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冷徹公爵の異世界人生~助けてほしいだと?なら見返りは?~  作者: 朝沖 拓内
第二章 学園の始まりと騒々しい夏休み
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考えれば考えるほど気持ち悪い

「では今から合同訓練を行う」


 今日もサボろうとしたのだが初の合同授業なので仕方ないと参加する。


(体育会系ってどこの世界でも同じなんだな)


 やたらに暑苦しい教師が数人、大勢の前に並び立つ。


「まず、この合同武術授業に関しては特待生、貴族、平民関係なく指導していく」


 貴族連中が嫌な顔をしている。


(平民嫌いの貴族はかなりいるな)


 俺と数名を除いてほとんどの貴族が顔をしかめている。血統主義者からしたら自身の技量が平民と比べられるのは我慢できないのだろう。それも拮抗したり上回られたりしたらどれほど屈辱感を味わうことになるか。


(そういう奴に限って鍛錬とかサボりがちだからな)


 夢を見るのはいいが現実を見ろと言ってやりたい。


「ではまずは得意な武器に分かれてもらう、得意な武器を持っている先生のところに集まってくれ」


 六人の先生がそれぞれ立ち並んでいる。それぞれ獲物は剣、槍、槌、杖、弓、籠手を使用しており、それぞれのスキルに対応している。


「もし得意武器が解らないもしくは武器をまだ持ったことがない奴は俺のところに集まるんだ」


 生徒はそれぞれ得意な武器の先生の元に集まる。


「リンはどうする?」


 俺は槍を持っている先生の場所へ行こうとするのだが。


「バアル様の護衛ですので槍を選ぼうかと」


 だがそれでは意味がない、なにせリンの本領は刀だ、槍に来たところでほとんど恩恵がない。


「学園内ではお前も生徒だ、なら自分の学びたいところに行け」

「…わかりました」


 リンは剣を持っている先生のもとへと向かう。










「俺は槍術担当のカイルという、よろしく頼む」


 槍担当の指導員はカイルという長身の男だ。


「ではまずそれぞれの槍術のレベルを教えてくれ」


 生徒は指名された順に自分のスキルレベルを伝える。


「で、君は」

「俺は36だ」


 俺の斧槍術はこの二年で36まで上がっていた。


「ほぅ、その年で30越えかそれはすごいな」


 ほとんどが10前後なのに対して、俺は30越えそれも上位スキルでだ。


「ではまずは構え方から教える」


 まずは基本の構えから―――――









 それからの訓練なのだが、すでに習ったものばかりでこれもありがたみがなかった。


(リンの方はどうだろう)


 俺は剣術の方を見てみると、リンもつまらなそうな顔をしている。


「では次に(アーツ)について教えよう」

(……(アーツ)か)


