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精霊の本領発揮

 ザッザッザッザッザッザッザッザッ


 多くの足音が森の中を駆け抜ける。


(にしても結構な数がいるな)


 あの後、順調に進めているとは言い難い状況だった。なにせ連続で5回も魔蟲どもの群れが襲い掛かってきた。戦闘が多く発生すればこちらは疲弊するし、時間もかかってしまう。


「なんかおかしいぜ」


 戦闘を走るレオンがそうつぶやくとティタが何かに反応する。


「どうした?」

「……奥のほうに火があがっている」


 俺達は何も感じないが、ティタには何かが起こっているかわかるらしい。


「本当だな、少しだけ焦げたにおいがする」

「ちょっと待ってろ」


 続いてエナも異変を察知し、マシラが素早く木の上に登って状況を確認する。


「お~い、どうだ~」

「まずいぞ、道中の里で煙が上がっている」


(煙?)


 マシラの指さした方向ではうっすらと黒煙が上がっている場所があった。


「急ぐぞ」


 レオンは進路を変更し全速力で移動する。さすがに捨て置くことはできないらしい。













「あそこだ」


 レオンに付いていくと、視線の先では木でできた高い柵の先で黙々と黒い煙が上がっていた。そしてその報告から燃える音と同時に大きな蟲の羽音が聞こえていた。


「まずい!?先行くぞ」


 レオンは近くの木を柵の方角に殴り倒し、倒れていく木の上を走って柵を越えていく。


「あたし、も!」


 マシラはそのまま棒高跳びの要領で柵を越えていく。


「オレたちは村の入り口に向かうぞ」


 エナとティタと一緒に柵沿いを走り、木でできた門を通る。








 柵の中に入ると葉や枝で造られた住処が燃えて、煙を出していた。だが幸いにも地面はむき出しの土で広めに間隔があいているため、延焼による山火事の心配はなさそうだった。


 ブブブブブブブブブブブブブブブブブ


 レオンと合流すべく、中心部に向かっていると小うるさい羽音と高い悲鳴が聞こえてくる。


「あれは………蜻蛉と蜂か?」


 すぐさまモノクルを取り出し観察する。


 ――――――――――

 Name:

 Race:誘拐蜻蛉(アブダクトフライヤ)

 Lv:28

 状態:空腹・群体

 HP:170/170

 MP:210/210


 STR:22

 VIT:14

 DEX:29

 AGI:41

 INT:14


《スキル》

【牙:9】【大顎:7】【音切羽:14】【毒針:11】【潜伏:17】【隠密:37】【飛行:75】【視界強化:42】【粘着毛:26】【硬化:7】

《種族スキル》

【静止飛行】

《ユニークスキル》

 ――――――――――



 ――――――――――

 Name:

 Race:労働蜂(ワーカービー)

 Lv:10

 状態:空腹・群体

 HP:100/100

 MP:120/120


 STR:15

 VIT:17

 DEX:34

 AGI:27

 INT:10



《スキル》

【大顎:11】【毒針:27】【飛行:24】【採取:11】【共存:22】【保温:13】

《種族スキル》

【抗体破壊】

【社会蟲】

《ユニークスキル》

 ――――――――――


 ――――――――――

 Name:

 Race:指揮蜂(コンダクトビー)

 Lv:10

 状態:空腹・群体

 HP:100/100

 MP:310/310


 STR:18

 VIT:20

 DEX:16

 AGI:34

 INT:40


《スキル》

【大顎:9】【毒針:18】【軍指揮:39】【算術:14】【音波:17】

《種族スキル》

【誘液放出】

【社会蟲】

《ユニークスキル》

 ――――――――――


 蜻蛉は一種類だったが、蜂は二種類存在している。またそれらが俺たちがやってきた反対方向の空から次々に村の中に入っていた。


 キシュシュ


 さらには蜻蛉が抱えて剛殻大百足(タンクセンチピード)を運んでいるようで何匹もひしめいている。


「またこいつかよ!」


 バベルを振り、『怒リノ鉄槌』で百足を駆除する。


「さて、レオンたちはどこに」


 うわぁあああああああああ!!!!


 合流しようと思っていると、上空から悲鳴が聞こえる。すぐさま空を見上げると、蜻蛉や蜂に掴まれている獣人の姿が見えた。


「ちっ、ティタ」

「……無理だ、あの高さは届かない」


 ティタは遠距離攻撃の手段を持っているようだが、さすがに射程外らしい。


「バアル、お前はなんとかできるだろ!何とかしろ」


 なんで遠距離の攻撃方法があることを知ってるかと疑問に思ったが、人族が魔法を使っているのを知っているならそこからできると連想してもおかしくない。


「ああ、だが撃ち落とすと確実に捕らえられている奴へも攻撃することになるぞ?」

「でも、死なないんだろう?」

「ああ」

「ならやれ」


 本来なら命令されず筋合いはないのだが、今は毒で縛られているため、聞かざるを得ない。


「わかったよ『雷霆槍(ケラノウス)』」


 仕方ないと手に雷の槍を作りだし、投げると飛んでいる蜻蛉にぶち当たる。


 だが当然掴まれている奴も放電を食らってしまっているだろう。よくて小さい火傷、ひどければ全身火傷の可能性もある。


「ティタ!!」

「…わかっている」


 ティタはすぐさま走りだし、落ちてくる獣人を助ける。様子を見ると運がいいらしく、痙攣し麻痺しているだけで済んでいた。


「さて、どう動く?」

「まずはレオンとマシラ姐に合流する」

「いいのか?」


 空ではほかにも何匹もの獣人が攫われている。攫われた先でいい運命が待ち受けると考えられるなら俺はそいつには絶対に近づきたくはない。


「バアルは走りながらできるだけ撃ち落とせ。それも助けられる限りにだ」


 こちらとしても助けることで恩を売れるので文句はない、


 それからは走りながら何度も投槍をし、できうる限りを助けながらレオンのもとに合流する。










 柵の中心にある広場らしき空間では大きな集団とそれを守るようにしているレオンとマシラの姿があった。


「がぁあああああ!!」


 ブチュ


「っふ!!」


 ドン


 レオンは打撃だとろくにダメージが通らないと理解したのか、百足を掴むと無理やり引きちぎることを重点を置いた戦闘をしており。


 マシラは以前同様に大きな動きをつけて渾身の一撃を与えて正確に頭をつぶすようにしている。だが一撃一撃が大きな動きをとりすぎて小回りが利かない、なので回避に重点を置き、安全なタイミングを探りながら戦闘を行っている。


