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冷徹公爵の異世界人生~助けてほしいだと?なら見返りは?~  作者: 朝沖 拓内
第二章 学園の始まりと騒々しい夏休み
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ダンジョン内での強敵

「ようやく目が覚めたか」


 何度か声をかけるとようやくはっきりと目が覚めた様子。抱き着いてきたときはびっくりしたが寝ぼけていたのなら仕方がない。今では俺をすぐにでも殺そうと睨んできている。


「さっき見たことは忘れなさい、じゃないと」


 先ほどの事が恥ずかしいのか少し離れた場所で右手を思いっきり握り締めている。下手なことを言えば今すぐにでも殴りかかってきそうだ。


 だが、からかえそうなネタなので、忘れることはないだろう。


「それよりこれからどうする」

「………」

「提案なんだが、ここを出るまでは協力しないか」

「……そうね、いがみ合って全滅したら意味ないものね」


 出した提案はすんなりと結ばれ、俺たちは協力関係となった。






「で、このダンジョンのことは知っているか」


 見知った場所ならダンジョンのことを知っていると思ったのだが。


「……知らないわ、聖樹の近くにはダンジョンは一つもないはずよ」


 クラリスの記憶ではこのようなダンジョンはないという。だけど、現に俺たちはダンジョンの中にいる。よってここはごく最近にできたダンジョンだと予想でき、同時にクラリスの知識は当てにはできないことが分かった。


「でも本当にダンジョンの中なの?」


 クラリスはダンジョンに落ちる時には意識を失っていたからよくわかってない。


「信用できないか?」

「……いえ」


 説明も無しに、クラリスは確信を持っているようだった。


「言ったでしょ、エルフは魔力を見ることができるのよ?ここの魔力は聖樹の魔力が届いてない」

「…………つまり北の森の魔力じゃないことは分かると?」

「そうよ」


 エルフとは便利なものだなと感心する。


「それで、どうする?今から動くか?」

「……やめときましょう、貴方の戦い方を見て思ったのだけれど……本来ならとても目立つわよね」

「まぁな」


 昼間ですら音が響いて目立つのに、光が乏しい夜なんて目立って仕方ない。


「なら動くのは明日にしましょう」


 どうやら状況を読むことはできている。


(ここで無理に移動しようとするならば協力をやめようと思ってたが)


 問題なくて安心した。ということで交代で眠り、夜を越す。









 朝日の光で目が覚める。


(………なんでダンジョンに朝日がある?)


 天上は空のように色が変わっていき、それと同時に太陽らしき何かが昇っていく。


「まぁ考えても仕方ないか」


 原理が気になるがとりあえず置いておく。


「とりあえず腹減ったな」


 ちなみにどうやって俺達があのペンダントの影響を受けているのか、それはペンダントの鎖を外し、それぞれの足に括り付けている。


 まぁ、そのせいでとても動きづらいが。


 横になっているクラリスの邪魔にならないように動き、座る。


「こいつが眠っている間に確かめさせてもらうか」


 亜空庫からモノクルと食料を取り出す。


 ――――――――――

 Name:リアナ・クラリス・ノストニア

 Race:エルフ

 Lv:32

 状態:普通

 HP:335/342

 MP:3745/3745


 STR:25

 VIT:23

 DEX:78

 AGI:62

 INT:45


《スキル》

【柔拳術:45】【弓術:12】【火魔法:1】【水魔法:2】【風魔法:4】【土魔法:5】【雷魔法:1】【身体強化Ⅲ:7】【料理:1】【家事:3】【謀略:7】【礼儀作法:9】

