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どういう基準で判断してんだよ

「では問題ないな?」

「「「「「「「はい!!」」」」」」」


 翌朝、馬車が出発する前にイドラ商会で店員全員に説明する。


「さてこれから2週間弱は自分たちで店を回してもらう」


 そう言うと数人が緊張した面持ちになる。


「そのために彼女を臨時の店長にした、異論は?」


 もちろん全員異論は示さない。なにせ彼女を選んだのか店員の総意と言ってもいい。


「では指示した通り、値段を直し購入したエルフがやってきたら返金するのだ。あとはいつも通りに作業をすればよい、いいな?」

「「「「「「「はい」」」」」」」


 俺からの指示は以上だ。


 だけどこれだと少し支障が出る場合があるから少し保険をかけておこう。


「わかっていると思うが、彼女が店主をやっているときになにか不祥事が起きたら、君たち全員に罰をあたえるからな」

「「「「「「「!?」」」」」」」


 脅しをいれることを忘れない。


「豚の結末を知りたいなら、別にいいさ、今頃殺してくれとでも叫んでいるだろうからな」


 生唾を飲む音が聞こえてくる。それほどまでに従業員は恐れている。


 これは脅しではなく実際に行われていることだ。なにせエウリッヒからしたらしゃべれなくさせるのが一番手っ取り早い。なにせ豚も切られることを知っていてそれを交渉に出さないはずはない。処刑される前に民衆にエウリッヒの疑惑の種をまくのは簡単だ。それゆえにエウリッヒからしたら物理的にしゃべれなくさせるほかない。ついでに、エウリッヒに罪を被せようとしているという罪を着せ拷問を行っているだろう。そうすれば体面も守れることになるのだから。


「(ここまで脅せばいいだろう)さてじゃあ俺は行く、いいか決してイドラ商会にふさわしくない行動はするなよ」

「「「「「「「わかりました、バアル会長!!」」」」」」」


 敬礼しそうな勢いで見送ってくれる。










「で、問題は済んだのか?」


 馬車に乗り込むと父上が問いかけてくる。


「ええ、父上。問題が起こる確率は少ないと思います。ただこれで本当にどうしようもないことを起こしたのなら本気であの者たちの首を飛ばしますよ」

「…………うぅむ」


 父上は優しい性格をしているがゆえにこのような決断をしにくい。もちろんできないわけではないのだが、めったにやらない。


「父上」

「わかっている、これが国にとって必要な対応だということも」


 これはアルム(新王)の要請でもある、下手に軽い処罰はできない。


(もう少しじっくりと考えればよかったな)


 今回の一件を少し反省する。もっと言うとブータスと一度面談しておくべきだった。


「まぁ~~~」


 そんなことを考えていると母上が外を見て喜色の声を上げる。


「アレがノストニアの建物ですね~」


 馬車から外を見ると茨の蔦を何百倍にも大きくしたものが壁のような役割をしている。


「あら、あの子お人形みたいでかわいいですね」


 母上は入り口を見てそう漏らす。


(まぁエルフは綺麗な人物ばかりだからな)


