ファミリー加入
「それはいくらなんでも極論すぎじゃ」
まだ、自分を許さないリンさんは僕の言葉に反発しようとする。だが、僕はその言葉を途中で遮り、言う。
「ええ。そうだと思います。でも、騙された僕が許してるんだから、それでいいじゃないですか」
「でも、私は」
「自分が許せませんか?」
僕のその言葉にリンさんは息を呑み、そして小さく頷いた。
「......わかりました。じゃあこうしましょう。リンさん、僕を騙したお詫びをしてください」
「お詫び?」
「はい、お詫びです」
「何をすればいいの?」
「簡単なことです。どうです? それでいいですか?」
「私にできることなら」
「じゃあ契約成立ですね。それではリンさん。
僕を楽しませてください」
「......え?」
「僕はこのゲームが初めてするゲームなんです」
「それは知ってるけど」
「正直、今のところゲームの面白さを分かっていないんですよね。このままでは、すぐにこのゲームをやめてしまうかもしれません」
「......」
「でも、せっかく始めたので、すぐにやめるのもやはり、日本人としてもったいないじゃ無いですか?
だから、僕にこのゲームの面白さを教えてください。それが僕が今回の件を水に流す条件です」
「......そんな、ことでいいの?」
「僕にとっては最重要問題です」
「......分かった」
リンさんは意を決したように立ち上がり、高らかに宣言した。
「テング・ファミリー、リーダー、リン。テング・ファミリー、新メンバー、めガねにこのゲームの面白さをゲーム廃人にしてしまうほど教えてあげることを天狗の名のもとに誓うわ!!」
僕もリンさんと同じように立ち上がる。
「新人プレイヤー、めガね。初めてこの世界に足を踏み入れた記念すべき今日の日に、このテング・ファミリーに属することを誓う」
そして僕たちは再び手を握り合う。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「いやー、一時はどうなることかと思いましたがー、無事万事解決ということで良かったですよー」
「ご迷惑おかけしましたね」
僕は『「テング・ファミリー」に所属しました』という画面を閉じ、あいも変わらずお気楽な調子のドキと少し不貞腐れてるリンさんに目を向ける。
「改めて、これからよろしく頼みます、二人とも」
「はいー、よろしくですー」
「よろしくめガね。それと、その敬語、もうやめなさい。ゲームにおいて歳の差なんか関係ないんだから。私のことはリンって呼びなさい。私もめガねって呼ぶから」
む? 確かにそう言われればそうか。思わず敬語を使ってしまっていた。
「分かり、分かった、リン。以後気を付ける」
「うん。それで、早速なんだけど、今ドキから受注中のクエストについても説明していい?」
「ああ。さっきファミリー所属した時に画面に出てきたやつのことだよな」
そして、僕をこのファミリーに入れるきっかけとなったクエストのはずだ。
「簡単に説明するとファミリーメンバー増員クエストね」
なるほど。
「それで、リンはファミリーメンバーを集めてたってことか。俺がファミリーに入ってもこのクエストが終わってないのを見るに、まだメンバーを増やさなければならない感じか」
「ええ。必要人数は私とめガねを合わせて三人よ」
「つまり、あと一人必要というわけか」
「そういうこと。そして入れるメンバーにも条件があるの」
条件?
「何なんだ?」
「役職が探索系であることよ」
なるほど。それなら僕もリンも当てはまるな。
「それじゃあひとまずの目標はそのもう一人のメンバー探しだな」
「そうね。と言ってもめガねに会ったのは本当偶然だしね。今度もそう上手く見つかるとは思えないわ」
うむ。確かにこの最小規模ファミリーに入ってくれる人でかつ探索系となるとかなり見つけるのが難しいな。いや一つあるな。
「大々的に呼びかけるのはどうだ?」