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魔蟲との戦闘

 翌朝、全員が起きるとすぐさま朝食の済ますとグファ氏族の場所に向かう。


「う~ん、久しぶりに里の外に出るな~」


 里の出口では、朝日を浴びながらマシラが背伸びをしている。


(……やっぱり普通の人族にしか見えない)


 マシラの全身を観察してみるが動物らしい特徴がない。特段毛深いわけでもなく、何かしらの部位が変化している訳でもない。


「どうした、熱い視線を向けてくるじゃないか?」


 マシラはニヤニヤしながら聞いてくるが、思っているようなことは考えていない。


「いや、今更なんだがマシラは何の獣人なのかなと思ってさ」


 そう言うとマシラは納得した表情をする。


「あたしはこれさ」


 そう言うと腰の部分から髪と同じ真っ黒い毛を生やした長い尻尾が出てくる。


「???猿?」


 腰に尻尾を巻いていたのだが毛皮の服に紛れて服の一部にしか見えなかった。


「その通りさ、あたしみたいな猿の獣人は尻尾意外に特徴が無いのさ。もちろん尻尾自体の極端に短くてぱっと見、人族にしか見えない奴もいるよ」


 そう言うとその尻尾が首に回されて、くすぐったい。


「おい、やめろ」

「だからお前のことは尻尾の短い猿の同胞だと思っているよ」


 人も先祖は猿の一種だから、ある意味ではその考えも間違っていない。


「ほら、さっさと行くぞ」


 既に【獣化】で腕や足に毛や頭に鬣を生やしたレオンが足を延ばして走る準備をしている。


「それもそうだな」


 マシラも【獣化】したようで髪の長さが増えて尻尾が長くなる。


「どうする、担いでやろうか?」

「いらん、それよりもレオンの【獣化】はその程度でいいのか?」


 ここ数日でわかったのだが【獣化】には数段階ある。体の一部に獣の部位を出現させることから、本当の獣の姿なるまでにいくつか段階があった。


「ああ、さすがにあれは魔力を使いすぎるからな」


 当然【獣化】という摩訶不思議な現象には魔力が使用されており、変化する範囲が大きいほど消費する魔力は増えていく。移動のために使いすぎれば突然の戦闘で少々ハンデを負うことになる。


「ほら、しゃべってないで行くぞ」


 エナも準備をすると走り出し、その後、俺たちも後を追う。










 ラジャの里を出ると深い森を突っ切ることになるのだが。


(暗い…)


 森の中はとても鬱蒼(うっそう)としており、何重もの葉っぱの層で光があまり届いていない。


「よく、こんな中進めるな」

「ああ?なんか違和感があるのか?」


 レオンはつぶやいた言葉に反応するのだが、意味が解っていない。


「暗いだろう?」

「???」


 レオンの顔が不思議そうな顔をしているのだが、こちらを見ているレオンの眼が猫特有の眼になっていることに気づいた。


(そう言えば、猫の目には反射板があったな)


 猫の目は人の眼よりも少ない光量でも十分だ。その特徴をレオン得ているとしたらおそらく暗く感じてはいないはず。


(となると)


 エナは顔の骨格が変わりハイエナのように、ティタは時折、割れた舌が唇から出ている。


 陣形もレオンが先頭になり、その両脇にエナとティタ、そしてエナとティタの内側に入るように俺とマシラがいる。


(暗い中でも視界が開けているレオンが先頭で広い道を探す。エナは嗅覚でティタは熱感知にて襲撃に備える。そしてろくに感知できない俺とマシラは後方からついて行くということだ)


【獣化】することで獣の特性を模倣できているとしたら生物的なアドバンテージが生まれる。今回で言えば生来の探知機能のように。


 これに関しては俺は碌な感知方法を持たない、またマシラも同様だろう。


 そしてグファ氏族の場所に向かう途中なのにもかかわらず警戒をする理由それは。


「っ、足元!!」


 エナの声と同時に足元からとがったものが迫ってくる。


 カン!!


 穂先は横から突き出された木の棒で防がれる。


「バカ、ぼやっとするな」


 すぐさまレオンが襟首を掴み後ろに引っ張られる。


 そして距離が離れると全容が見えてくる。


 地面から飛び出てきたのはサソリの尻尾らしきものだった。


「ふん!!」


 すぐさまレオンが尻尾の根元を掴み引っ張り出す。


「っち、やっぱりこいつらは姑息だ」


 出てきたのは大型犬サイズのサソリだ。


「これが魔蟲(カボインセクト)か」

「そうだ、今回はサソリ型がいるんだな、そして注意しろよ、こいつらは群れで」

「……来るぞ」


 ティタの声で警戒すると森の奥からなん十匹もの百足が襲ってくる。


(こいつらって確か)


 以前、ノストニアとネンラールの再開当たりの洞窟でみたあの百足に似ている。


強襲百足(アサルトセンチピード)だったか」


 だがあの時見たサイズではない、あの時はせいぜいが30~50センチほどだったが、今回はそれぞれが3メートルは余裕で超えている。


「ちっ、このタイプはタフだから嫌いなんだよ」


 ガゴン


 レオンの拳は、確実にクラリス以上の威力があった。だがそれでも外骨格に少しの凹みができただけだった。


「シャ!!」


 エナも爪で攻撃するのだが、せいぜいがかすり傷を着けた程度。ティタも徒手格闘なのでほとんど攻撃が通ってない。


 しかも


 プシャ!!