《種族スキル》

【魔力読み】【自然の語り手】

《ユニークスキル》

【麗舞ノ拳姫】

 ――――――――――


 食料片手にクラリスのステータスを確認する。


「ふむ、ステータスだけなら完全に後衛向きに思えるんだが、ハム」


 一応魔法は使えるみたいだが【柔拳術】の高さが異常だ。


「しかし、こいつもユニークスキル持ちか……」


 ノストニアではどれくらいの人口がいるのかは知らないが、何十人もいるわけではないのならクラリスが持っていても不自然ではない。


「技量は何とも言えないけどステータスだとリンとギリギリいい戦いができるかな」


 心もとないSTR、VITだが【身体強化Ⅲ】で補っているのを考えるとそれくらいだ。


「さて、ご飯も食ったことだ」


 少し周囲を見回ってくるとしよう。


 足のペンダントを外し『飛雷身』で高台に上り辺りを見回す。


 地形としては東と西が草原となっており、北と南が森林、中央に山が一つある。俺たちがいた草原は中央からやや東側に位置していた。


 そしてそれより先だが。


「まさに奈落って感じだよな」


 東の端までくると、影になっておりその先には底が見えない、まさに奈落と言えた。


「少し試してみるか『雷霆槍(ケラノウス)』」


 一番遠くに届く雷の槍を放つと、放電することなく暗闇に突き刺さり飲まれていく。


「あの悪魔(デーモン)の技みたいだな」


 この上に落ちなくて本当に良かった。なにせ落ちたが最後、本当に奈落にでも落ちていくことに成りかねない。


「戻るとするか」


 もちろん帰りも『飛雷身』を使い、元の場所に戻る。


「……まだ寝ているのか」


 ある程度日が昇って来ているというのにこのお姫様は眠りこけている。


「まぁこのペンダントがあるならば襲われないとは思うが、過信しすぎだ」


 この世には絶対はない。それに原理が不明な俺からしたら危険すぎると感じてしまう。


「……どうするか、ペンダントを取り上げるわけにもいかないし」


 このままでは移動することができない。


「仕方ない『水球(ウォーターボール)』」


 水球を作り出し、一部を掬い、そのままクラリスの顔に掛ける。


「ぶっ!?冷たい!!」

「ようやく目覚めたか、クラリス」

「朝から何よ!?」

「……もうすぐ昼になるぞ」


 既に太陽らしきものは真上にある。正直早めの昼食にしようかと思ったぐらいだ。


 キュウウ~~~


 なにやらかわいらしい音が聞こえる。


「……聞いた」

「ああ、バッチリと」


 素直に返答すると拳が飛んでくる。


「危な!!」

「避けないでよ、さっきの記憶を吹き飛ばしてあげるから」

「落ち着け、食料は持っているのか?」

「……ないわよ、貴方を追うときに武器以外持ってきてないわ」


 というので少量だが食料を分ける羽目になる。


 ダンジョンのモンスターは倒してもドロップアイテムしか取れない。運よく木の実があれば食料になりえるが、それ以外だとほぼ皆無と言ってもいい。


「それで眠り姫様、この後はどうしますか?」

「そうね、大まかな地形が知りたい、どこかの高台まで登ろうと思う」

「ああ、それは大丈夫だ」


 俺は先ほど調べたことを説明する。


「大体の地形はこんな感じだった」

「そう、あとはどこに出口があるか、ね」

「それも心配なく、このダンジョンの出口は森のどこかにはあるよ」


 地上で北の森から来た時、神殿から入った先が森が見えたことから北か南の森のどこかにあることは間違いない。


「じゃあ、まずは北の森に行ってみましょう」









「「………」」


 会話もなく北の森を進む。


 それぞれの片方の腕にペンダントの端を括り付けてるので魔物に襲われる心配もはない。


「にしてもこんなものがあるなんてな」


 俺は左腕に括り付けていいるペンダントを見る。


「これはノストニアだけにある秘宝よ」

「……そんなもの教えて問題ないのか?」

「ええ、効果があるのはごく限られた場所だけだからね」


 再び沈黙がこの場を支配する。


「……一緒に動くのは効率が悪いな」

「そうね、じゃあ別行動する?………でも」


 連絡も取れないし、ペンダントは一つしかない。


 けど


「俺はいらない、あと」

「……時空魔法」


『亜空庫』から二つの通信用魔道具を取り出す。


「それに魔力を流せば、こっちと繋がる」


 取り出したのは通話用の魔道具で、繋がるのはこの二つだけに調整してある。


「こんなふうに」

『こんなふうに』


 魔力を流しながらしゃべると、もう片方の方からも俺の声が聞こえる。


「へぇ~、便利な道具があるのね」

『便利な道具があるのね』

「あまりにも距離が離れていれば通じないがな」


 この二台だけだと半径10キロほどが限度だ。






 それから俺たちは別々の方向に分かれることにした。俺は中央の山を越えて南に、クラリスは北の端の方向に向かってだ。


「はぁ~『飛雷身』は使えない、か」


 もし使えば道中を調べることができなくなる。そうなってしまえばどこに出口があるのかわからなくなり、普通に歩いて探すよりも長い時間拘束される。


「地道に歩くか」


 ガゥルルルルルル!!


 中央の山に向かって歩いていると目の前に狼の魔物が現れる。


「はぁ、やっぱり集まってくるか」


 あのペンダントがないから、普通に襲われる。


 それから襲い掛かってくる魔物を殲滅しながら森を調べ進む。


「……こっちは成果なしか」


 北の森から山の麓まで探索したが出口は見当たらなかった。


「……そっちはどうだ」


 山を越える前にクラリスに確認を取る。


『……こっちは出口は無かったわ』

「そうか……どうする?」

『一度合流しましょう、こっちにも雷の音が聞こえていたわ』

「……そっちまで響いていたのか」


 音が届くということは結構近くにいる。


『ええ』

「そうだな、じゃあ合流し……」


 よう、と言おうとすると山の方から圧が飛んでくる。


「すまん、合流はまた後で頼む」


 先ほどまでの魔物は取るに足らない雑魚だったが、おそらくこいつはそうはいかない。


『どうしたの!?』

「ちょっと強そうなのに目を付けられただけだ」


 坂の上に魔獣の影が見える。


 即座に魔道具を仕舞い、バベルとモノクルも取り出し、見てみる。


 ――――――――――

 Name:アグラベルグ

 Race:竜尾白獅子(ドラグレオ)

 Lv:76

 状態:警戒態勢

 HP:2540/2540

 MP:4109/4109


 STR:154

 VIT:135

 DEX:76

 AGI:174

 INT:97


《スキル》

【獅子王牙:34】【竜爪:38】【刃鞭尾:75】【焔硝鱗粉:23】【強靭毛:54】【超自然回復:20】【身体強化Ⅳ:7】【魔力察知:45】【臭気探知:56】【獣の勘:98】【思考加速:18】【限界突破:52】【言語理解:78】【念話:76】【火炎耐性:98】

《種族スキル》

【白炎咆】【竜尾伸縮】

《ユニークスキル》

 ――――――――――


 モノクルで確認し終わると、白色の巨大な獅子は坂を下って襲い掛かってくる。


 その速度は俺がギリギリ眼で捉えられるほどだった。


「『飛雷身』!?」


 即座にユニークスキルを発動し逃げる。


 ドズン!!


 逃げた先で見たのはまるで爆発したかのようにに抉れた大地だった。


(こりゃ、本気でやらないとすぐに死ぬな)


 思考をすべて戦闘に切り替える。

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