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冷徹公爵の異世界人生~助けてほしいだと?なら見返りは?~  作者: 朝沖 拓内
第一章 こうして転生し盤石な人生を手に入れる
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異常なほどの成長

 俺たちは順調にエリアをクリアし、新しく開いた道を進む。


「次は大物がいればいいんでござるが」

「いえ、護衛する身である私からしたら勘弁してほしいのですが」

「おしゃべりもそこまでだ、次だぞ」


 リンはのんきに大物を望み、ラインハルトがげんなりと同調できないと告げる。そんな最中、目の前にまた新しいエリアが見えるのだが。


「……なんか空気が重くないでござるか?」

「ええ、息が詰まりそうです」


 広場に入らずに通路から中を見るといくつものブロックが無造作に置かれていた。それもすべて一辺がメートル以上はあるとても巨大なブロックだ。


「見えてる限りじゃ、なにもいないな」


 入り口の裏に隠れながら中を見るが中に魔物は見えなかった。


 俺たちはゆっくりと中に入っていくが、部屋の中心部まで進むが魔物がいない。


「ラインハルト、魔物がいないステージなんてものはあるのか?」

「聞いたことがないのですが……」


 俺たちが不自然に思っていると後ろから物音がする。


「何が起きた?!」

「来た道が!?」

「は!?」


 急いで振り返ると扉が閉まっている。


「なぜ、?!」


 驚いていると周囲のブロックの影に気配を感じる。


 俺たちはその気配を警戒するように、自然と背中を合わせる。


「ラインハルト、何か理解できるか?」

「残念ながら、姿が見えないと何とも」


 感じている気配からして60はくだらないと判断する。


 グルゥルルルゥウ


 唸り声が聞こえた後、ブックの影から現れたのは黒い毛をした二足歩行の狼だった。


「まずい、コボルトの上位種です」


 ――――――――――

 Name:

 Race:スターヴコボルド

 Lv:

 状態:飢餓

 HP:300/300

 MP:450/450


 STR:25

 VIT:25

 DEX:20

 AGI:30

 INT:5


《スキル》

【貫牙:】【鋭爪:】【闇魔法:】【嗅覚強化:】【吸収:】【夜目:】

《種族スキル》

【飢餓の暴虐】

《ユニークスキル》

 ――――――――――※(個体により差異があるため数値は未記入、およびステータスに関しては平均値)


 すぐさまモノクルを使って調べてみると結果が見え、それを二人にも伝える。


「まずいですね、数体なら問題ないんですけどこの数となると」


 ラインハルトはそういうが俺は種族スキルの【飢餓の暴虐】が気になる。


「「「「「オゥウウウウウウウウウウウ!」」」」」


 だがそんな気がかりさえ碌にする暇もない。なにせ狼たちは遠吠えを上げると一斉に襲い掛かってきた。










 俺たちはそれぞれ背中を合わせて対処する。


「ガル!」

「そら!」


 槍を振り、狼の脳天を叩く。そして薙ぐように穂を振り、周囲の狼を牽制する。


「し、かし、これではキリがないでござるな」


 リンも刀で切りつけるが毛が硬いせいでなかなかダメージが入らない。


「どうしますか若様!」


 ラインハルトもなかなか有効打を与えられない。


「仕方ない、これを使え!」


 俺は時空魔法を発動して強化ポーションをリンに魔剣をラインハルトに渡す。


「ですが!」

「命には代えられないだろう!」


 リンは考え込むと決心して


「ゴメン!」


 ポーションを飲み干すとリンの体が輝きだす。


 そして


「ふん!」


 刀を一閃をすると狼の首がちぎれる。


(すごいな…あの一瓶でここまで強くなれるのか…)


