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機竜騎士団の初フライト

カクヨムにて先行投稿をしています。よろしければそちらもどうぞ。


https://kakuyomu.jp/works/16816452220569910224

 父上と別れたその後、俺はコックピット内に入り、事の成り行きを見守る。


「搭乗口、積み降し口(カーゴドア)の閉扉確認」

「船内の状態確認、異常なし。また離陸勧告は済んでいます」

「ローター、およびモーターの動作異常なし」

「周囲の人員、遮蔽物がないことを確認しました」

「飛翔装置の準備完了いたしました」

「残存魔力量、規定量を確認しました」


 コックピット内ではマニュアル通りに様々な事柄を確かめていく。


「少し狭いですね」

「仕方がない。席についている5人に加えて予備役のもう五人いるからな」


 本来は5人用のコックピットに13名もいればそれは狭く感じるはずだ。


「では、バアル様、離陸を始めますが、よろしいですね?」

「いちいち確認するな。今回は最悪の事態以外は一切口出しするつもりはない」

「……わかりました」


 一応の確認で聞いたつもりだろうが、これからこの先、俺が飛空艇を運転しない時の方が多い。そんなときに居もしない誰かに確認を取ることなどできない。


「では飛翔装置起動。その後リクレガに向けて出立する」

「「「「了解」」」」


 操縦席に座っている人物の声で様々なスイッチが起動されて、飛空艇が少しずつ浮き上がっていく。


「移動可能高度に到達」

「では、船首を西に向けて、前進」


 様々な駆動音が聞こえる中、ようやく飛空艇ケートスは俺の手から完全に離れて、動き始めた。









 ゼウラストから出立して3日後、飛空艇ケートスは無事にリクレガの地に降り立つことになった。その後は団員には乗員の誘導をさせて、イゴールの部隊には警備と荷物の運び出しを行わせる。


 その間に俺は庁舎へと訪れていた。








 俺は庁舎の中を進むとリックの部屋へと訪れていた。


「忙しいところすまないな、リック」

「いえ、これが仕事ですので」


 リックは書類を自分の執務机に置き、話を始める。


「初の機竜騎士団の飛行と聞いていましたが、無事にたどり着けて何よりです」

「一応な、何度か問題に直面して混乱する場面もあったがな」


 飛空艇ケートスでは数日間かけてようやくリクレガに到着する。となれば当然夜を越すことになり、注意力が落ちてくることになる。また俺の時とは違い、ブレインに任せて軽く仮眠を取るということが出来ないので、団員たちは持ち回りで交代することになる。その中で一組、交代中に乱気流に巻き込まれそうになっていた。すぐさまブレインが警報を鳴らし、団員は対処をしたため問題には成らなかったが、船内では恐怖を感じさせる揺れが起きてしまっていた。


「派遣された乗員は何か言いたげでしたが?」

「まぁ、飛空艇が墜落してしまう危険性はあらかじめ告げていたから問題ないだろう」


 王家の役人に対しては可能性は低いが墜落しないこともないと話している。それに飛空艇に乗る際に書かせた誓約書には不慮の事故で墜落しても責任を追及しないという書面があるため、何も問題はなかった。


「それで、今回運んだモノに関してですが」

「まずは以前話していた素材買い取りに関してのイドラ商会だな」


 以前リックに希少な素材を探すために獣人から素材を買い取る商会を配置してほしいと連絡があった。今回はそのための費用と人員、必要な道具や魔道具を用意していた。


「なるほど、ならば、本格的に進めることが出来そうですね」

「本格的?すでに稼働させているのか?」


 現在では獣人が物を貨幣に換える手段がないため、獣人専用の娼婦を用意しても意味が無いため、準備段階でとどめていると思っていたのだが。


「娼婦に関しては候補を作っている段階で留めていますが、金銭の方は少しだけ。実は獣人に少量の貸し付けを行いまして。ああ、もちろん軍の費用などからは流用しておりません。あくまで私のポケットマネーからです」

「利子付きでか?」

「いえ、利子の代わりに少しだけ情報をもらった程度ですよ」


 思わずリックに疑いの視線を送る。


「わかっているだろうが」

「ええ、私だけが資源の情報を得ても、富は独占はできませんから」


 リックが有用な情報を独り占めをして財を得ると懸念している。これに関しては本人が隠していることを否定しても、それを確かめる術がないためこのままにするしかない。


(どちらにせよ、ゼブルス家の協力が必要だからな)


 仮にリックが情報を握っても財を得るためにはゼブルス家の力を借りなければいけないため、どこかで判明するのがわかる。


「ほかには何を運びましたか?」

「グロウス王国から交渉人をな」

「では、本格的に線引きが行われるのですね」

「ああ、その通りだ」


 今回の王家の役人が来た理由はリクレガの街の視察とどこまでをグロウス王国の領地とするかの相談だった。


「すでに様々な条件に付いては俺からバロンに話している、あと決まってないのは土地の線引きだけだった。だが」

「それはさすがにバアル様の独断では決められないと」

「ああ、王家は俺が獣人に自身の利益に繋がる話を付けると警戒しているからな」


 例えば俺がバロンに譲歩する代わりに、ほかの資源を受け流すように話を通すこともできる。だが王家としては国の領地を俺の判断で減らされてはたまらないということだ。


「なるほど。ほかには何かありますか」

「ほかには基本的な補給物資だな」


 現在は機竜騎士団団員がケートスから荷下ろしと同時に検品を行っているはずだった。


「ではあとでこちらも拝見させていただきます。それで、初フライトを終えた感想どうでしょうか?」

「あの分なら、突飛な事態にならない限りはまず大丈夫だろうな」


 陸では鳥系の魔物や最悪はワイバーンやドラゴンと言った存在が飛んでいる場合があるため、危険があった。その点、海の上でなら飛空艇も安定して移動させることが出来る。


(ただ、今回のフライトで何か所か孤島の存在が見えたんだよな)


