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ロキの本領

 アルムから3000の軍を手配してもらった後は父上に再び連絡を取り、いくつかの部隊をルナイアウルに向かわせるように手配する。もちろんノストニアの軍がグロウス王国に入るため、陛下にも事前に話を通しておく必要があった。またその連絡にそれなりの時間が掛かることになってしまうため、さらに時間が掛かることになる。










 そして様々な事態が進むだけの日々が過ぎ去る最中。一つの項目が終わりを迎えた。











 ブブブ


 アルムから報告を受けてから5日経つ頃、着々と準備が終わりつつある日の昼。通信機に着信が入った。


『バアル様、フロシスまでの中継機配置が完了いたしました』


 通信機から聞こえたのは人工音声だった。そしてこの通信ができる存在で人工音声となれば一体しか思い浮かばない。


「よし」


 すぐさまノートパソコンを開き、情報経路を確かめる。


 画面に映し出された地図には、弧を描くように点が集まっており、北西まで通信圏が広がっていた。


『意外に早かったな』

『どうやら主要な都市部にはある程度の魔道具が入っていたらしく、道中のいくつかにつながるように中継機を配置すればいいだけでしたので作業工程がいくつか省かれました』


 イドラ商会の魔道具は一応は北西部にも届いていたらしいのだが、あまりにも間隔が開きすぎて通信範囲外になっていたようだ。それが確認できればあとは間を埋めるように中継機を配置すれば簡単に繋がる様になる。


(いい誤算だ。早いに越したことはない)


 あとひと月半ほどで今年が終わってしまう。もし本当にロザミアの言葉が本当なら時間がもうほとんどない。


『次の行動を示してください』


 表示された言葉を見ると、すぐさま返信する。


『ディゲシュ伯爵領にロキを配置しろ。そして配置が完了した段階で連絡をしてもらう。いいな?』

『了解しました。行き先をディゲシュ伯爵領に決定。およその到着予想時間ですが、約45時間後となります』


 フロシスからまた戻るようにしてもらうのだが、すでに中継機の設置が終わっているため、あとは単純に戻るだけとなる。そのため、配置するときとは違って実質二日必要となる。


『では動き始めます』


 画面には最短ルートが表示される。


(本当はほかの候補者も調べたいのだがな)


 いくら事前に情報があるとはいえ、違法奴隷の安否の確認だけではなく仕込みを行う必要があった。それにルナの情報で所持していることはわかるのだが、肝心の居場所がわからない。それを調べるために潜入型のロキを投入するのだが、リストにある人物全てを調べるのはあまりにも時間がなさすぎる。


 そのためリストの中で、発覚した場合最もいい事態に転びそうなディゲシュ伯爵を標的とすることとなった。














『バアル様、目的地に到着しました』


 そして二日経つ頃、真昼間からベッドに横たわっていると、通信機から報告がされる。


「わかった」


『亜空庫』を開き眼鏡型端末を取り出す。















 グラスに映ったのはどこかの森の中だった。


『現在は、ディゲシュ伯爵の東部側にある森の中です。ここから西に移動すれば約20分で都市ディゲシュラムに到着いたします』


 また映像が重なるように映し出された地図には現在地が記されていた。


『また範囲にご注意ください』


 今度は地図に色が付けられていく。


『現在は通信圏内にいるため問題ありませんが、この範囲ギリギリに移動してしまった場合、天候や第三の要因で操作が途切れる、もしくは通信が途切れる可能性がございます。なるべく無事に通信できる範囲で動くことを推奨いたします』

「ああ、了解だ」

『では、ご武運を』


 その言葉を最後にブレインの通信が切られる。


「さて、こっちか」


 ガサッガサ


 体の調子を確かめるために歩きながら様々な関節を使う。


(ちなみに武装は)


 ガシャン


 しっかりを右腕を伸ばすと、右手の甲からサプレッサー付きの長い銃身が姿を現す。


(こっちは問題ない、次は)


 カシャン


 今度は左腕の手首から剣が飛び出す。


(仕込みは問題ない。あとは)


 両方の武装をしまうとローブの中に手を入れる。すると脇に装着してるホルスターの感触が伝わってくる。


 パチッ、カシャ、カシャン


 ホルスターを外し、マガジンを外し、弾がない状態で空撃ちし動作に問題がないことを確かめる。


「こっちも確かめておかないとな」


 左腰にさしてあるごく普通の剣と腰の後ろに装備している小盾を触る。


(ふっ)


