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冷徹公爵の異世界人生~助けてほしいだと?なら見返りは?~  作者: 朝沖 拓内
第二章 学園の始まりと騒々しい夏休み
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うまく運ばない事態

 教師たちのキャンプ場に付くのだが、そこには教師たちだけではなく騎士団の姿もあった。


(さすがだな、動きが早い)


 騎士団の一部をいつでも動かせるように待機させていたのだろう。


 早馬を走らせれば小一時間で着くことができる。馬よりもステータスがある人物が走るとことさらに早い。


「なぜ騎士様が……それも近衛の(かた)が」


 教師は何が起こっているのかさっぱりわかっていない。


「それにお前たちもどうしたんだ?」


 生徒がこんなに多く集まっているのが不思議でならないんだろう。


 とりあえず俺が代表して現状を説明する。


「なるほど、森の奥で異変が起こったため戻ってきたわけですか」

「その話、詳しく聞かせてくれるか」


(おや?)


 その声に聞き覚えがあった。


「久しぶりだな、ルドル」

「若もご健勝そうで何よりです」


 こいつはルドル、グラスの右腕であり影の騎士団の一員でもある。


 何度か話をしたことがあり俺のことをよく知っている。


「なぜここに?」

「いえ、騎士団に強い魔物がアクリズ森林に現れたと聞きましてね、近場なので急いで駆けつけてきたのですよ」


 そういうこと(・・・・・)になっているのか。


「それでお話を聞かせてもらえますかな」


 とりあえず話せる部分だけを伝える。


「なるほど、ありがとうございます」


 そういうと今度は教師の方に話を聞きに行った。


(………すこし情報を与えすぎたかな)


 なにせルナに調査を命じて、それが見事的中、さらには正確な情報源は教えてはいない。勘がいい奴なら疑いを持つようになってしまってもおかしくない。


(それでも証拠は残してないからな)


