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鳴宮五月の迷宮の作り方  作者: かじき色
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五月(さつき)の迷宮

新作書きました。読んで下さい。

 ある日突然ダンジョンマスターになってしまっても人間の心を保ったままの少女は魔物になっても人間を襲わない




 東西に伸びた岩山は北を砂漠に残り三方を森に囲まれて立っていた。

 その岩山の南斜面の麓に出来た洞穴は人が通りそうな場所からは気付かれない様に入り口を入ってすぐの所で右に曲がっていた。

 その洞窟はつい先ほど出来たばかりのダンジョン、その中には24時間前にダンジョンマスターになった元は人間だった少女が一人。


「もっと強くなって冒険者ギルドのランクがD級に上がったらダンジョンに挑戦したい」


「ダンジョン挑戦か、冒険者になったからには一回は行ってみたいな」


「私も行きたい」


「そうね、この四人でダンジョンを攻略しましょう」


「決まりだな」


「皆で一緒に行こうね、約束だよ」


「「「はーい」」」


 少し前に私達の冒険者パーティのランクががE級に上がった日に四人で話した事を思い出した。

 皆ごめんね、約束したのに私は一緒に行けなくなっちゃった。


 昨日まではダンジョンマスターの気持ちなんて興味は無かった。

 ダンジョンを攻略する冒険者とダンジョンモンスターは殺し合う敵同士でダンジョンマスターは最後に立ちはだかるラスボス。

 それなのに私はダンジョンマスターになった今でも心は冒険者のままなので冒険者と敵対したくはない。


 私はステータスを確認した。


 NAME:鳴宮五月 種族:ダンジョンマスター Lv:1 HP:1000 MP:1000


 ステータスはE級冒険者だった時の5倍になっている、つまりE級冒険者5人分である、これがこのダンジョンの戦力だ。多分D級冒険者パーティならば攻略可能だろう。

 ダンジョンのある場所を冒険者に知られたらお終いだと思う。もっと強くならないと私は生き残れないだろう。


 ダンジョンが生き延びる為にはダンジョンの拡張や強化が必要でそれにはダンジョンポイントが必要になる。


 ダンジョンポイントはダンジョンに侵入した敵を倒す事で得る事が出来る。その際に倒した敵の武器や防具、素材等をダンジョンが吸収する事でもポイントが得られる。

 そして侵入者がダンジョンに滞在する時間に応じて得られる侵入者ポイントと言う物がある。これは侵入者を倒す場合と比べると丸一日滞在して1%である。

 得られるポイントとしては微々たるものだが、侵入者を倒さなくても得られるポイントが冒険者と敵対したくない私にとっては重要でこれを活用する事にした。


 やる事は二つ、一つ目はダンジョンに侵入者を誘き寄せる、二つ目は侵入者をダンジョン内に引き止める。


 その方法は、一つ目は偶然に頼るしかない、そして二つ目はこれから試してみよう。


 最初の侵入者はスライムだった。


 ダンジョンの入り口に居たスライムに近付いて手持ちの食料からパンを取り出して小さく千切って与えてみた。

 どのくらいの距離で反応するのか確認しながらパンを離して置き少しづつダンジョンの奥へとスライムを誘導する。

 鑑定してみる。


 スライム Lv:1 HP:3 MP:0


 侵入者から得られるダンジョンポイントは存在値によって決まる。

 存在値はHPとMPの数値を足して十倍したもので、このスライムの存在値は30となる。

 侵入者ポイントは一日で存在値の1%なので一日当たり0.3ポイントである。


 このスライムを倒した場合は存在値と同じ30ポイントが得られる。

 ダンジョンモンスターとしてHP1,MP0つまり存在値10のスライムを購入して配置する場合に必要なポイントを調べると15ポイントだった。

 存在値に対して1.5倍、つまりHP3のスライムを倒して得たポイントで購入出来るのはHP2のスライムになる。

 

