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冷徹公爵の異世界人生~助けてほしいだと?なら見返りは?~  作者: 朝沖 拓内
第二章 学園の始まりと騒々しい夏休み
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うまい立ち回り

 戸惑う三人を引き連れて俺は借家に戻ってきた。


「さて、お前たちには3つの道がある」


 対面に三人を座らせると、指を一つ立てる。


「一つは大人しく衛兵に自首する。お前が子供のことを配慮すればそれほど罪は重くならないだろう」

「……どれくらいになるの?」

「そうだな、大人になるまで雑用を強制的に行わされる」


 代わりに飯や寝床は用意され、強制労働させられるらしいが詳しくは知らん。


「そして二つ目、教会に素直に戻るだ。いまならカリナでも戻ることができるように取り計らってやるが?」


 おそらく二人の母親は自分が傍に居られないことを悟って二人を教会に預けようとしたのではないだろうか。


 そう考えればあり得ない話ではない。


「いやだ!売られた場所には戻りたくない!!」


 カルスは的外れな事を言い、強く反発する。


 だが今は訂正しない。


「最後に俺の元に来るかだ」

「はい?」

「え?」

「???」


 三者三様の反応を見せる。


「俺の元に来ればこの家での生活することができ、ご飯も満足に食べることができるぞ」

「「「………」」」


 三人は実感できないようだ。


「まぁ、とりあえず数日過ごしてみてから決めろ」


 ということで実際に三人を空いている部屋に泊まらせることにした。











 それから数日が経つ。


「はぁ!」

「今のはいい振りです」


 朝早くから庭ではリンが三人に剣の振り方を教えている。


「ん、ん~~~」


 朝日が完全に出ていない早朝からようやっていると思う。


「あ、バアル様、おはようございます」


 ノエルが俺に気づき挨拶をしてくる。


「ああ、おはよう」

「バアル様、もう少しで終わるので少々お待ちください」

「わかった、その間に顔でも洗ってくるよ」


 水場で顔を洗い、家に入るとすでに三人が台所に立ち料理を始めていた。


「もう少しでできますので座って待っていてください」

「ああ」


 テーブルに座ると既にカルスが座っている。


「おはようございます、バアル様」

「おはよう」


 三人の反応からわかる通り、三人は俺の元に来ることを選んだのだ。


「それにしても最近は料理がどんどん豪勢になっていくな」


 なにせ昨日の夕食はフルコースだったぐらいだ。


「人手が増えたので短時間で作れるものが広がりましたからね」


 リンが料理を持って席に座った。


「凝りすぎだろう」


 現に今並べられている料理は朝食には豪勢すぎる。


「まずいわけではないのでいいじゃないですか」


 まぁその通りだな。


 食事が終わると、俺は学校に向かう準備をする。


「そういえばカルスの方はどうだ?」

「問題ないです、先生方も良くしてくれる、ます」


 カルスたち三人は現在、ルナに戦闘訓練などを習っている。


「あいつたまにポンコツになるから注意しろ」

「あはは………昨日もやらかしていましたよ」


 ルナならそうなるだろうなとある意味で納得した。


「あいつのあそこだけは見習うなよ」


 それだけが不安でならない。


 三人をルナに任せたのはユニークスキルを制御させるためだ。


 現在はカルス、ノエルは発動だけかろうじてできるだけで制御はからっきしだ。カリンに関しては発動すらできていない。


 ユニークスキル持ちなら必ず使い物になるだろう。


「まぁ気長にやればいいさ」

「そう、ですね」


 リンもユニークスキルは制御できていない。ゼウラストにある訓練場なら問題ないが、さすがに街中で被害を出すわけにはいかないのでリンの訓練はさせていない。


(まぁいずれ何とかなるだろう)


 焦燥を感じているようだが、ゆっくりとでも進めればいい。














 総合試験順位


 一位エルド・セラ・グロウス:400点

 一位イグニア・セラ・グロウス:400点

 三位バアル・セラ・ゼブルス:398点

 四位ユリア・セラ・グラキエス:396点

 五位アーク・ファラクス:389点

 六位セレナ・エレスティナ:382点

 七位ニゼル・セラ・アズバン:379点

 八位ジル・セラ・ルディウス:375点

 九位アズラ・セラ・キファラス:369点

 十位リン・カゼナギ:368点

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 ・

 ・



 武術試験順位


 一位イグニア・セラ・グロウス:100点

 一位エルド・セラ・グロウス:100点

 一位リン・カゼナギ:100点

 四位バアル・セラ・ゼブルス:99点

 五位アーク・ファラクス:97点

 六位ニゼル・セラ・アズバン:96点

 七位オルド・バーフール:95点

 八位マウル・セラ・アレスト:94点

 九位キミリス・セラ・ミブスト:92点

 十位カリナ・イシュタリナ:91点

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


 学校に訪れると全員が見える掲示板に成績表が張り出される。


 これは先日行われた学年別テストの順位表だ。


 総合試験は全部の科目の点数を合わせた物で、算術、語学、歴史、魔法学の四つからなる。ちなみにその四つも科目別で張り出されもしている。


 次に武術試験だ、これは合同授業で教師と一対一の模擬戦を行うものだった。見られるのは型、威力、(アーツ)、それとセンスだ。


(まぁこれなら文句は来ないだろう)


