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美麗な見た目の裏腹に

12時19時の2話投稿をします。読み飛ばしにご注意を。


またカクヨムにて先行投稿をしています。よろしければそちらもどうぞ。


https://kakuyomu.jp/works/16816452220569910224

 それから、俺達は市場の各所に存在している休憩所い移動して、話を進めるのだが。


「へぇ~」

「ほぉ~」

「うわぁ……」

「……無理ね」


 ここには先ほど警戒していた、俺、リン、ノエル、エナ、ティタと、先ほどのエナの警戒心を感じ取ったクラリスとレオネ、マシラ、テンゴ、アシラが同伴していた。


「ふふ、面白い人たちが集まった者ね、人族、エルフ、獣人、ここではめったに現れない人たちばかりね」


 少女は、ゆっくりと視線を巡らして、それぞれを観察し始める。


(どう見ても、普通の少女にしか見えないな)


 同時にこちらも目の前の少女を観察する。


 少女を一言で言い表すのなら、赤白、だった。髪は真っ白に染まっており、綺麗に手入れされているのか、腰までまっすぐに伸びている。そしてその美貌は非常に整っており誰が見ても可憐と言えるほど、だがその色素の薄さからかすぐにでも消え行くような儚さを併せ持っていた。そしてそんな白色しか見えない風貌に置いて唯一色を持っているのが、まるで血のような赤い瞳だった。