 スライムの食事エサ用にポイントで手に入る食べ物について調べていたら果物の木を植えたり野菜を栽培出来る様だ。

 胡瓜が一ヶ月の間、毎日5個ランダムで生る木が一番安かったので10ポイントで購入して設置した。


 スライムの侵入者ポイントは一ヶ月で9ポイントだから一匹だけだと赤字なんだけど、まあいいか。


 スライムから離れた位置に生えて来た胡瓜の木に生った胡瓜をもいでスライムに少し与えて残りを小さく切って並べて胡瓜の木まで誘導する。

 スライムは木に生った収穫前の胡瓜は食べない、木からもいで与えると食べる、胡瓜を半分に分けてスライムに与えて残り半分を小さく切って入り口に置いた。


 二匹目のスライムが釣れる前にホーンラビットが現れて胡瓜を食べて出て行った。

 兎と言えば人参と言う事で、人参が一ヶ月の間、毎日5本ランダムな場所に生える人参スポーンを20ポイントで購入し設置した。

 最初の一本を収穫してダンジョン入り口近くに置いたら直ぐに現れたホーンラビットが人参を銜えて出て行った。

 鑑定してみる。


 ホーンラビット Lv:1 HP:10 MP:0


 暫くしてからホーンラビットがダンジョンに侵入して内部をうろついていた。人参を見付けると銜えて出て行った。

 鑑定してみるとHP8で先程とは別の個体だった。

 ダンジョンに複数のホーンラビットが出入りする様になったので思い切ってダンジョンを拡張する事にした。

 ホーンラビットが長期間滞在出来る様にダンジョンの奥に半径20メートルの草原エリアを200ポイントで設置した。

 草原の中央に林檎の木と湧き水の出る水場をポイントで設置した。

 ホーンラビットが四匹ダンジョンに侵入してきた。二匹は子供なので家族だろう。


 ホーンラビット Lv:1 HP:10 MP:0

 ホーンラビット Lv:1 HP:8 MP:0

 ホーンラビット Lv:1 HP:1 MP:0

 ホーンラビット Lv:1 HP:1 MP:0


 四匹は草原エリアに向かい住み着いた。四匹の存在値の合計が200なので侵入者ポイントが一日2ポイント入手出来る。

 草原エリア内のランダムな場所に生える人参スポーンを設置した。


 ホーンラビットが人参以外の野菜も食べるのか調べる為に幾つかポイントで購入して与えてみた。

 茄子、トマト、ピーマン、玉ねぎ、キャベツ、ジャガイモ、大根をそれぞれ1ポイント分購入した。キャベツが2個でその他は5個。

 どれも問題無く食べたので、茄子とトマトのスポーンをダンジョン内ランダムで設置した。住み着くホーンラビットが増えたら他の野菜も追加する予定だ。

 二匹目のスライムが住み着いた。


 翌日ホーンラビットが五匹ダンジョンに侵入してきた、後を追う様に続けてゴブリンが三匹侵入してきた。

 まだゴブリンを飼うスペースは無いし、ゴブリンと一緒に暮らすのは無理なので、撃退する事にした。


 私は弓を構えてゴブリンを待ち伏せした、先頭のゴブリンが見えた瞬間矢を放ち、次の矢を構える、右目を貫かれたゴブリンが倒れた。

 残りの二匹は角に隠れて警戒して出てこないので、反対側に移動して後ろから矢を放つ、首筋に吸い込まれる様に深く突き刺さった。

 そして挟み撃ちされてパニックになっている最後のゴブリンに放った矢は左肩に刺さった。

 私は次の矢を番えてタイミングを計り、ゴブリンが後ろからやって来たホーンラビットに気を取られた瞬間矢を放った。

 ゴブリンは剣を落とし胸に刺さった矢を握りながらゴブリンが倒れた。

 ゴブリンの足元に人参が見えたので、まあ予想通りですね、接近戦に備えて手にした短剣は必要無かった。

 ゴブリン三匹を倒した事でダンジョンポイント800を得た。


 先程侵入した五匹のホーンラビットはダンジョンの奥に向かったので昨日購入した野菜をダンジョンの通路にばら撒いて置いた。


 大量にダンジョンポイントがゲット出来たのでダンジョンの拡張を行った。

 半径50メートルの草原エリアを追加して野菜スポーンを5種類設置した、人参、ピーマン、玉ねぎ、ジャガイモ、大根。

 林檎の木と湧き水も設置した。林檎の木は何となく拘ってみた。


 そしてダンジョンポイントが増えたので個人的な嗜好を満たす事が出来る。

 実はダンジョンポイントでこの世界に無い物も購入出来る、転生前の私が知っている日本の果物は甘くて美味しかった。

 日本の林檎は一個が3ポイントで、草原エリアに植わっているこの世界では普通の林檎の十倍になる。高価なのでこれまで我慢していた。

