パレード前の放課後
過去に別サイトで書いた作品を輸入させて頂きました。
僕が愛している物には、誰一人近付けさせやしない。
皆の物では無い、僕だけの物だ。
僕の持っている物は、僕の物。
お前の持っている物も、……僕の物。
※ ※ ※
長い雨も通り越して、熱い太陽を見せ始めたある日、色々な世界を覗かせる美術室で一人、油絵を描いていた。
深緑、黒、藍色、茶色と軍服で使われる様な迷彩柄で覆い尽くされ、人とはかけ離れ過ぎている生物の居る――“美しい世界”の絵だ。
絵を描く事は“好き”という訳でも無く、“嫌い”という訳でも無い。
ちなみに、美術部の部員という訳でも無く、授業中に課題を期限内に仕上げれなかったから、残ってて描いてるという訳でも無い。
では、何で描いているのかと云うと……
この世界が気に入らないから、僕の望んでいる世界に“描き換えてる”。
しかし、先生には確り“許可を得ている”し、描かせて貰ってる。……あの力は使ったけど。
まぁ暫く、誰にも邪魔されない筈だ。僕が世界の断片を、“僕の色”に塗り終えるまでは。
絵を描いている途中、教室の引き戸が突然開いた。
「こーらっ! もう下校の時間は過ぎてるわ! 戸締りするから、早く帰りなさい!」
学級委員長の高橋さんだ。本来なら先生が見廻りで閉めに来るのだが、恐らく“先生が動けない為”に代わりに戸締りに来たのだろう。
眉間にしわを寄せていてちょっと残念な状態ではあるが、顔立ちは整っていて僕の好みではある。
しかし、性格の方を云えばあまり好きでは無い。
「なーに? そんな絵描いてて…… あまり上手くないね」
「……」
僕は黙ったまま俯いた。
「あはははは! 違ったかな? ピカソみたいに独特のセンスのある絵って言った方が良かったかな! キャハハハハ!!」
生真面目そうで美人な外見に反して、意外と性格は残酷だったんだな……。
やはり、人は外見だけで判断着けるべきじゃない。
このクズめ。
「う……?」
僕は彼女の隙を突いて、……唇を奪った。
「……」
特に何も抵抗は感じない。……慣れた事だから。
そう、先生に許可を得る時もこの“力”で。
「~~~~~~~~っっっ!!!!」
彼女の顔色は赤くなっており、何か言おうとしているが上手く声に出せてない。
しかし、何を言おうとしているのか、分からない事は無い。
そして、彼女の肩から力がどんどん抜けて行ってるのが伝わって来る。
これだけ彼女の身体に密接しているのだから。
「……」
意外と委員長、良い身体つきしてるんだな。
……さて、如何したものか。
僕は先程まで閉じたままだった口をゆっくりと開いた。
「……いいか、お前は今日から“僕の物”だ。僕の云う事に素直に従えば良い」
「はい……」
彼女は先程までの光のある目とは違い、虚ろな目に変わっている。
――マインドコントロールだ。
出来れば使いたくは無かったが、まぁ彼女も“使えなくはないだろう”。
上手く使ってやる。
僕は不敵な笑みを浮かべ、人形になってしまった彼女を胸に寄せて、聞こえないだろう独り言を呟いた。
「……さぁ、パレードの始まりだ」