 それからリンは文字通り一騎当千の活躍を見せる。一度刀を振れば、余波で刀が届いていない場所まで切り裂くほど。


「これは…負けてられない」


 ラインハルトは魔剣に手を触れると闇と呼んでもおかしくない黒い物体がラインハルトに纏わりつく。


「グゥ……ハッ!」


 こちらもリンに劣らず狼を狩り始める。


(…まるで堕ちた聖騎士だな……)


 金髪の髪は黒く染まり、比較的に白が多かった鎧は闇が侵食し真っ黒に染まっている。


「じゃあ、俺も全力を出すか」


 久しぶりに【轟雷ノ天龍】を全開にする。


 その途端、空気にオゾン臭が漂い始める。


「ふっ――――」












〔~リン視点~〕


(すごいでござるな)


 主君であるバアル殿の活躍を見ている。


 何かをつぶやくと主君の体に太い蛇のような稲妻が纏わりつく。


「ふっ」


 主君は息を吸い込むと体が残光を残して消える。


「え?」


 いつの間にか主君の姿が消えた。


(あれは一度見たことがある、手合わせした時死角を取った縮地のような技)


 そして狼たちの中心で大規模な放電が起こる。そちらを見てみると主君が狼たちの中心で立っていた。


「ガル!」


 狼が襲い掛かるが主君が腕を一振りしただけで頭がつぶされる。


 そして主君が槍を構えれば、残光を残して狼が蹂躙されていく。


「某も負けるわけにはいかないでござる」


 あのポーションのおかげで羽のように軽くなった体を動かし、再び狼たちに襲い掛かる。








〔~バアル視点~〕


【轟雷ノ天龍】は発動中は魔力を少しづつ消費していく。もちろんただ発動するだけではそこまで力はつかない、だが意図的に一時的に消費する魔力を上げればその分伸び幅は増える。


(さて、さっさとしないとな)


 最大限発動した事により体に力が漲る。雷もただの発動時とは違い、まるで小さな龍が体中を飛び回っている風にも見える。


 そして同時に魔力が減っていっているのがわかる。魔力の感覚からおそらくは一分もこの状態を維持できない。そのためほんの少しでも時間を無駄にできなかった。


「『飛雷身』」


 まずは狼の中心部に移動する。


(それと『放電(スパーク)』)


 俺を中心に起きた放電が狼たちを襲っていく。それだけでも大半の狼は大きな火傷を負い、動きが悪くなっていく。


「ガル!」


 無論狼達もただやられているわけではないので、一匹が襲い掛かってくるが


「邪魔だ」


 腕を振るい頭をつぶす。もはやこの狼たちは敵ではなかった。


 槍を振るっている途中、ふと今の状態が気になってしまう。また都合のいいことにコボルトを鑑定するためモノクルを装備したのだが、すぐさま戦闘になったため、いまだに外していない。好奇心に駆られて自身の腕を見ながら鑑定をしてみる。


 ――――――――――

 Name:バアル・セラ・ゼブルス

 Race:ヒューマン

 Lv:4

 状態:普通

 HP:107/135

 MP:177/368


 STR:15+30

 VIT:18+30

 DEX:28+30

 AGI:35+30

 INT:68+30


《スキル》

【斧槍術:25】【水魔法:2】【風魔法:2】【雷魔法:8】【時空魔法:3】【身体強化:3】【謀略:14】【思考加速:4】【魔道具製作:8】【薬学:2】【医術:7】

《種族スキル》

《ユニークスキル》

【轟雷ノ天龍】

 ――――――――――


(数値が10も違うと歯が立たないというのに……)


 この状態になると全体的に30加算される。普通に考えれば異常な上昇量だった。


 だがこのような異常さがユニークスキルたる所以でもあった。


(それよりも早く終わらせないとな)


 魔力の消費量が遥かに多くなっているので(アーツ)は使わずに移動して殺し、移動しては殺しを続ける。


 そして―――







「「「はぁ~」」」


 狼たちの死体を眺めながら俺たちは背中合わせに座り込む。


「にしても何匹いたんだこいつらは」

「某は40までは数えたが、それ以降は」

「私は30までです」


 つまり少なくとも合計で70匹は居たことになる。


 しばらく座り込んでいると違和感を覚える。


「……ステージ型は全部殺すと宝箱が現れる、そうだな?」

「そのはずでござる」


 この言葉がきっかけに俺たちの脳裏に一つの考えが思い浮かぶ。


 そして頭上から物音が聞こえる。


「散開!」


 ラインハルトの声で急いでこの場から離れる。


 ズドン!