 だが二人とも無傷と言うわけにもいかず、大きな傷はないがの切り傷や擦り傷があった。さらには不利な点として大きな原因が一つある、それは。


「「「「「うわぁあああああ!!!」」」」」


 レオンとマシラが挟むようにしている集団は泣き叫ぶ子供たちと、それを守る数名の大人だった。それも大人たちは【獣化】しているにも関わらず蟲の攻撃を防ぐので精一杯だった。


(っち、お荷物だな)


 ただ魔蟲(カボインセクト)を殲滅するだけならまだ簡単になるだろう。だがレオンたちは子供たちを守ることに専念しているため、ろくに身動きが取れない状況に陥っていた。


(しかも)


 ブブブブブブブブブブブブブブブブブ


 百足など地を這っている存在はまだいいが蜻蛉や蜂は空中から襲ってくることにより、平面だけではなく上も注意する必要がある。


「おい!バアル!!お前は空の奴らを全滅させろ!」


 エナが集団に近づきながら怒声と呼べる声で命令する。


「俺がか?できると思うか?」

「できるのが分かっている(・・・・・・)!!!だからやれ!!」


 なにやら違和感がある言い方だ。なにせ俺が見せたのは『雷霆槍(ケラノウス)』のみだ、それだけであれだけの蟲を対処できるとは考えられないはずだが。


(……何かあるのだろうな。イピリア起きているか?)

『なんじゃ!出番か!!!』


 イピリアはウキウキしながら出てくる。


(なんか浮かれているな)

『そりゃそうじゃ!精霊の本来はこのような使われ方なのだぞ、それを喜ばない奴はおらんからの』


 イピリアが眼前に浮かぶとエリマキがいつも以上に開いていた。


(おい、魔力はできるだけ残しておけよ)

『了解じゃ、四分の一もあれば余裕じゃよ』


 そう言うと体が大きくなり、首から腰にまとわりつく。


『それじゃあ行くぞ【雷鳴恢恢】!!』


 *********---!!!!


 イピリアが口を開けて言葉にならない声を上げると、空にいる蟲のすべてがプラズマに包まれた。そしてプラズマが消えた後には何もなかった。


「よくやった!!」


 空からの脅威が消えればあとは平面上の敵だけだ、残りはレオンとマシラ、エナが協力して時間をかけて殲滅する。









 魔蟲を完全に殲滅し終えるとようやく守られていた獣人達が安堵の息を吐きだし始めた。


「よくやった!人族にはあんなことができるんだな!!」


 レオンは背中をバンバンと叩く。マシラには頭をこれでもかと撫でられ、エナは一度だけ背中をはたかれた。


「痛い、それより交渉通り薬をよこせ」

「わかっているよ、ティタ」


 エナの声でティタは石で木材にくぼみを作り始める。何をやっているのか不思議に思っていると次の行為で何を行っているかが判明した。


「……これぐらいか」


 ティタは【獣化】するとそのくぼみに牙を入れて液体にする。そしてしばらくすると窪みにあった液体は固まり、固形物になる。


「……ほら」


 ティタは固形物を投げ渡してくる。おそらくこれが例の薬なのだろうが……衛生面上の問題もあるし、何より汚いと感じる。


 その後に10個の固形物を作る。


「……それを飲めば一日分の抗体になる、口に含めて溶け始めたら飲み込め」

「……………了解だ」


 薬なのはいいのだが、せめて人目のないところでやるか、もう少し清潔な場所で行ってほしかった。


「……それといつものだ腕を出せ」


 いつものとはティタ自身が俺に薬を注入することの事を指す。


 素直に腕を出すと噛みつかれる。


 カプッ


「……約束通り後、後7日は持つようにしておいた」


 以前結んだ約束通り、余裕があれば7日持つように薬を入れてもらっている。これを忘れてぽっくり逝ったら笑い話にもならないためティタにはできるだけ頻繁に抗体を打ち込んでもらっている。


(これで計17日は大丈夫ということになる………微妙だな)


 逃げるにしても、もう少し期間が欲しい。せめて二か月分は確保しておきたかった。


「それにしてもあれはどうやったんだ?」


 体面に肉を食っているレオンが座る。


 あれとはイピリアが魔蟲を殺した時の技の事だ。


「……言うと思うか?」

「別にいいじゃないか、それに一度見せたんだ後は何度見せても同じだろう?」

「いやに決まっている」


 敵になる可能性はなくはない、できるだけ手札は伏せるに決まっている。


(とはいってもイピリアなどほとんど使わんから、手札をさらしても問題はないと言えばないがな)


 クイッ、クイッ


 そんなことを考えていると服を引っ張られる。振り向いてみると、まだ獣の特徴を持っていない一人の女の子がいた。


「お礼!!」


 そう言って木の実をくれる。


「ん?ああ、ありがとう」

「私もお兄ちゃんみたいな立派な戦士になるね!!」


 そう言うと子供たちの輪に戻っていった。


 だが


「「「まずい」」」

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