 武術を習う者からしたら絶対に習う基礎中の基礎の部分。


「それぞれの武器スキルが伸びると(アーツ)というものが使えるようになる、こんな風に『スイング』」


 カイルが『スイング』と唱えると槍が薄く輝く。


「ふん」


 そして地面にたたきつけると地面に軽くひびが入る。


「ほかにも『エンチャントフレイム』」


 今度は槍の穂先が炎に包まれる。


「このように様々な効果を出すことができるのが(アーツ)だ」

「それはどのように使うのですか?」


 一人の生徒から声が上がる。


「それは簡単だ、まずは自分の魔力を体に纏わせる」


 カイルはわかりやすく体に魔力を纏わせる。


「そのあとはスキルの(アーツ)をイメージする、すると」


 カイルは先ほどと同じように槍が薄く輝く。


「ここで一つ注意点がある、体の流れに決して逆らわないことだ」

「流れに?」

「そうだな…」


 カイルはしゃがみ、石を掴むと少年のほうに放り投げた。


「っと………?」

「今、その石を掴もうとして掴んだかい?」


 その言葉で理解できた。


「石を掴むとき手を伸ばして取ろうと考えたか?どの角度で取ろうと考えたか?両手でつかもうと考えたか?」


 つまりはできると、頭ではなく体が覚えている状態になっているということ。


 頭で変に考えながら動こうとするといつも何となくで出来ていた動きができなくなるような感覚だという。


「この中で槍術がレベル5を超えた奴は居るか?」


 ちらほらと手が上がる。


「じゃあそいつらは、今教えた通り体に魔力を流してから『スイング』を試してみろ」


 だが誰も発動しない。


「ああ、言い忘れていた最初は『スイング』と自分に言い聞かせるようにつぶやきながらやってみるといいぞ」


「「「「「『スイング』」」」」


 教師に習ってつぶやいた人たちは全員、槍が本当に薄くだが輝いた。


「おめでとう、それが(アーツ)だ。詳しく説明すると『スイング』とは打撃として扱う(アーツ)で、刃の部分でも使っていいがそのほかの部分で使っても効果は出る」


 カイルは俺に視線を向ける。


「君はしないのかい?」


 俺は肩をすくめて『パワークラッシュ』を発動する。


 俺は槍術のときに『スイング』から『パワースイング』さらに『クラッシュ』に、それから斧槍術に変化すると『パワークラッシュ』に変化していた。


「おお、君はスムーズにできるんだな」


 ふと周囲を見渡してみると、ほかの受講者は俺の様子を観察していた。


「ん?ああ、ちなみにだが(アーツ)は慣れれば声に出さなくても発動できるようになるぞ」


 あくまでも声を出すのは意識しやすくするため、慣れれば考えながらでも発動することができる。


「では次に―――」


 それから再び槍の基礎訓練に移る。















 槍を振り回しながら考える。


(スキルか……不思議だ、なぜ魔力を纏って想像しただけで発動する?普通は訓練してあのような(アーツ)を使えるようになるのが普通だと思うのだが……イメージだけで体が動き(アーツ)を使えるようになる、それは自分以外の意思に身をゆだねているようなものじゃないか)


 そう考えると(アーツ)を使うのが薄気味悪くなってくる。


 だが周囲は違和感を覚えることなくスキルや(アーツ)を使って訓練している。


(……いまだにこの世界に馴染めてないだけなのか……)


 この考えが杞憂であればいいが。










 合同訓練が終わると算数の授業に入るのだが。


「……」

「このように掛け算とは一定の個数が何個あるかというものを考えます」


 今やっているのは掛け算の練習だ。


(つまらない)


 その証拠にわかりきっている貴族は眠っている。


(いいや、俺も寝よう)


 俺は教科書を顔の上に乗せて、腕を組み、寝る。


(…………………――――――――――――――)













「…バアル様、バアル様」


(誰だ……リンか)


 俺は教科書をどかす。


「どうしたんだ、リン」

「授業は終わりましたよ」


 周囲を見てみると誰もいなかった。


「んん~~~~そうか」


 起きようとしたが、まだ眠気が残っている。


「俺はまだ寝る、お前は好きにしてていい」

「え?」

「…………――――――――――」


 再び教科書を頭に乗せてアイマスク代わりにする。









 ギン!ギャン!ドン!ガカン!


 何やら大きな物音が響く。


(うるさい、眠れない……)


 *****、*****

 *****!!!**********!!!!

 ***********!!


(…………おい、温厚な俺でも怒るぞ)


『お前たち、囲んでやれ!』

『『『『『は、はい!』』』』』

『お前は!どこまでも!』


 バァン!!!!


 そこから爆発音までもが響いてきた。


 ブチッ!!!!!


「てめぇらさっきからうるせえんだよ!!!!!!!!!!!!!!!!」

「「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」」


 俺は窓を開き全力で文句を言う。


(いや、あとから思い返したが迷惑なのは俺だな、うん)


 その後、ユニークスキルを発動させてステータスを強化するとそのまま教室の窓枠に足を掛けて原因の場所まで飛ぶ。


(あそこだな)


 場所は合同訓練でも使っていた場、そこでは20名ほどの生徒がなにやら争っていた。


 途中にあった樹の枝に足を掛けて方向転換する。


 そして一層高く飛び上がり


 ドン!!


 喧噪の中心地に降り立つ。


「お前ら、ここで何している?」


 俺はできるだけ怒りを感情を出さないように声を出すのだが、たちまち17人が震え上がる。


「え?」

「な、なにが」

「助かった…」


 その17人に敵対しているであろう残り三人は逆に混乱している。


「は、破滅公」


 怯えていたうちの一人がそう言うが。


「リン!何が起きているか説明しろ!」


 俺は観客席でこちらを眺めているリンに説明を求めた。


「はぁ~」


 ため息を吐くと観客席からこちらに近寄ってくる。


「就寝中ではなかったのですか?」

「寝てはいた、だが変な音でたたき起こされてな」


 俺は20人をぐるっと見る。


「バアル様、その表情では周りを脅しているようにしか見えません」

「?ただ見渡しただけだぞ?」

「……寝起きで少し怖い顔がさらに怖くなっています」


(確かに眠気を感じているが………そこまで怖い顔になっているのか?)


 周囲の反応を見れば嘘ではないのがわかる。


「まぁいい、いい気分で寝ていたのが台無しだ、だから」


 周りを見渡す。


「これ以上不快な音を出すなら俺が加わるが、どうする?」


 目を合わせまいとこの場にいる全員が目を背ける。


「どうやらここにもう騒ぐ奴はいないようだな」


 しばらくすると騒ぎが収まり、観客がいなくなっていく。


「お前らも静かにするよな」


 俺が言うと機械のように頭を縦に振る。


「それでいい」


 用が済んだので、教室へと戻る。

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