「亀井、魔法少女になる気はないか?」
華の高校生1年目。
お世話になる先輩は、魔法少女だった。
晴天とは言い切れない、微妙に雲の出ている日。縁起がどうのこうのなどはきにする性格ではないが、どうせならパーッと晴れてほしかったなぁ、なんて言いながら、俺たちは入学式を迎えた。
本日俺、亀井なぎさは無事に高校生となった。いわゆるDKだ。といっても入学した朝日高校普通科は、成績は良く言って中の上、校訓は自主自立と割とその辺に転がっている公立校だけど。
一緒に入学した中村聡太は、俺の幼なじみ。小学校からの付き合いで、なにかと俺の趣味に付き合ってくれるいいやつだ。しかも、正直あまり成績の良くない俺に付き合って朝日高校に進学してくださった、神のようなお方だ。結局クラスは別れてしまったが、隣の教室にいるというだけでも心強い。おまえの人生棒に振らせてごめんな。
さて、無事に式も終わり、オリエンテーションという名の無駄に長い説明を聞き流し、陽キャに連絡先を渡してやっと入学時の一通りが終わる。ここでさっさと帰りたいところだが、俺は中村聡太という名の神に某コンビニの唐揚げを奢るという約束をしてしまっている。そして神のクラスは運悪く話の長い先生が担任に当たったらしく、まだ話は終わりそうにない。まさか無視して帰るわけにも行かないし、昇降口で時間を潰すしかない、なんて考えて教室を出ようとした瞬間。
「おい、亀井。ちょっといいか?」
担任に声をかけられた。
確か福田先生だった気がする。若いし適当そう。いくらギザギザハートなお年頃だといっても、さすがに1日目に呼び出しをくらうような粗相はしてないはずなので、そんな重要なことじゃないだと思われる。だからとりあえずめちゃくちゃ嫌な顔で答えてやる。
「なんですか」
「明らかに嫌な顔をすれば要件を取り下げるとでも思ったか?まぁそれは置いといて、少し聞きたいことがあるんだが。」
「聡太くんに唐揚げ奢んなきゃいけないしあともう疲れたので嫌です。」
「素直でよろしい。別にお前の返答次第では15秒で終わる用事だから、時間は大丈夫だと思うが」
「そんぐらい軽いことなんですか?まぁそれなら…」
「亀井が優しい子で先生嬉しいぞ。それじゃあ単刀直入に聞くが…
亀井、魔法少女になる気はないか?」
「…は?」
隣の教室でいっせいに椅子が動く音がする。きっとアホみたいに長い説明が終わったのだろう。
「…魔法少女?」
「魔法少女。」
どうしよう、口ってほんとに塞がらなくなるんだ。あ、でも待て、俺には無理じゃないのか?
「俺、男ですけど?」
「そこは最新技術でなんとかなるから」
開いた口が床につきそうだ。最新技術って。魔法に技術を持ち込んでいいのか。せめて「魔法の力で」とかいってほしかった。
「てか魔法少女とかなれるんすか?」
「おう。信頼と実績の先輩方もいるぞ。4人。ま、全員女子だがな。」
まじかよ。全国の女子小学生の夢が叶った瞬間である。みんな、プリキュアはいるよ。とかなんとかいってると、聡太からメッセージが送られてきた。
『もう帰った?』
帰りたい。
「先生、聡太に催促されたんで帰ります」
「魔法少女は?」
「とりあえず保留で。」
「そうか。じゃあ1ヶ月の間に決めてくれないか?」
「あー…はい。多分割とすぐ断りますけどね。」
「あ、そうだ亀井。連絡先交換しよう。」
「…先生と?」
「こっちから催促する手がないと困るからな。」
「さいですか。」
先生と連絡先を交換して、アイコンとホム画のかわいさにちょっとびっくりしながら聡太のもとに向かう。時間を潰すつもりだったのが、待たせてしまうほどかかってしまった。これはジュースもセットで買わされるかもしれない。先生はやっぱり見た通り適当な人だ。15秒といったのに、15分もかかってるじゃないか。
帰り道ふと思いついて、ジュース片手に唐揚げを満足げに食している聡太に聞いてみる。
「…なぁ聡太、もし魔法少女になれるって言われたらさ、なる?」
「…ふぁふぉうふぉうふぉ?」
不思議そうな顔で唐揚げをほおばったまま聞き返してくる。お行儀は悪いが、なんかかわいい。
「そー、魔法少女。なる?」
「うーん、面白そうだからとりあえず話聞く」
なるほど、話を聞くのは面白そうだ。
「ありがとう聡太、なんかしっくりきた」
「しっくり?」
「しっくり。」
「ふーん。あ、そうだなぎさ、帰りゲーセン寄ってこうーぜ。」
「おー。なんかいい台あるかな」
帰りはゲーセンに寄って帰った。