 海の上が安全なのは、ずっと空を飛んでいる生物がいないからだ。ただそれを言い換えれば降り立つ中間地点があれば、そこを経由している空を飛ぶ魔物がいるかもしれないという事でもある。


(それに空を飛び続ける魔物が絶対にいないとは言い切れないからな)


 様々な懸念点が挙げられるが、それでもやはり陸の上を飛ぶのと海の上を飛ぶのでは後者が安全とも言えた。


(武装もかなり積んでいるからいざと言うときには対処できると思うが……要注意だな)

「それはそれは」


 こちらの考えとは裏腹にリックはこちらの言葉に笑顔になる。なにせ、これで俺の都合を見ずにゼウラストとの間で飛空艇を飛ばせるからだ。


「では、今後の予定ですが―――」


 それからリックに今後の予定についてを説明する。

















 リクレガの地での滞在期間は7日を想定している。


 時間としては最初の一日で、物資の荷下ろしを終えたら、主要メンバーへの説明を行う。そして二日目から五日目まででイドラ商会の開店準備にイドラ商会が使う倉庫の選別、及び倉庫冷蔵装置の設置、また同時にリックの娼婦案の進行、リクレガの街の視察、機竜騎士団団員とエウル叔父上、リック、レオン、ディライとの顔合わせをすること、王家の文官と共にリクレガの街の線引きを行う予定となっている。六日目と七日目はこちらの地で突発的に起こる何かに備えての期間だった。


 これらが終わればゼウラストに戻ることになる。











「へぇ~何とも大変そうだな」

「他人事みたいに言いやがって」


 レオンに今回の日程を教えるが帰ってきた答えがこれだった。


 現在はリクレガに到着した日の夜、俺はレオンに誘われてバーベキューを行っていた。


「だか、これで少しは負担も少なくなるんだろう?」

「まぁな」


 機竜騎士団が上手く機能してくれれば俺の仕事はかなり減ることになる。


「それでバロンの様子はどうだった?」

「絶好調だったぜ」


 現在バロンはテス氏族の元に戻り、いろんな氏族の長を集めて国について話し合いをしていると聞いている。


「お前が置いていった案があっただろう?アレをお袋が採用して国の形に立て直している」

「ああ、あれか」


 魔蟲の『王』を倒し終えテス氏族に寄った後、国を興す提案をして、同時にいくつかの案を話しておいた。


「親父は正式に獣王として認められるように異論のある長全員とやりあっている頃だろうよ。あとお袋がバアルが出した案がかなりしっくり来ていたって言ってたぜ」

「それは何よりだ」


 元より彼らの動き方を見て、それに合うような提案をしているから、何ともわかりやすくはなっているはずだった。


「それでバロンは負けそうか?」

「親父が?まさか、悔しいが親父とお袋、テンゴさんとマシラさんは別枠だ」


 普通の氏族の長だとしてもバロンには勝てないという。


(あの四人にはなぜか『獣化解除ビーステッドディスペル』が効かなかったからな。それも関係しているのか?)


 クメニギスとの戦争時、あの四人だけは『獣化解除ビーステッドディスペル』が効かずに戦場で暴れまわっていたのは記憶に新しい。もし『獣化解除ビーステッドディスペル』が効かないことが実力と関係しているなら、レオンの言葉もあながち間違いではないだろう。


「なら近い内に正式に獣王になれそうか?」

「ああ、テンゴさんもバアルの主導のことを知っているし、現時点では獣王になるとは言いださない様子だ」


 こちらとしてはテンゴもバロンと同じ考えならば、バロンの代わりになっても問題ないのだが、どうやら空気を読んだらしい。


「だが、その機竜騎士団ってのが動き出すと、バアルはあんまりこっちには来なくなるのか?」

「まぁ……そうなるだろうな」


 本来であれば数か月に一度顔を見せに来るぐらいはするだろうが、ここまで頻繁に顔を見せるというのは、有事の際以外はあり得ないだろう。


「寂しくなるぜ」

「こっちに来るときは何かのお土産を持ってくるとしよう」

「おう、こっちももてなす準備をして待っているぜ!」


 レオンの差し出してくる盃にこちらの盃をぶつけて、共に飲み干す。








 それから、一週間予定通りに話が進んだ。イドラ商会の素材買い取り店とその倉庫を準備して、従業員を配置する。そして商会が設置されればリックが動き出して経済を回していく。次に機竜騎士団の面々とリック、及びエウル叔父上と面会させてリクレガがどのような指揮系統で動いているかを細かに説明する。その後はレオンと王家の役人と共に土地の線引きを行いに向かう。ここで少し揉めたが概ねのお互いの希望通りとなっただろう。もちろん正式に土地が明け渡されるのはバロンが獣王になって、ほかの条件と共に合意する時だ。


 ここまでなら本来なら5日で済みそうだったのだが、丁度六日目の夕方にテンゴがやってくるらしく、マシラとアシラのために七日目までは護衛と警備以外は休暇を与えた。


 そして8日目、この日がゼウラストに帰る日となった。

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