 あくまで疑惑しか持てないはずだ。


「バアル様、どうなっているのですか?」


 リンは何が起こっているかは詳しくは理解できてないだろう。


「……少し離れるぞ」







 話し声が聞こえない場所まで移動する。


「バアル様は今回の原因を知っていますね?」


 疑問を投げかけているが言葉に確信を持っていた。


「ああ」

「話していただけますね?」

「………分かった」


 リンには俺の知っているだけの情報を教えた。


 俺が夜にキラとして活動していること、今回の依頼のこと、ルナに調べ物を頼んでここにたどり着くように仕向けたこと。


「―――これで全部だ」

「……つまりバアル様はこれから得られるであろう情報のために三人を売ったわけですね?」

「まぁそうだな………幻滅したか?」

「…………………もし貴方がルナを手配しなければ幻滅していたでしょうね、でも助けるためにルナを手配したのでしょう?」


 もちろんだ、殺さずに済むならそっちの方がいい。


「まぁそれでも博打だったがな」

「それでも助けようと考えたわけですね?」

「死なれたら寝覚めが悪いからな」


 俺が依頼されたのは誘引剤をあの三人の近くに撒くだけで、三人が助かっても何も問題ないのだからな。


「ただこれだけは言わしてもらいます」


 リンは刀を抜くと俺の首に当てる。


「もし、主君が人として道を間違えた時は私が主君の間違いを正します」


 つまりは非人道的なことをしたのならリンが制裁を下すわけか。


 本来なら護衛としてあるまじき行為だが、おそらくは騎士道を重んじる連中も同じ行為をしたはずだ。


「わかった、だが俺は必要ならば容赦なく行う、だからその時は全力で相手をするよ」


 そういうと刀が鞘に戻される。


「今のバアル様ならば私が手を下すことはまずないでしょうね」













 キャンプ場に戻るとその場は騒然としていた。


「あ、バアル君どこ行っていたの?!」

「ジルか、何かあったか?」

「うん、合宿は中断だって、みんな急いで馬車に乗り込んでいるところだよ」


 ジルの後ろでは我先にと馬車に押しかけている。


「お前はアレに加わらないのか?」

「今は無理だね、みんな混乱していて出発すらまともにできないだろうね」


 ジルはよく周囲の状況を観察できている。普通12歳だとパニックに陥るのが普通なのに冷静を保てている。


「すまない、若、すこしよろしいですか」


 なにやらルドルがやってきた。


「どうした?」


 その表情は深刻そうだった。


「実は逃げ遅れたものが何人かいるようなのだ」

「………」


 めんどくさいことになった様子。


「それで、若とリン殿の力を借りたいのだ」

「……騎士たちでは足りないのか?」

「足りない、ここに来たのも極少数だ」


 全域を探しきれないから俺たちに頼るか。


「逃げ遅れたのは何人だ?」

「平民5名貴族3名の班が取り残されている、名前はアーク・ファラクス、ソフィア・テラナラス、カリナ・イシュタリナ、オルド・バーフール、――――――――」


 おもわず舌打ちをしたくなったのは致し方がない。











 逃げ遅れた班の場所を聞くと、俺とリンは森の中を駆ける。


(これで死なれたら目覚めが悪すぎる)


 現在はリンの最高速度に合わせて移動している、馬と比べれば遅いが前世の世界記録などはぶっちぎりで追い抜ける速度だ。


 そんな速度で移動していれば時間を掛けずに件のキャンプ場に到着する。


「荒らされていますね」


 テントは崩れて、食器は散乱して、食料には獣の歯形がついている。


「だが血痕がないってことは少なくとも怪我を負ったわけではないだろう」


 証拠に多くの足跡がキャンプ場とは逆の方向にいくつもある。


「なんでキャンプ場の方に逃げなかったんだ?」


 普通なら教師や護衛と合流する方向に逃げるはず、だがその理由はすぐに判明した。


 フゴ~~~


 (いびき)のような声が聞こえてくる。そして声の主は教師のキャンプ場の方向から聞こえてくる。姿を現したのは二足歩行した気持ち悪い豚だ。


「オークか」


 ――――――――――

 Name:

 Race:オーク

 Lv:

 状態:興奮

 HP:220/220

 MP:70/70


 STR:18

 VIT:23

 DEX:12

 AGI:15

 INT:3


《スキル》

【脂肪鎧:】【悪臭:】【剛腕:】【貪食:】【嗅覚強化:】【吸収:】【夜目:】

《種族スキル》

【異種交配】

《ユニークスキル》

 ――――――――――


 普通の子供なら勝てる相手ではない。


 ブゴーーー!!!


 オークはリンめがけて突進するが。


「近づくな獣が」


 いつの間にかリンはオークの後ろに移動しており、オークはそのまま上下に分断された。


「さて、こいつも呼び寄せられた魔物だな」


 瞬く間に倒れていくのを見ながら痕跡を探す。


「バアル様」

「どうした?」

「これを」


 リンが見つけたのはキャンプから離れていく足跡だ。


 それも


「別々の方向に逃げたのか」


 一つは3つの足跡、もう一つは5人の足跡がある。


「貴族と平民、別々に逃げ出したか」


 組み合わせで言うとそう推測した。


「どうしますか?」

「俺が5人の方を追って、リンは3人の方向に行ってもらうがいいな?」


 逃がす人数が多いほど必要な実力は上がっていく。


 武芸だけの模擬戦だとリンが圧勝するが、何でもありの戦いだと基本は俺が勝利する。


「わかりました」


 すぐさま二手に分かれてそれぞれ追跡する。


(おいおいおい、どこまで奥に進んでいくつもりだよ)


 このまま行ってしまうと俺が煙を炊いた場所にたどり着く。


 促進剤を使った場所なら魔物がいる頻度も跳ね上がる。


「たく、間に合ってくれよ」


 足跡を辿っていくのだが途中から木がなぎ倒されたり、岩が砕かれたりしていてどれほどの戦闘が起こったかを物語っている。


(この戦闘跡からしてオークよりも強い魔物が発生したのは確かだな)


 オークならばこのような破壊の跡は残せない。


(魔法も授業で習った物しか使われていない)


 おそらく学生が使ったものだけしかない事から魔物は物理特化だろうと予想できる。


 オオオオオオオォォォォォーーー!!!!!


