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『銀狼の飼い猫』掌編  作者: 厚狭川五和
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[エルact4]想いの翼

 この翼は私の想いが反映されるものらしい。

 つまり、ご主人に対しての愛が報われれば現れるし、少し気持ちが落ち着けば消えてくれる。

 つまり、感情があからさまに出てしまっている状態だ。

「ううっ、どうにかしないと……」

 普段は別にいい。

 好きだと言っていれば素直なのだから。

 しかし、困るのは今日のような時だ。

 いつものように湯浴みをしているとご主人に大切に洗われていることが嬉しくてむずむずはしていたが、それに気持ちよさが追加されて翼が出てしまった。

 ご主人はそれを何か勘違いしてすごく舐め回してきた。

 今でもその時の感触が全身に残っているし、そのせいで翼は全然消えそうにもない。

 実際、期待してはいた。

 ご主人は私を愛しているのだからいつ、どんなタイミングで抱かれても言いように心の準備はしてある。

 でも、舐め回されて終わるのは嬉しくても複雑だ。

 だって自分だけ満足してご主人は?

 ただ、私を綺麗にして、マーキングして、疲れただけ?

「こんな翼なら……」

「おい、風邪ひくぞ」

「ご、ご主人!」

 まさか屋根の上まで追ってくるなんて思わなかった。

 まあ、裸のまま外に飛び出した時点で心配するだろうし、マーキングしていたのだから匂いで簡単に追跡できるのだろう。

「お前、自分の翼を切り落とそうとしてなかったか?」

「……………………」

 さすがに自傷行為は許されない。

 だから私は黙るしかなかった。

「俺はさ、安心するぞ?」

「なんで?」

「エルの想いが筒抜けだから」

「意地悪!」

「だって本当のことだ。エルが俺を好きで想ってくれているから触られたり俺が好きだとか言ったりすると翼が出ちゃうんだよな?」

 その通りだよ、ご主人。

 嬉しかったり気持ちよかったりすると翼は現れる。

「俺さ、お前が大好きなあまり、お前を好きすぎて暴走してお前が呼吸できなくなるくらい舐めていじめる時あるけど、それとか冗談でも相性がいいとは言えない身体の大きさとかあるから嫌がってるんじゃないかな、って、時折不安になるんだよ」

 まあ、たしかに冗談にもご主人の身体の大きさが私にピッタリとは思わない。

 他人が聞いたら絶対に止めるくらい差はある。

「ご主人は、エルなんかで満足してくれるの?」

「何言ってんだよ。お前がにゃんにゃん言ってるのを聞けただけでちゃんと意味があったと思えるし、お前ほど俺を満足させてるペットはいねえよ。つうか唯一無二の俺の愛猫(ペット)が何を言ってるんだ?」

 ああ、そうか。

 そうだよね。

「ご主人の変態性は、理解できない」

「おい、失礼だぞ」

「ほんとのことだもん」

 ご主人がやりたいから、やるんだよね。

 それなら、この「想いの翼」も嫌いじゃない。

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