 俺たちの居た場所に大きな巨体が降り立つ。


 グゥルウルゥゥゥゥゥゥゥ


「おいおい、冗談きついぞ」


 目の前に現れたのは、どう考えても先ほどよりも上位個体だった。


 先ほどよりも二回りも大きい体躯に、闇を纏い身に着けているような黒い毛、その中にある血を思わせる赤い胸毛は食事後のようにも見える。


 そして何よりも目立つのは狼の体躯よりも大きい肉断ち包丁だ。


 即座にモノクルを使い、確認する。



 ――――――――――

 Name:

 Race:スターヴウォーウルフ

 Lv:25

 状態:飢餓

 HP:650/650

 MP:880/880


 STR:48

 VIT:50

 DEX:38

 AGI:56

 INT:29


《スキル》

【万貫牙:7】【断爪:11】【闇魔法:8】【嗅覚強化:15】【夜目:15】【影潜り:8】【視野広化:8】【病魔の息:13】【自動回復:9】

《種族スキル》

【飢餓の暴虐】

《ユニークスキル》

 ――――――――――





「おいおい、マジかよ」


 ステータスだけで考えても、さっきとは比べ物にならないくらい強い。


「ガル!」


 俺たちが警戒している中、無造作に包丁が振るわれる。


「っが!?」


 その餌食になったのはラインハルトだった。


 魔剣でとっさに防いだおかげで両断にはならなかったが、ステージの端まで吹き飛ばされ気を失う。


 狼はラインハルトに興味をなくして俺たちに狙いを定める。


「!!『飛雷身』」


 俺の頭上に振り下ろされた剣を確認すると飛雷身で避ける。間一髪で回避できたのだが、剣は床にぶつかると大きな音と共に爆風を巻き起こし、その余波で土埃が舞い上がった。


「………????」


 土埃が収まるのだが、そこに俺がいないのを狼は不思議がっていた。


(危なかった、あんなの食らえばミンチになる)


 剣が振り下ろされただけなのに爆発したかのように地面がえぐれている。もしあそこに生身でいたと考えればどうなっていたか想像に難くない。


「……ガル」

「っはぁ!」


 次の標的は唯一認識できているリンになった。


「『風柳』」


 そして横なぎに振られた包丁に合わせて刀を合わせると包丁の勢い流されずその場で包丁を受け流した。


(やはりすごい技量だな……)


 俺はリンの腕前に舌を巻く。


 それから何度も包丁を受け流すのだが、最後に嫌な音が聞こえた。


 バギッ


「っ!!」


 リンの刀にひびが入り始めた。


 このままでは負けるのは必然だろう。


 頭を働かせていると視線を感じる。そちらを見てみるとリンがこちらを見ている。もちろんそれは信頼している視線だった。


(………分かったよ)


 俺はなけなしの魔力を消費して全力の状態になる。


(時間からして5秒持つかどうか)


 俺はすぐに動き始める。


(有利にするために五感をできるだけ削る)


 まずは猫背の背中を駆けあがり、うまく槍で眼球を切りつけ視界を奪う。


「ガァアアアアア!!!!!!」


 狼は両手で目を押さえて暴れまわる。


(あと二秒…)


 頭をフル回転させてほかに何ができるか考えていると、視界の端に狼が落とした肉断ち包丁が目に入り、それで閃く。


 一秒で包丁の場所に行き柄を持つと、『飛雷身』で天井に移動する。『飛雷身』の特徴で身に着けている装備なら共に移動できると分かっていた。そのため本来では持つのすら困難そうな大きさの包丁でも容易に移動させることが出来る。