 右手で剣の柄をつかみ素早く引き抜く。そして左手は後ろに回し小盾を素早く掴む。


「慣れていないとこんなものか」


 明らかにリンやラインハルトの抜刀よりも遅い。


「動作は好調、あとは」


 現在ロキはおかしく見られないために普通の服装に似せた姿をしている。ズボンは魔物の革で作られており丈夫そうに見える。また上半身は丈が長いローブのような造りをした服を使っている。またそっくりに作ってはいるが作り物の肌のため、それを隠せるように長袖にすぐに取り外せるグローブを装着している。そして頭部はフードをかぶり、またフードの中を隠すように仮面を張り付けている。


(まぁ、普通なら怪しさ満点だな)


 だが、こんな目立つ格好をしていても、ロキが無事に町に入れる。なぜなら―――












 ディゲシュ伯爵領、クメニギスでも有数の鉱脈を有する領地。当然ながら領地にはいくつもの鉱山が存在しており、その鉱山のおかげで麓の町は栄えている。領地の都市であるディゲシュラムもその例外ではなく、最も大きな鉱山の麓にて、日々大量の鋼材が採掘されていた。


「よう、今日はどうだった?」

「おう、ぼちぼちだな。最近獣人の奴隷が手に入ったから使っているんだけどよぉ、あいつら手際が悪いのなんのって」

「はは、それはしかたねぇさ」

「だな、人族の奴隷だと教えるのは早えが、体の強靭さが根本から違うからな。長期的に見れば獣人の方が収益が上がるってもんだ」


 ディゲシュラムの都市城門では全身フルプレートの門番と、大きな馬車を引いている商人が楽しそうに談笑している。


「仕方ないさ、あいつらは脳がないからな、教え込むだけ無駄さ」


(いやいややらせて思うように成果が上がるわけがないだろうに)


 その横を歩きながら素通りするのに誰も気にも留めようとしない。それは長い今着ているローブに秘密があった。


「ん?」

「どうした?」

「今横を何かが通らなかったか?」


 堂々と門番の横をすり抜けるのだが、門番はそれを認識できていない。


「風のせいじゃないか?そんな重そうなフルプレートなら隙間風で間違えそうなものだが?」

「そう……か?まぁそうか、誰かが(・・・)横切っていた(・・・・・・)わけでもないしな(・・・・・・・)

「そうそう、それでな久しぶりにあの娼館に―――」


 後ろから馬鹿話が聞こえるが、お構いなしに門をくぐり、都市ディゲシュラムに入り込む。














 門を通り過ぎ、人の波にのまれない細い道を進む。


(魔力を使用しない、光学迷彩。クメニギスにも効き目があるか)


 実はこのローブには光学迷彩機能を搭載している。前世では戦車などに光学迷彩を積む技術が存在はしていたのだが、それは一定以上の体積を持つ装置を積み込むことが出来てこそようやく実現化したものだ。だがとある技術がこの小さな魔導人形の体で、それを可能にしてくれていた。


(【錬金術】により光学迷彩の装置自体を縮小、それを体の中に組み込むことにより、専用のローブを使えばいつでも透明になれる、か。前世で【錬金術】を使えたら特許を取り、大金持ちになれるな)


 そう、耐久面では難が出るが物自体を縮尺できる。つまりは装置が最低限の耐久力になることと引き換えにはなるが、この魔導人形一つで簡単に透明になれることを意味する。


(さて、まずは地形の把握だな)


 残念ながら地形やどんな建物があるかはまだ把握しきれていない。ルナからの情報はリストがメインであったし、魔道具は通信圏を広げるだけであって周囲を調べる機能など搭載していない。


(その前に、切らないとな)


 周囲に誰の目もないことを確認すると、光学迷彩を一度解除する。


 そうしないと、人通りの多い通りでうっかりぶつかってしまう可能性があった。そうなれば何もいないのにぶつかったという騒ぎが起きてしまうことになる。それだったら多少怪しくても姿を現して地形を把握する方がよかった。

【お知らせ】

カクヨムにて先行投稿をしております。もし先に読みたいという方はあらすじの部分にURLを張り付けていますのでそちらかぜひどうぞ。

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