 これが赤いドレスではなく白い衣装で背後が白一色なら、まるで赤い瞳だけが見えることだろう。


「それで、ドラキュラ(・・・・・)、貴方のお名前はなんていうの?」

「……俺のことか?」


 周囲を観察し終えると、こちらに視線を向けて言葉を掛けてくるのだが、その際によくわからない単語が聞こえた。


「そう、【搭】のアルカナを持っているあなたのお名前を教えてほしいの。あ、ちなみに私はウェンティ、込み入った事情で本名ではないけど、今はこれで我慢してね」


 ウェンティと名乗った少女の視線はこちらにしか向けられていない。


「……バアル・セラ・ゼブルスだ」


【搭】の契約者であると見破られても、ひとまずは冷静を装い対応する。


「ほかの奴らは――」

「ああ、ほかはいいわ。そちらの【魔術師】は少しだけ興味があるけど、別に顔だけ把握していればそれだけでいいわね」


 ウェンティはほんの少しだけ、ロザミアに視線を向けるがそれだけで、また俺へ視線を戻す。


「それで話とはなんだ?わざわざ近づいて来て何かしらの要件があるんじゃないのか?」

「??正直、そこまで込み入った話はないわ。ドラキュラに合えたから知っていきたいなって思って。あと、ドラキュラから聞きたいことがあるかなって思って」


 ウェンティはそういいながら両手を胸の前で合わせて、優しく微笑む。


「なら、教えてほしい。お前は何者でどこから来た?なぜ【搭】だと分かる?なぜ俺をドラキュラと呼ぶ?」

「あら、いっぺんに聞かれても、一度には答えられないわ。一つずつゆっくりと、ね」


 カチン


「「「「!?」」」」


 不意に聞こえた音にリン、ノエル、エナ、ティタは驚き、警戒態勢を取る。


「あら、バルード、遅かったわね」

「申し訳ありません。ですが、勝手に何かを見つけられて、行ってしまう、ウェンティ様が悪いと思います」

「もぅ」


 音の正体はテーブルの上に突如置かれた白磁のカップだった。だがそれだけなら四人はそう警戒しない。警戒したのはいつの間にか、一人の男がウェンティの横にいたからだ。


「そう警戒しないでください、私はウェンティ様の下僕であるバルードと言います」


 現れた男は夏に不適切な長袖長ズボンの執事服を着ている。そして髪は銀色に輝き、肌はウェンティの様に真っ白、そしてその瞳はウェンティと同じく真っ赤な瞳をしていた。


「用事は終わったのかしら?」

「もうすぐです、ヴィーズが選定しております」

「そう、できるだけ上物をお願いね」

「かしこまりました」


 二人のやり取りを目にした四人はとりあえず矛を収める。


「それで一つ目の質問だけど、私はウェンティ、それ以外には残念ながら西から来たとしか答えられないわ」

「西、グロウス王国か?」

「もっと西よ」

「クメニギスか?」

「もっと西であり、答えられるのはここまでなの」


 つまりはフィルク側からわざわざここに来たことになる。


「二つ目の質問は私はドラキュラと同じアルカナシリーズを持っているから。三つ目の答えは彼方がドラキュラだから、それだけ」

「答えになっていないぞ」

「ふふ、疑問がある女性の方が魅力的に見えるでしょう?」

「それだと、俺からしたら不審者という認識にしかならないな」

「あら、それは少し困ったわね。ドラキュラとは仲良くしておきたいのだけど……なら、私からのアドバイス、悪魔(・・)には気を付けなさい」


 ウェンティはそう告げると口直しのようにカップに口を付ける。


「では次にここにいる目的はなんだ?」

「それは簡単、どんな戦士がいるか品定め、そして嗜好品を買いに来ただけよ」


 ウェンティはなんてこともないように答える。実際、時期を考えれば、目的を推測すること自体が簡単なほどだ。


「それでこちらからもいいかしら?」

「どうぞ」

「どうしてドラキュラから【死神】の気配がほんの少しだけ漂っているのかしら?」


 ウェンティは興味深そうで、なおかつとても不思議そうに首をかしげながら問いかけてくる。


「おそらく、触れたことがあるからだろうな」


 それぐらいの問いならば答えるのに何もためらいもなかった。


「そうなの?なら近くにいるのね」

「……それでほかに聞きたいことは?」


 似たようなことをアルムに聞いたが、目の前にいる人物が信用できない時点で深く聞くつもりはなかった。


「ねぇ、バアルよかったら私の元に――」

「お話し中失礼いたします。ウェンティ様、ヴィーズから用件が終わったとの報告が」

「そうなの……なら、そろそろお暇しましょう。どうやらここにいるとドラキュラのお友達が緊張するでしょうし」


 ウェンティは立ち上がると、全員を一瞥した後カーテシーを行う。


「それでは皆々様、機会があればまたお会いしましょう」


 その姿を見ると、一瞬きでこの場から消えていった。そしてウェンティが居なくなったからか、圧が無くなったからか、護衛達の肩の力が抜けていく。


「……なんだったのでしょうか」

「それは俺が聞きたい」


 リンの呆然とした呟きに、俺はため息交じりに返答する。


 こうして、よくわからない嵐のような時間は終わった。


















 カツ、カツ、カツ


 真っ暗な石畳の階段ではヒールの音が響き渡る。


「ありがとう、バルード、止めてくれて。あのままだったら、殺してでも(・・・・・)手に入れたくなっていたかもしれないから」

「いえ、出過ぎた真似をして申し訳ありません」


 階段をゆっくりと下っているのは異常なほど白い肌に真っ赤なドレスを着たウェンティという女性と、バルードという執事だった。


 そして階段を下り切ると、目の前にある扉が存在した。その扉をバルードが開くと


「おっっ待ちしておりました~~~お嬢様!!!」


 扉の中には10歳ほどの少年がおどけた形の敬礼をしながら待っていた。


「久しぶり、クイント。それで、品物は?」

「はい、無事に受け取りましたよ。僕とヴィーズの鼻でしっかりと品質を確かめたので、すべておいしいと思いますよ~~」


 三人は部屋の中にある檻をのぞき込み、品物を確かめる。


「それで、外で何かあったのですか?バルードが止めに入るなんて、久しぶりのことですよね」

「ええ、すっごく魅力的な人にあったのよ」


 ウェンティは頬を高揚させて、うっとりとした表情を浮かべる。


「ふ~~ん、てことは最上級の品質だったの?」

「その通りです。それも複数人、もしフィルクだったら、遠慮なく堪能させてもらうところでした」

「しかも、それだけじゃないのよ、その子は私と同じようにアルカナの【搭】を持っていてね、さらにはドラキュラだったのよ」


 その言葉にクイントと呼ばれた少年は目を丸くさせる。


「そ、それは、確かにレア、いやレアすぎるね……でもなんで手に入れなかったんですか?育ち切っていないなら、刈れるのでは?」

「そうね、できなくはないわ。でもね、危険すぎるのよ」

「ウェンティ様、クイントはまだ若いのです。そのためあの事(・・・)を知りません」


 バルードの言葉を聞いて、そうだったとウェンティは胸の前で手を合わせる。


「お嬢様~何があったの?」

「それはね―――」


 真っ暗い部屋の中で楽しそうな三人の声が木霊するのだった。

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