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妹の舞踏会

作者: あずえむ

数年前に某シナリオコンテストに応募して、無事落選したものを加筆修正しました。

ご一読いただければ幸いです。



 今夜はお城で舞踏会。

 でも、私はイジワルなお姉さまたちによって、お留守番を命じられているの。

 だって、私みたいなボロボロな女が着ていくドレスなんて、ないんですもの。


「おやおや可愛そうに。それならば私が魔法でお前にドレスと馬車を用意してあげましょう」

 突然、私の前に現れた魔女のおばあさんは、私にかぼちゃとネズミを用意しなさいとおっしゃられたわ。


「う、うーん……かぼちゃはともかくとして、そ、そのお化けネズミはなんだい?」

 家の地下蔵に巣食っていた大きなネズミを前に、魔女のおばあさんはたじろいでいらっしゃる。

 どうせなら、大きい方がいいと思って、頑張って捕まえてきたんだけどな。

「……ま、まあお前がそれだけ舞踏会に憧れているという証なのだろうね。ではいくぞい……ほほいっ!」

 おばあさんの魔法でお化けネズミとかぼちゃがそれはそれは立派な馬車に、そして私も綺麗なドレス姿にしてくださったわ。

「さあ行っといで。ただしお気をつけ。魔法は夜の12時で切れてしまうからね。キィッヒッヒッヒ」


 私は喜んで、さっそく素敵な馬車とドレスでお城へ向かったのだけど、あれれ?なんだか様子が変だわ。

 城の中は明かりが消えていて、舞踏会だというのに人の姿がまるでないの。

 あ、でもかすかに奥の方から楽しげな笑い声が聞こえてくるわ。行ってみましょう。

 私が慣れないドレスにつまずきながらも、そちらへ向かってみるとまあ、どうしたことでしょう。

 なんと中には大勢の魔物たちが歌って踊っていましたの。

「ぐっはっは。また1人、舞踏会に釣られてエサが迷い込んできたようだぞ。ジュルリ」

 ああ、なんてこと。

 この舞踏会は魔物が人間を集めるための罠だったのね。

 皆さん食べられてしまったみたい。

 すみっこにたくさんのドレスの切れ端や食べ残しの骨付き肉が……

 あら、あのドレスやアクセサリーは。

 そうなのね、イジワルなお姉さまたち、可愛そうに。

「さあ、お前も美味しく食べてやろう」

 私は大勢の魔物たちから慌てて逃げ出しました。

 この広いお城には、もう魔物たちしかいません。

 なんとか、お城の外へ逃げなければ。

 けれど綺麗なドレスのおかげで、私は上手に走れません。

 結局私はお城から出ることが出来ず、大勢の魔物たちに囲まれてしまいました。

「さあ、観念するのだな、お前も美味しく食べてやろう」


 その時でした。

 私の魔法が解けてしまう、夜の12時を告げる時計の針の音が確かに聞こえてきましたの。

 それを合図にしたのか、魔物たちが一斉に私に襲い掛かってきます。

 私は両の拳を硬く握り締め、魔物に向かって

「爆裂拳!!!!」

「グワァーーーーッ」

 続けざまに

「竜巻疾風脚ッ!!」

「覇王閃光剣!!」

「魔神五月雨斬りーーーッ!!!!!」

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!」


 魔法が解けてしまった私のドレスは、元の、ボロボロの剣や鎧に戻ってしまっていました。


「な、なんだー、こいつ強いぞ!おばば!おばばよ!!何でこんな奴を連れてきたんだ!」

 すると、私に魔法をかけてくれたあの優しい魔女のおばあさんが現れて言いました。

「だってお前達が舞踏会にあこがれる若い娘をいっぱい食べたいと言うたから、国中からかき集めてやったんじゃないかぇ」

「し、しかしこんな強い娘が来るなんて思ってなかったぞ!ぎゃあっ・・・ぐふ」

 ひときわ偉そうな魔物を一突きにし、私は剣にこびりついた血を振り払いました。

「ひ、ひぃ」

 確かに、私はあらゆる武芸を修めたこの国で一番のファイターですわ。

 でも、舞踏会にだって憧れているんですのよ。

 そういえば、イジワルなお姉さま達もいつも、修行でボロボロの私を一家の恥だと言って蔑んでおられたわ。

 世間体ばかりを気にして、私のように体を鍛えて強くなろうとしないから、魔物に食べられてしまうのですのよ。

「と、とにかく私ゃ逃げるよ。キィッヒッヒッヒ、ひぃーーーーーーーーー!!!」

 お城から、脱出しようと魔物たちが逃げ出しました。

 

 そんなの許さない。

 楽しみだった舞踏会が罠だったんですもの。

 この怒りの矛先、すべてあなたたちに向けさせていただきますわ!




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