 ダンジョンマスターになってからエネルギー元としての食事をとる必要は無いけれど嗜好品は欲しいからね。

 林檎を食べると懐かしさが込み上げて来た、この世界に転生する前に食べた味、味覚は変わっているはずなのに同じ味だと訴えかけている。


 ダンジョンに出入りするホーンラビットの数が十匹を超えて新しい草原エリアに巣穴を作って住み着く個体も現れた。

 新たに侵入してきたスライムはそのままダンジョン内部に滞在しているスライムの数は五匹に増えた。

 ホーンラビットの侵入者ポイントが一日で10ポイントを超える様になって来た。


 ダンジョンの入り口から外の景色を千里眼スキルで眺めていた、岩山の南側にはホーンラビットが居る草原とその先に深い森が広がっている。

 千里眼スキルは、ダンジョン入り口に設置した監視カメラの映像を見る様な感じでダンジョン内の何処にいても外の様子を見る事が出来る。

 遠くを人間が歩いている、四人連れか、そう思った瞬間に一人がこちらを見た。


 見つかった?


 目が合った様な気がして、思わず息を止めた。


 四人は冒険者だろうか、その後はこちらを見る事も無く何か話をしながら歩いている。

 気のせいだったのかな、安心しかけたその時、四人が足を止めてダンジョンの方に向きを変えて近づいて来た。


 私はダンジョンマスター部屋の中で、どうにかやり過ごせないか考え込んだ。


 四人がダンジョンに侵入してきた。四人の話声が聴こえる。


 えっ勇者?


 今、勇者って聴こえた、勇者パーティなの?


 ダンジョンポイントの一桁目がデジタル時計が秒を刻む様に増えて行く


 私はダンジョンモンスターを召喚してボス部屋に配置して、部屋に引きこもった。




 セイヤ 人間 勇者 Lv:999 HP:999,999 MP:999,999

 マリア 人間 聖女 Lv:600 HP:400,000 MP:800,000

 ミリア エルフ 魔法使い Lv:72 HP:480,000 MP:960,000

 タケル ?? 槍使い Lv:25 HP:2,000,000 MP:3,000,000


 −−−−−


 微かな視線を感じた。セイヤは少しだけ顔を左へ向けて視線の元を確かめる。左側に続く岩山には変化は見られない。

 此処は飛龍の巣がある東の高山へ向かう途中の草原、右側には深い森が広がっていて左側には岩山が東西に長く横たわっている。

 視線を感じた場所の近くに着いた時、危険な気配は無かったが気になったので、他の三人に声を掛けた。


「皆ちょっと良いか、あの辺りから何か感じたから調べて良いかな?」


「良いですよ」


「良いよ、あれは洞穴かな」


「気になるなら調べましょう」


「それじゃあ付いて来てくれ」


 近付いて行くと岩山の凹みに見えた場所は右に曲がる洞穴の様だ


「洞穴だね、ダンジョンかもしれない」


「気を付けてね」


 慎重に気配を探りながら洞穴に入ると、何回か曲がりくねった場所を過ぎると少し広い場所に出た。洞穴の先はそこから5方向に向かっている。

 広場で足を止めて相談する。


「これはダンジョンかな」


「そうみたいだね」


「攻略するの?」


「そりゃ、セイヤなら攻略するでしょ」


「セイヤはダンジョン好きだもんね」


「勇者だからね」


「勇者は関係無いだろ、出来れば攻略したい」


「日程は余裕あるし四人なら直ぐに終わりそうだね」


 そして四人で通路を進むと、遠くに見えたホーンラビットが逃げて行く。

 逃げた方へ行くと広い草地の場所に出た、中央に何かの木が一本立っている、近付くと湧き水の出る水場があった。

 ホーンラビットが巣穴から窺っているのが見えた。


「ここはダンジョンモンスターがいないな」


「そうね、ホーンラビットは逃げ出したから多分違うわね」


「俺の強さにビビッて逃げたと思ったのに、違ったか」


「ここってダンジョンなのかな」


「ダンジョンだと思うけど、普通のダンジョンでは無いね」


「取りあえず攻略すればスッキリする、行くぞ」


 そして探索を続け四人は扉がある場所に辿り着いた。


 扉は閉まっている。押したり引いたり聖剣で切り付けたり魔法で攻撃したりと試したが、開かない傷付かない。


 どうやらここがボス部屋の様だ。


 ボス部屋は侵入者を閉じ込めて決着がつく迄、誰も入る事は出来ない。


 誰かが挑戦している?