 母上がそう思うのも無理はないだろう。


「見て、あの女の子、ピンク色(・・・・)の髪をしているわ」

「…………え?」


 俺も窓の外を見てみると馬車の先にピンク色の髪をし手甲を嵌めている見慣れた人物が仁王立ちしていた。












「ようやく来たわね!」


 村に入り馬車から下りるとクラリスが歓迎してくれる。


「今回はお世話になります、クラリス様」

「……………誰?」


 礼儀正しくあいさつしただけなのにクラリスは信じられないものを見た顔になる。


「お忘れですか?バアル・セラ・ゼブルスです」

「あ、わかった影武者ね!それで本物はどこにいるの?」


 何もわかっていない。


「クラリス殿」

「あ、リン、バアルはどうしたの?何かトラブルでもあった?」

「いえ、その…………」


 リンもなんて言ったらいいか迷っている。


「だから俺だって言っているだろう」


 いい加減めんどくさいので普通に話す。


「!?……そうよ、バアルはそうでないと!」

「俺にどんなイメージを持っているか問い詰めたいのだが?」


 俺の両親と待機しているエルフは微笑を浮かべている。本来であれば余所行きの口調で話すのが礼儀という物なのだが、あちらがそれでは納得しそうになかった。


「はぁ、じゃあこっちの口調で話すぞ」

「そうして、調子が狂いそうになる」


 俺たちの間で堅い口調は無しとなった。


「バアル」


 父上から声を掛けられる。紹介してくれという意図した言葉だ。


「クラリス、今回招待されたゼブルス公爵家当主とその妻、つまり俺の両親だ」


 するとクラリスは佇まいを直す。


「初めまして、リアナ・クラリス・ノストニアと言います。今回の案内人を務めることになりました」


 優美な礼をこなすクラリス。人族とは違う形だが、それでも形になっており不快には思えない。


「こちらこそよろしく、私はバアルの父親、リチャード・セラ・ゼブルスという。息子と仲良くしてくれて礼を言う。そしてこっちが」

「妻のエリーゼ・セラ・ゼブルスです、よろしくねクラリスちゃん」


 両親が人の好さそうな表情で挨拶をする。


「……………」

「綺麗!!」


 アルベールはクラリスに照れているのか俺の背後に隠れている。シルヴァはその反対にぐいぐい前へ出ていく。


「バアルに兄弟がいたのね、それも純情な」

「最後の一言いるか?」


 俺とクラリスが軽いやり取りを行っているとシルヴァが何かに気付いた顔をしてアルベールに耳打ちする。


 クラリスはそんな俺たちを見渡し、ようやく本題に入る。


「では、御夫妻、まずは町を案内します」


 まずはこの交易町の案内をされることになった。











「あなた……本当にあの人たちの子供?」

「どういう意味だ」


 日が沈むと用意されている建物で休んでいるのだが、クラリスが押しかけてきて不思議そうな顔で言ってきた。


「あんな人の好さそうな人から貴方みたいなのが生まれたとは思えなくて…………」


 確かに両親は平和ボケした人物でとてつもなく人に甘い。


「両親があんなんだから、俺がこうなったんじゃないか?」

「………そうも考えられるわね」


 なにやら納得しなさそうだけどこれはどうしようもない。


「それにしてもろくに護衛も付けていないのね」

「ノストニアを信用しているからな」


 現在はリン、セレナ、カルス、ノエル、カリンに加えて五人の騎士がいる。


 父上に二人、母上に一人、アルベールとシルヴァに一人ずつ、俺にはリンが、その他四人が小間使いという形になっている。


 普通なら到底足りるわけがないのだが、今回の目的は両国の交友を深めるためだけのやり取り、つまりは威圧を与えてはいけないということで必要最低限で済ませている。


「なら信用に答えられるように頑張るわ」


 それから会話しているうちに、魔道具の件になる。


「まずは謝罪を」


 当然ながらイドラ商会の件だ。


「謝罪を受け入れるわ」


 頭を下げて謝るとあっさりと許してくれる。それこそ、いいのか、と聞き返しそうなぐらい簡単にだ。


「それと魔道具を購入したエルフを探してくれないか?本来の値段との差額を返金したい」

「わかったわ」


 難航すると思っていた魔道具の件はあっさり片が付いた。








 魔道具の件が終わればこの先についての話になる。


「それで?俺は祭りとしか聞いてないんだが?」

「“生誕祭”の事?」

「生誕祭かは、わからない。アルムが即位する祭りのことだが」

「それなら生誕祭で合っているわ」

「それはどんな祭りなんだ?」


 アルムは聞いても教えてくれなかった。


 理由を聞いても見たほうが直接見たほうが楽しめるということらしい。


「う~~ん、見た方が早いわ」

「お前もか」


 (アルム)と同じことを言う。


「一応聞くが、危険はないよな?」


 ここで危険がある場合は母上と弟妹を送り戻すことになる。場合によってはここから母上とアルベールだけは絶対に帰還させる必要がある。


「へ?」


 キョトンとした表情で固まり、少しすると笑い始めた。


「アハハハ、無いわよ、なにせノストニアの一大行事よ、下手なことを考える人はまずいないわ」


 クラリスは絶対無いと念を押してくる。


 コンコンコン


 笑い声が響く中、扉がノックされる。


「来たわね」

「お久しぶりです、クラリス様、バアル様、リン様」

「やめてくださいウライト殿、師匠であるあなたから様付けなど」


 扉から現れたのはリンのユニークスキルについて指導してくれて、現交易町の長であるウライトだった。


「そういえば町長になったのだな」

「はい、アルム様に頼み込んで志願しました」

「物好き……でもないか」


 この町に配属されるエルフは全員がある程度戦えて、人族(ヒューマン)との交流に積極的な者たちだと聞いた。そこにウライトが当てはまってもおかしくない。


「ウライト、魔道具について少し話がある」

「というと?」


 先ほどクラリスに話したように魔道具の値段についてを話す。


「では、私から皆に話を通しておきましょう」

「頼む」


 クラリスにも頼んではいたが、彼女は俺たちを案内する役割がある。なので今回の件で時間が取りにくい。その点この町の長となったウライトならある程度動きやすい。


「それにしても子供が多かったわね」


 クラリスはセレナやカルス達を思い出してそう言っている。


「あれでもうちの使用人だ」

「でも本当に護衛が居なくていいの?」

「大丈夫だろう、こっちとしては友好関係を示したい」


 護衛が少ないことで危険さはあるが、その反面で信用していると表現することができる。


「それで明日にはノストニアに向けて出発するのか?」

「ええ、あと7日で祭りが始まるから、少し余裕をもってきてもらうわ」

「了解だ」








 翌朝。


 起床し朝食を済ますと早速ノストニアに向けて移動する。


 その際には持ってきた馬と馬車は使わないで、代わりにエルフが用意した馬車に乗る。


「へぇ~面白いな」


 父上がそうつぶやく。


人族(ヒューマン)では珍しいでしょうしね」


 今乗っているのは馬のない馬車、つまりは魔力で動くように改造された馬車だった。


「イドラ商会でも作れないかな?」

「無理です、というか国内で使うことができません」


 前世のように道路が補整されているならともかく、この国の道ではまず使えない。


 それに車と同等のエネルギーを魔力で頼るなら、人族には無理である。以前に試したことがあったが、俺でも5分ほど走らせるだけで精いっぱいだった。


 御者席では3人のエルフが一人が走らせ、一人が魔力回復に努め、一人が見張りをしている。魔力が豊富なエルフだからこそ走らせることができている。


人族(ヒューマン)なら一体何人必要なることやら)

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