならいいが、この後も勝てるか、疑問だな」
序盤はアシラが押されていたことを考えて、つい言葉に出してしまう。
「ははは、そうだな。この試合で全力で戦えるようになればいいが」
マシラは笑いながら息子の成長を願っていた。
「さて、では明日頼むぞ」
「ああ、いい夜を」
その後、ユリアに予定の変更を申し入れて、快く許可をもらった。
こうして最後に急な予定が入り、ようやく本戦一日目を終えることとなった。