 百足の口元から紫色の液体が飛ばされる。


(毒だな)


 液体が掛かった樹は、その部分が変色しボロボロになっている。


「ほ!」


 マシラも棍で攻撃を加えるのだが、威力が足りてないのか意味をなしていない。


(どれどれ)


 モノクルを取り出して鑑定する。


 ――――――――――

 Name:

 Race:剛殻大百足(タンクセンチピード)

 Lv:36

 状態:空腹・群体

 HP:520/520

 MP:20/20


 STR:30

 VIT:65

 DEX:10

 AGI:10

 INT:5


《スキル》

【毒牙:10】【大顎:11】【毒液:5】【防鎧:25】【蛇行:20】【壁走り:15】【穴掘り:19】

《種族スキル》

【退くこと知らず】

【軍共鳴】

【堅盾化】

《ユニークスキル》

 ――――――――――




 ――――――――――

 Name:

 Race:地潜蠍(ハイドスコーピオン)

 Lv:24

 状態:空腹・群体

 HP:200/200

 MP:120/120


 STR:17

 VIT:26

 DEX:38

 AGI:22

 INT:15



《スキル》

【鋭鋏:11】【猛毒針:27】【潜伏:17】【擬態:10】【変温:14】【硬化:7】【穴掘り:28】

《種族スキル》

【地動感知】

《ユニークスキル》

 ――――――――――


 百足はゴリゴリの防御タイプ、サソリの方は潜むことに長けて毒を打ち込む暗殺者タイプ。


(接近戦用のファイターだと相性が悪いな)


 接近戦しかできない敵に対して百足が盾役(タンク)で動きを止めて、その間にサソリが死角から攻撃して毒を注入する。毒を刺し終えれば、あとはタンクの後ろで弱るのを待てばいいし、隙があれば再び攻撃すればいいだけだ。


 対処としては、範囲攻撃でタンクもろともサソリに攻撃して、あとは普通に殺す。


 他には高火力で一気にタンクの百足を倒した後にすぐさまサソリを倒す、距離を取って攻撃をするという手段だが。


(全員接近戦しかできない、さらには剛殻大百足(タンクセンチピード)の外骨格を抜くことができない、か。これは長引きそうだな)


「バアル!!」


 マシラの声とともに目の前に影が下りる。


 キュシュシュシュシュ!!


 後ろから剛殻大百足(タンクセンチピード)が襲い掛かってきていた。


「たくっ、世話の焼け」

「いらん」


 援護しに寄ろうとするマシラを制して、すぐさまバベルを取り出す。


「『怒リノ鉄槌』」


 バベルの先端に白い光の槌が出来上がる。


 それを百足に当てると


 パン!!


 蒸発する音ともに爆発する。


「たとえ硬くても、熱に耐性がなければ余裕だな」


『怒リノ鉄槌』は白い槌の固形物質を形成するのだが、この白い光がある部分は超高温で出来ており触れるものすべてが灰になる。


 高温に対して耐性がなければ触れるだけでアウトだ。


「うん、減ってない」


『怒リノ鉄槌』は攻撃すればするほど白い槌は小さくなっていく。だが一撃だけでは全く減ってない。


 キシュシュシュ

 キシュシュ

 キシュシュシュシュシュ

 キシュキシュキ


 百足がうねうね動くと同時に会話らしき音が聞こえる。


(なんだ?)

「負けてられねぇな」


 レオンの腕にライオンの毛が生えると毛の先から炎が舞い上がる。


「がぁあああ!!」


 ギチ、ギチ、ブチ


 百足を両手でつかむと無理やり引きちぎる。


 俺もやろうと思えばできるが、『真龍化』を使わなければ無理だろう。それをただの【獣化】だけで行っている時点で、強化効率がどれほどなのか理解できる。


「私も」


 マシラは棒高跳びのように棍で勢いをつけて高く飛ぶと空中で回転する。


 そして


「『廻天衝』!!」


 最初は棍の中心を持ち回転数を上げる、その後に端っこを持ちすべての遠心力を先端に集めて、最後の回転で振り下ろす。


 ドゴン

 バギッ


 棍は見事に百足の頭を粉砕するのだが、同時に棍も折れてしまう。


(……すごいな)


 まずは棍でバランスを取り回転を増す、その後棍の端っこを持つ、そして同時に尻尾を伸ばし安定させる。そして当たる少し前に伸ばした尻尾を引っ込めていき、威力を倍増させる。


 まさに完璧な威力操作だ。


 だが


「あちゃ~やっぱりこれは無理か、仕方ない」


 マシラは折れた棍を手放し、徒手格闘の構えをとる。


「あれ?マシラねえさんは素手でも行けたっけ?」

「苦手ではあるけどね、一応旦那に教えてもらったからとりあえずは戦えるわよ」


 一応はという程度らしい。


「……刃がついているけどこれ使うか?」


 亜空庫から予備の鉄製の槍を取り出す。


「ふむ、貸してくれないか」


 マシラに渡すと頭をひねりながら槍を受け取る。


「ふ~ん、無いよりましか」


 そう言うと軽く振り回す。


「微妙だな、刃が両方ないようにするか、もしくは両方に刃をつけるかしないとな」


 マシラはバランスが取れないと言う。


「我慢して使ってくれ。完全鉄製の槍だが数打ちの一品だ、従来の鉄槍よりも耐久力はないから注意しろ」

「安心しろ、あたしが使っているのは全部木製だから前のよりは断然堅いよ」


 そう言うと体を大きく動かし全力で打撃を加える。


 ゴン!!


「おっ、今回は砕けた」


 無事に剛殻大百足(タンクセンチピード)の甲羅の一つが割れた。


 ただ


「うん、まぁいいか」


 槍先が衝撃で(ひしゃ)げてもはや刃物としては使えない。だが打撃として扱う分には何も問題はない。


「さて、それじゃあさっさとぶっ潰して先に急ぐぞ」


 それからは俺とレオンとマシラが先頭に立ち、エナとティタが援護に回り、魔蟲の群れを無事に掃討する。

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