 両殿下の手前満点は取らない方がいいかと思ったが、思い過ごしだったようだ。










 今日の日程はこの発表だけなので、そのまま帰宅しようとするのだが。


「ふざけるな!!」


 騒ぎの方を見てみると合宿をしたときに会ったアーク達とセレナの6人がいる。


(またあいつらか)

「またあいつらですか」


 リンと考えることは同じだったようだ。


「お前たちが俺よりも優秀なわけがない!!」

「でも、成績ではもうすでに」

「何か不正をしただろう!!」

「そんなんことをはしていないよ!?」


 ニゼルが食って掛かっている。


「みんなもそう思わないか!!何の教育を受けてない平民が俺たちよりも優秀だなんて!!!」


 周りの貴族もこの成績には何か思うこともあるのか少し顔をしかめる。


(まぁ実際、武術を抜かせば総合評価で半数より上にいるのはあの六人ぐらいだ)

「……あれ?これって私まで糾弾されています?」


 いや、リンのような貴族が庇護している人物は糾弾はされていない。


(明らかに茶番だな)


 不満を庇護の無い平民にぶつけているだけなのだから。


「はいはい、そこまでだ」


 一応止めに入る。


「結果に不満があるならまたやればいい」

「……なに?」


 ニゼルは俺を睨みつける。


「耳まで悪くなったのか?だから、またやればいいだろう?教師に頼んで同じような問題を用意してもらって競えばいい」


 全ての人がスポーツ精神を持てば争いなんて起こらないと思う。


「は!馬鹿馬鹿しい、こいつらが不正をしなければ俺たちが負けるわけないだろう」


 周囲も今はニゼルに同意しているみたいだ。


「はぁ~、お前らもう少し周囲の目を気にしろ」

「なに?」

「もし仮にこいつらが不正を行っていたのならば問題ない」

「俺たちはしていないです!!」


 六人は似たような顔で訴えてくる。


「だから()にと言っただろう……で、こいつらが不正をしているならば問題ない、だけど、こいつらが不正を行っていなかった場合はどうなる?」

「……なに?」

「そうなったら、お前たちは自分の実力が平民より下なのはおかしいとのたまうただの馬鹿だぞ?」

「お前!!!!」


 激高するニゼルにも構わず俺は近づいていく。


 そして手を肩に乗せ耳元で言う。


「今回は調子が悪かっただけだろ?」


 周囲にも聞こえる声で話す。


「それなら仕方ない、次は調子が狂わないようにすればいいさ」


 そして今度はニゼルにしか聞こえない声で囁く。


「ここで傷口を広げるか?見てみろ」


 ニゼルは俺の視線の先を見据える。


「ここには両殿下もいるんだぞ、変に騒いだらどのような評価を得るかな?」

「っ!!!!!」


 視線の先で二人を見つけるとニゼルは下唇を噛み悔しそうな顔をする。


 なにせこのまま喚き散らしても殿下たちからの評価を落とすだけだ。それが理解できたから何も言えない。


(顔に出すなんて、まだまだだな)


 これでは悔しいのが周囲にも伝わってしまうだろう。


「……はぁ、そうだな今回は調子が悪かった」

「ああ、そうだろうね。進んで教育を受けているのが我々貴族だ。次はこの6人にも負けない結果が出るさ」


 そういうと悔しそうにこの場を去っていく。


(たく、嫉妬するくらいなら努力をして見返せよ)


 もしくは表に出てこない方法を取るか、だ。


 ニゼルがいなくなると先ほどの貴族たちもこの場を離れていった。


「ありがとうございます、助けてくださって」


 青い髪が特徴のアークが頭を下げる。


「はぁ、お前たちももう少し考えて動け」

「……それは試験で手を抜けということですか」

「そうじゃない、上手く立ち回れと言っているんだ」


 ニゼルの物言いに反抗せず、下手に出て相手の調子が悪かったですねとでも言っとけばいいだけなのだから。


「そこは自分で考えろ」











 騒動を治めて家に戻ってきたのだが。


「なんでついてきている?」

「いえ、助けてもらったのでお礼でもしようと思いまして!!」


 なぜだか図書館での少女、セレナ・エレスティナがついてきていた。


「バアル様は一人で暮らしていると聞いて、家事でもと思いまして」

「はぁ~~(どっから漏れたんだよその情報)」

 

 リンも今はカルスたちの方に行っていてここにいない。こいつも離れそうもないので仕方なく家に入れる。


「あの~、自分でも言うのは何ですが、こんな簡単に他人を簡単に家に入れるのは……」

「問題ない」


 大切なものはすべて『亜空庫』に仕舞っている。盗み出すことはまずできない。


「ここにあるのはすべて盗まれても問題ない物だけだ」

「じゃあ……問題ないのかなぁ?」


 そういって家の中を見始める。


「あれ?掃除されている?」

「ああ、リンがすべてやってくれているからな」

「え…………ゲームと違う」


 ????ゲーム?


「じゃあ料理を、何か食べたいものはありますか?」


 今はちょうど昼時なのだがリンがいない。


「じゃあ頼むか」

「わかりました、厨房借りますね」


 許可を出すとセレナは食材を取り出し料理を始める。

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