 だが『飛雷身』を使ったちょうどのタイミングで狼は動きを止めて目から手を離した。


(まずい、今この姿を見られたら……)


 既にユニークスキルは切れており、重力に引かれて自然落下している状態だ。それゆえに狼は視認してから避けるなんて十分あり得る。


 俺は魔力がなくては打つ手がない。そんな時に不自然な風が巻き上がる。


(……リンか)


 制御はできてはいないがユニークスキルの暴風で大量の土煙を巻き上げて再び視界を奪う。


(助かる)


 そして肉断ち包丁は狼の頭目掛けて落下していき、そして――――――











 何やら揺られるのを感じながら目覚める。


「あ、起きましたか若様」


 揺れの原因はラインハルトに背負われていたからだった。何とか体を動かそうとするが。


「まだ動かない方がいいですよ、あの大型を倒したのはいいんですが、まだダメージが残っていますか」


 腕を動かそうとすると錆びた人形のような動きになる。


「……今どこに向かっているんだ?」

「帰還しています……と言いたいのですが、残念ながらあの後でも帰る扉は開かなかったので仕方なく進んでいます」


 本来なら帰れるはずの道が開くはずなのだが、どうやらそれが機能しなかったとのこと。


「リンはどうしている?」

「前にいますよ」


 リンはこちらを見向きもせず前方を警戒していた。


「……リン」

「何でござるか」


 返ってきた言葉には不機嫌さが混じっている。


「最後は助かった」

「っっっっっっっっ」


 何やら動揺した感覚がように見えるが全くこっちを見ないから確認はできない。




 しばらくすると俺も動けるようになったのでモノクルを取り出し、自分の状況を確認する。


 ――――――――――

 Name:バアル・セラ・ゼブルス

 Race:ヒューマン

 Lv:27

 状態:魔力枯渇症

 HP:31/578

 MP:43/894


 STR:67[-40]

 VIT:58[-38]

 DEX:78[-41]

 AGI:85[-46]

 INT:112[-56]


《スキル》

【斧槍術:28】【水魔法:2】【風魔法:2】【雷魔法:11】【時空魔法:3】【身体強化:5】【謀略:17】【思考加速:7】【魔道具製作:8】【薬学:2】【医術:7】

《種族スキル》

《ユニークスキル》

【轟雷ノ天龍】

 ――――――――――


(……凄まじいステータスになったな)


 この数値は物語になどにある、英雄の数値だ。今はマイナス補正が掛かっているがそれが無くなれば誰も文句が言えないほどの強さがあった。


「これは……すごいですね……」


 ラインハルトは俺のステータスを見ながら驚嘆する。


「なぜここまでの伸びが……」

(まぁ普通はそう思うよな)


 レベルアップ時のステータスの伸びは二つの要因で決まる。


 一つ目がレベルアップによる恩恵。イメージで言うとそれは容器に液体を注ぐ行為。


 そして二つ目の要因が体の強度、と言っても鍛えて身に着く強度とはまた違う部分のことを指す。こちらのイメージは器だ。


 簡潔に言うとステータスの伸び幅はどれだけ器に水を入れたかで決まっている。まずはレベルアップしたとしよう、その場合はレベルアップの恩恵で一定量の水が渡される。その水は必ず器に移さなければならない。その時に水は使いまわすことができなく、収まらなかった分は器から零れ落ちていき無駄になっている。これではレベルが上がってもそこまでの伸び幅は期待できない。


 そしてほとんどの人物がレベルアップごとにもらえる液体を器に入れきれてなく、無駄にしている。その点、俺はあの超常の存在から教えられた最適な器の鍛え方を実践しており、レベルアップごとに手に入る液体を漏らさずに器に納めているがゆえにステータスはこの伸びしろを保っている。

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