「あっちか」


 声のする方に急いで向かう。





〔~リン視点~〕


 バアル様と別れて三人の足跡を追う。


「ここは……」


 私たちがキャンプしていた場所の川下にたどり着いた。そこから足跡は私たちのキャンプ場の方向に向かっている。


(まだ真新しい、ということは近くにいるはず)


 足跡が出来ている場所の砂利は乾いていないことからそう判断する。そのまま足跡を追っていくと岩場にたどり着いた。


(まずい、ここは足跡が残ってない……………だけど岩盤ならば振動はある程度響く、それを頼りに)


「…………見つけた」


 微かにだが三つの振動を見つけることができた。


 急いで移動すると崖の窪みに身を潜めている三人がいた。


「大丈夫ですか?」

「ひ、ひとだ!」

「よかった!」

「助かった~」


 三人は擦り傷などの小さな怪我はあったのだが大きなけがなどは無く。とりあえずは問題がなかった。


「ひとまずここを出ましょう」

「む、無理だ!」

「どうして?」

「外にはあいつらが」


 三人は外へ出たがらない。


「あいつらとは?教えてください」


 すると三人からポツポツと話し始めた。














『おい、何かおかしくないか』


 夜、平民のうちの一人が何かを感じ取ったのか食事中にこんなことを言い出したのが始まりだ。


『何を言っているんだか』


 だが俺たちはその言葉を戯言だと思い、まともに取り合わなかった。


 その後、夜になり見張りを平民にやらせているとなにやら物音が聞こえてくる。


『問題ないようだ!大けがをしたものが出ただけだ!』


 そんな声が響いてきた。


 これを聞いて俺たちはどこかの班が騒いでいただけだと思い、そのまま騒ぎを無視した。


 そうして夜が過ぎ、眠りに落ちるのだが。







「するとあいつ(・・・)が急に現れて」

「あいつ………とりあえず移動しましょう」


 私は三人を誘導してキャンプ場に向かおうとするが。


 オオオオオオオォォォォォーーー!!!!!


 魔物の叫び声が聞こえてくる。


「あ、あいつだ?!」


 三人が再び混乱する。


「ふぅ、落ち着け!!!!」


 私は三人を一喝する。


「いまここで慌てて何になる!!助かりたければ騒がずに付いてこい!!!」


 私の一喝により三人は正気を取り戻したのかこちらを見てる。


 そして、おぼつかない足取りだが確かについてこようとする意思がある。


(こちらはこれで大丈夫でしょう、そっちは頼みますよバアル様)


 あの声の魔物は気になるが三人のことを考えてみんなの元に戻る。











〔~バアル視点~〕



 ギャギァ!!

 ガァー!!

 シャー!!


 咆哮の場所に向かうのだが道中に魔物の数が激増している。


「邪魔!!」


 魔物どもを薙ぎ払いながら進む。


(にしても数が異常だな)


 弱い魔物が大量に発生している。それも方向の場所に近づけば近づくほど数が多く。


(そろそろだと思うが)


 森の隙間から白い光が漏れ出ている。


(あっちか)


 急いで移動すると、そこには多種の魔物の群れに囲まれている五人の姿があった。


 今は大した怪我はしていないが疲労しているのが遠目からでもわかる。


「ふぅ~~」


 俺は少し離れた位置に立つ。


「『雷霆槍(ケラウノス)』」


 雷で出来た槍を生み出し構える。


「フン!!!」


 雷霆槍(ケラウノス)を魔物の群れに放つと広範囲に放電が(ほとばし)る。


 一瞬全員の動きが止まり、その間に俺は動く。


「『飛雷身』、『放電(スパーク)』」


 まずは群れの中にある空白の部分に移動し、自分を中心に強力な放電を使う。


(三分の一は死んだだろう、あとは)


 ほんの少しだけユニークスキルを発動させ身体強化する。


(少しずつ潰すしかない)


 槍でゴブリンの頭を潰し、狼の頭に穂先を突き立て、近づいてきた蛇を槍で薙ぐ。


 そうやってここいらにいる魔物全てを排除する。

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