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『銀狼の飼い猫』掌編  作者: 厚狭川五和
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[ファングact4]成長の日々

「雨だ……」

 憂鬱な時間だ。

 この時期は本当に雨が多くて困るし、何の前触れもなく急に勢いよく降り出すこともある。

 まさに今日がそれだ。

 びちゃびちゃになったのは自分の力で乾かせるが汚れてしまったものを落とすには少々手間がかかる。

 何より、愛しの猫は濡れそぼって貧相な姿になっている。

 このまま放置していても乾きはしても風邪をひくだろう。

「そこの温泉に行ってきたらいいんじゃないかい?」

「俺らみたいなのが行ったら客が逃げるだろ」

「まず君たちみたいになってまで外に出たいなんて思わないだろ? それに今は観光客も居ないし泊めさせてもらえるだろうから湯冷めの心配もないよ」

 というわけで、俺とエルはがら空きの温泉に来ている。

「広いね」

「まあ、人がいなけりゃそう感じるよな」

 俺は置いてあった椅子にエルを座らせてお湯をかける。

 耳に入るとぎゃあぎゃあ五月蝿いのでちゃんと押さえてやるがそれはそれで騒がしくなる。

「ん、にゃっ……!」

「ヘンな声出すな!」

「だ、だって、ご主人、耳触るから……」

「お湯入ったら怒るだろうが!」

 まあ、耳が性感帯みたいなものだし仕方ないだろう。

 とはいえヘンな声を出されるとこっちもその気になってしまうのであまりよろしくないのだ。

「今から触るからな。またヘンな声を出すなよ?」

「ご主人がヘンな触り方しなきゃ出さないもん」

 いや、何もしてなかったんですが?

 俺は文句を言い返すのも面倒になりテキトーに泡立ててエルの身体を洗い始める。

 相変わらずというか、小さい。

 俺のペットであり嫁さんだが幼児体型もいいところで勘違いされないか不安だ。

 しかし、ちゃんとふにゅっ、とした感覚はある。

「大きくなってるんだな、一応」

「エル、成長期(ドヤ顔)」

「つってもちょっとだろ」

「はにゃっ!」

 俺は自慢げに胸を張っているエルに腹が立って指先で先端を軽くつついた。

 まあ、声は色っぽくないがそれなりに興奮する反応はしてくれたので満足である。

 冗談はさておき出会った頃に比べたら膨らんできてる。

 身長もそれなりには伸びたのかもしれないし、それに対応して身体も大きくなってきているということだ。

「身体より先に感度が一人前になってどうすんだか」

「えっち! ご主人のえっち!」

「うるさいえっちって連呼すんな! 卑猥な声出しておいて何がえっちだ!」

「にゃうっ! また触った! ヘンタイ!」

「ああもううるせえ猫だな! そんなに触ってほしいなら犯すぞこら!」

 にゃあにゃあ五月蝿いので今度は耳を甘噛みする。

 まあ、当然ながら成長期というわけでエルはどこもかしこも敏感になっているわけで、耳や尻尾は最大の弱点と言ってもいいほど感じるわけで、それに歯を立てられたともあれば腰が抜けるほどびっくりするわけだ。

 エルが脱力している隙に俺はどんどん身体を洗い進めていく。

 今更ながら俺に洗わせているくせに胸の先端とか股とか触るとにゃあにゃあ五月蝿いので時折、心を鬼にして脱力させてからでないとまともに洗えないのだ。

 まあ、可哀想だとは思うけどな。

 それが嫌なら俺に頼まなければいい。

「ほい、終わったぞ」

「ご主人も大きくなってるね」

「どこ見て言った!」

 反撃のつもりだろうか。

 エルは明らかに俺の股間付近を見ながら白々しく言い放った。

 そりゃ大きくもなるわ! 全裸の女が胸とか触られてにゃんにゃん鳴いてる姿なんか見たら興奮するしお前の身体を洗うってことはそういうことなんだからな!

「何で睨むんだよ」

「そっちも大きくなってるけど、身体の方も大きいよね」

 まあ、たしかにと俺は自分の身体を見回す。

 腕やら足やらも太くなったし身体が全体的に大きくなったのは薄々感じている。

 まあ、産まれてからそんなに経ってないのは俺も同じだからな。

「エル、ご主人より成長遅い」

「……いいんだよ小さくて」

 俺より大きい女なんて怖くて近づけない。

「それに今の方がお前も嬉しいだろ」

「サイテイ! やっぱご主人キライ!」

 本当のことを言って嫌われるのは心外だ。

 俺の手が大きいから指先ひとつでお前はにゃんにゃん言ってるわけだし、軽々と抱えてもらえるわけだ。

 この前なんて肩車されて喜んでたくらいだしな。

 ちなみにこの後俺が身体を洗っている間ずっと睨まれていたが湯船に浸かるときはきちんと俺の足の間に収まるエルだった。

 色々と危険な状態だったのは言うまでもない。

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