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10【ワガママ】

「ご馳走様でした」


「ご馳走様。

美味しかったわ。

零くんは料理上手なのね」


「お粗末さまでした。

ありがとうございます。

口にあってよかったです。

それでは、晩御飯も終わったことですし本題に入りますか」


「はい」


「おう」


今までの和やかな雰囲気とは逆に俺達三人は真剣な表情になり背筋を伸ばす。


「結論から言うと二人の結婚には賛成です」


「零くん、ありがとう」


「零!

ありがとう!」


父さんと琴音さんはホッとした表情で俺にお礼を言ってくる。


「前々から父さんには誰かいい相手を見つけて欲しいと思っていたんです。

お母さんが死んでから俺のために一人で頑張ってくれていたから父さんを支えてくれる人がてきるのはとても嬉しいです」


「零」


「零くん」


二人は泣きそうな笑顔で俺の名前を呟く。


「でも、それは家の話です。

琴音さん。

何度も父さんに言われたかもしれませんがあなたは父さんと結婚して俺達の家族になって本当にいいんですか?

俺と父さんは今も、そしてこれからも母さんのことを忘れることはありませんよ」


俺は琴音さんにとって酷いことを言っている自覚はある。

今の言葉は「あなたは俺達の一番にはなれないんだぞ?」と言っているのと同義なのだから。

だが、これは避けては通れないものだから俺はこの言葉で俺と琴音さんの間に溝が出来るかもしれないが覚悟を決めて言葉を発した。


「ええ、ちゃんとわかってるわ。

それでも私はあなたのお父さんを愛し、支えたいとと思ったの。

それと、これはここに来て零くんと話してあらためて思ったのだけど。

零くん。あなたの支えにもなりたいと思ってる」


「おれの?」


「そう、零くんの。

あなたからしたら、余計なお世話かもしれないし、母親ズラするなと思うかもしれない」


「いえ、そんなことないですよ」


「やっぱり、零くんはしっかりし過ぎているんだよ」


「しっかりし過ぎている?

しっかりすることはいいことじゃないですか?」


「うん、しっかりすることはいいことだよ。

でも、零くんは普通の中学生では考えられないほど気持ちを押し殺して周りに合わせているんだよ。

今回の結婚のことだって、多分、零くんはあまりよく思ってないんだと思う」


「いえ、そんなことないですよ」


「うんうん。

零くんは気づいてないかもしれないけど、私が来た時と零くんが結婚を認めるって言った時、ほんの一瞬だけ悲しい表情をしてたんだよ」


「え?

本当ですか?

もしそうならごめんなさい」


本当にそうなのだろうか?

自分では全然気づかなかったな。


「いえ、いいのよ。

でも、これからは何か思ったことがあったら遠慮せずに言って欲しいの。私はあなたの家族になるのだからね」


「はい、わかりました」


そう言って俺は少し考えてから口をもう一度開く。


「あの、琴音さん」


「なに?」


「琴音さんには申し訳ないと思っているんですが。

あなたを母親と呼ぶのに時間がかかると思います。

こんな言い方をすると上からになってしまいますが、琴音さんのことをこれから家族としては認識します。しかし、やっぱりまだ俺の中で母親は死んだお母さんしかいないんです」


「うん、大丈夫よ。

でも、私が零くんの母親として接するのはいいの?」


「はい、それはとても嬉しいです。

すみません、こんなわがまま言ってしまって」


「ふふっ。

このぐらい気にしなくていいのよ。

子供は大人を困らせるのが仕事見ないなものなんだから。

それに嬉しいわ、ワガママってある程度信用っていうか心を許している相手にしか出来ないものだからね」


「ありがとうございます」


「よし!

話もまとまったところで乾杯でもするか!」


これまで一切口を挟まずにいた父さんはそう言って冷蔵庫に向かう。


「父さん、お酒はダメだよ。

明日も仕事あるんでしょ?

それに、父さんが酔ったら誰が琴音さんを家まで送るのさ」


「あ、それもそうだな。

はははっ、悪い悪い!」


父さんは足を止めゲラゲラと笑い出す。


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