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本戦二回戦決着

またカクヨムにて先行投稿をしています。よろしければそちらもどうぞ。


https://kakuyomu.jp/works/16816452220569910224

 グレイネが腕を振ると、先ほどのスケルトンに加えて、犬型のスケルトンが生え出てくる。


「っっ」

「足元にご注意を」


 次の瞬間レシェスは大きく飛ぶ。その理由はレシェスの足元にあった。先ほど犬のスケルトンが出たすぐ近くからほかの犬のスケルトンが出てきており、レシェスの足首に噛みつこうとしていた。


 あそこで足首を噛まれていたのなら、レシェスは次の瞬間に四方八方から犬のスケルトンが現れて、レシェスに襲い掛かるだろう。噛まれた後、襲い掛かる犬のスケルトンを処理しても、再び足元から犬のスケルトンが現れて、今度は両足を拘束し始めるだろう。そうなれば最後、圧倒的な物量に押しつぶされる未来が容易に想像できた。


 レシェスはそうさせないために大きく空へと飛び、一時的な安全な地帯を作り出したのだ。


「甘いわね、穿て」


 今度のグレイネの言葉で、地面が新たに盛り上がる。そしてそこから現れたのは


 バサバサバサッ


 複数の鳥のスケルトンだった。それも骨と骨の間に薄い皮膜が張っており、嘴は異様にとがっており、その用途は――


「!?、はぁ!!」

「耐えれるかしら」


 レシェスは急いで体勢を整えると、羽ばたき突撃してくる鳥を迎撃し始める。


 ヒュン

「っっうざ」


 ただ落下していく、レシェスに鳥が襲い掛かろうとするのだが、鳥は迎撃されないように不規則な動きで迫っていた。


『魔剣を発動したレシェス選手~だが、圧倒的な物量の前に成す術もないように見えてしまう。さて、ここから巻き返せるか~~』


 リティシィは挑発的な実況をすると、レシェスがほんのすこしだけむっとした表情を浮かべる。


「少し本気になろう」


 レシェスはぽつりとそうつぶやくと、鳥に警戒しながら、徐々に落下していく。


 だがその落下ですら危険が伴う。なにせ、先ほどのスケルトンに加えて、足の低い位置にいる犬のスケルトンがいるのだから。


「『加速(アクセル)』」


 レシェスは右の人差し指にはめている白色の指輪に何かを呟くと、レシェスに変化が起こる。


「っふ!!」


 あと少しで下にいるスケルトンに触れられそうになると、レシェスは先ほどとは数段違う速度で体を捻り、下にいるスケルトンを一瞬のうちに切り伏せる。


「っっっっ!!」

 ドン


 そして次の瞬間、なにかが爆ぜる音が聞こえると、レシェスは一瞬のうちにグレイネの方へと移動していた。


 それも――


 ヒュン


 何かがしなる音が聞こえると、音源に近くにいたスケルトンがバラバラに散らばっていく。それも威力が強いのか、飛ばされた骨自体が弾丸となり、後ろにいるスケルトンにも被害が与えられた。


 トトット

 カカカカ


 そしてレシェスは犬のスケルトンを警戒して、地面への接地を最小限にとどめる。ほんの一瞬だけ地面に足を付ける瞬間もあれば、時にはスケルトンを足場に飛び回ることもある、さらに極めつけなのが吹き飛ばしたスケルトンの大きな骨に一瞬だけ乗り、少しだけ進行方向をずらすという荒業をやってのけた。


「ここまで来たぞ」

「っ守って」


 レシェスはグレイネまであと少しというところになると、どうだとばかりに話しかける。そしてその返答は先ほどと同じ攻撃だった。


 だが、先ほど見せた攻撃だけでは、攻略済みのため、レシェスには何の障害にもなりえなかった。


 そしてレシェスは三メートル付近にまで近づく。


「っお願い」


 グレイネは自身を覆っている巨大なスケルトンに声を掛ける。スケルトンは両手を組み、レシェス向けて振り下ろす。


 大きいだけあり両手が地面にぶつかった際に大量の土埃を巻き起こし、レシェスの姿を見えなくする。


「間違えたな」

「っ!?」


 レシェスの声が聞こえると、土煙から飛び出てくる。そして巨大な腕を駆けのぼり、一気にグレイネの元へと近づいた。


「っ穿」

「遅い」


 レシェスは肩付近にまで来ると、巨大なスケルトンの首骨を両断した後、鎖骨の隙間を通って、グレイネの背後に降り立ち。


「私の勝ちだ」


 その言葉と共に剣をグレイネの胸に差し込み、勝敗が決まった。
















「なるべくしてなったな」


 コロッセオには声が重なり、轟音ともいえるほど歓声が響き渡る中、マシラはステージを見て、つまらなそうに呟く。


 ステージには傷が癒えていくレシェスと、グーユ同様にグラウンドに投げ出されたグレイネの姿があった。ただグーユの時とは違い、グレイネは不満を表に表さず、笑顔のまま優雅に一礼して、グラウンドから出ていく。


『だ・い・は・く・り・ょ・く!!グレイネ選手の骨軍団による圧巻する光景、そして、それに怯みもせずに進み続けるレシェス選手も、さすがです!!まるで物語の中の出来事を見てるようでした』


 リティシィは興奮状態のまま、高揚した表情で感想を述べる。


(観客受けはするだろうな)


 千にも迫るスケルトンの兵を生み出すグレイネと、二つの魔剣を使い文字通りの一騎当千となったレシェス、この二人の戦いは観客に受ける構造だろう。


『だが、惜しくも今回負けたのはグレイネ選手でした。そして栄えある勝利をつかんだのはレシェス選手。このお二方に惜しみのない拍手を』


 リティシィの言葉で拍手や口笛を吹く音が何度も木霊する。


「それで、なるべくしてとはどういう意味だ?」


 場に合わせて、軽く拍手をしながら横にいるマシラに訊ねる。


「簡単だ。レシェスの動きとグレイネの指揮の二つが要因だな」

「もう少しわかりやすくお願いします」


 マシラの出した言葉に横にいるアルベールが疑問の声を上げる。


「まず、グレイネの指揮だが、接近戦の見識が疎い。それなりの動きを想定して骨を動かしてはいるが、相手がそれなりでないなら、まず包囲はできないように思える」


 マシラの言葉に納得がいく。以前セレナも成っていたが、遠距離での戦闘に慣れた者ほど、接近戦では苦手になりやすい傾向がある。おそらくグレイネもそれに当てはまるのだろう。


「そしてレシェスの動きだが、グレイネとは逆に集団戦にしっかりと精通している者の動きだった」

「接近戦に疎いグレイネと、集団との戦いに精通しているレシェス、この二人が戦うとなればどうなるかがわかっていた、と」


 マシラはこちらの言葉に頷き返す。


「バアル~次は~」

「次はな―――」


 その後、全員が先ほどの戦いにあまり興味を示さずに時間が過ぎていく。

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