 先を越されてしまったか


「決着が付くまで待ちたいけれど良いかな」


「良いよ」


「ここまで来たら当然よね」


「そうだねここで待とうか」


 四人で前後を警戒しながら待つ事にした。


「そういえば、ボス部屋の中にいる冒険者がダンジョンモンスターを全部倒したのかな」


「ええ、その可能性もあるわね」


「一匹残らず倒すって凄いですね」


「この階層はそんなに広くなかったから可能かな」


 一時間もすると4人で背を向けて座り込んだ。


「ここってダンジョンだよな」


「確信は持てないけど多分ね」


「ダンジョンモンスターがいれば確信出来るのにね」


「罠も無かったな、罠を解除した痕跡も」


 四人は待機組と探索組の二手に分かれてもう一度ダンジョン内を探索する事にした。

 そして探索組が野菜や果物を収穫して戻って来た。その日はボス部屋の前で泊まる事になった。

 翌日も待機組と探索組の二手に分かれてダンジョン内を調べ尽くした。


 三日目にダンジョン攻略を断念して帰る事にした。




 二週間後に四人でダンジョンを訪れた。ボス部屋に向かうと扉は閉ざされたままだった。

 待機組と探索組の二手に分かれてダンジョン内を探索すると新たな通路が増えていた。手に入る果実の種類も増えていた。


 五日目にダンジョン攻略を断念して帰る事にした。




 今回は一週間でも十日でも張り込んでやると気合を入れてやって来た三回目、ボス部屋に着いてから一時間後に遂に扉が開いた。


 そこは半径10メートル程度の草原エリア


 四人がそのエリアに入ると入り口の扉が閉まった


 ダンジョンボスは何処だ?


 見回して視線を下げると


 そこにいたのは一匹の小さなスライム


 これがダンジョンボス?


 俺は直ぐに鑑定した


 スライム Lv:1 HP:1 MP:0


「レベル1だと?、偽装しているのか?、まさか鑑定が効かない?」


「皆全力で行くぞ」


「はい」


「はい」


「分かった」


 そして始まった勇者パーティの全力攻撃、聖女が複数のデバフをスライムに掛けた、魔法使いが火魔法で溶岩を浴びせた、

 槍使いが放った渾身の一撃が空ぶった瞬間、勇者の聖剣が槍を真っ二つにして地面を切り裂いた。


「ああー槍が―」


「躱された!」


「倒せなかったの?」


「何処にいるの?」


 武器を壊されて嘆く槍使いと倒した手応えの無い勇者の言葉に警戒する聖女と魔法使い。


 そして入ってきた扉と反対側にある扉が開いた。本当に倒せたのか疑問に思いながら四人は扉を出た。

 そこには地下への階段があり、階段を下りると作りかけの通路と閉ざされた扉があった。


「ここがボス部屋かな、先程倒したスライムはフロアボスだったって事?」


「あれが一階層のフロアボスならここもフロアボスの可能性があるね」


「どちらにしても倒せば答えは出るけど」


「ここの扉が閉まっていると言う事は誰かが戦っているの?」


「状況から考えると一階層と同じ何者かだな」


「問題はこの扉が次に開くのは何時なのかって事よね」


「一ヶ月後かあるいは」


「・・・・」


「帰ろうか」


「そうだな」


「そうですね」


「はい帰りましょう」


 帰る途中の通路にスライムがいた、隣には胡瓜が生っていた。何となく鑑定してみた。


 スライム Lv:1 HP:3 MP:0



「そのスライムはHP3だからフロアボスのスライムより強いぜ」


「ああ、例の鑑定結果ね」


「あれが正しいなら一撃で決着が付くだろうな」


「スライム同士って戦ったりするのか?」


「そんなの見た事ないけど、このスライムは食欲を優先しそうだね」


「それだと時間が掛かりそうだね、あっ!」


「「「あーっ」」」


 胡瓜を食べているスライムを見て呟いた一言で四人は答えが分かった気がした。そして次に思ったのは


「俺たち四人が全力で攻撃したんだよな」


「そうね」


「「・・・・」」


 気まずい空気が流れる中で俺は切り出した。


「あのフロアボスのスライムは強敵だった」


「そうだな、そう言う事にしておこう」


「そうですね」


「その考えないと、恥ずかし過ぎます」


 当分真実を確認するのは止めておこう。四人は密かにそう思った。




 勇者パーティと何時か仲良くなれるかな


 険者と敵対したくないダンジョンマスターはそんな日が来ることを願いながら今日もダンジョンを拡張する。




 勇者パーティの侵入者ポイント美味しいです


続きは未定です。


一階層フロアボスのドロップ品は林檎が一個です。

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