表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

ダンジョン設置場所は冒険者が気軽に立ち寄れる場所にすべし。

そうと決めてから約一週間後。

私達は王都にいた。


ここに来るまでも大変だった。

本来ならば隣町に当たる王都は三日で行ける距離だった。

だが、乗合馬車は軒並み乗車拒否。

つまり、徒歩で移動せざるを得なかったのだ。

馬を買うというの手もあった。

しかし、キールは馬に乗れなかった。

ついでに私も一人で馬を操れない。

なので断念して大人しく徒歩での旅路となった。

それでも旅路が順調ならば五日で着くはずだった。

だが、片や愛らしい少女、片や浮浪者のような男。

いやー、浮くこと目立つことこの上なし!

街道を歩けば盗賊に目をつけられ、町を歩けば憲兵に声をかけられる。

そのたびに本来の道から逸れて逃げる訳だ。

そう、逃げるのだ。

人外の癖に!!!

普通さ、三下的な奴がこっちを舐め腐って絡んできたら人外たる男が指先一本で相手を叩きのめすってのが定石じゃない?

その定石を無視して凄い勢いで逃げるの!

初めてゴロツキに絡まれた時なんて、余りに堂に入った逃げっぷりで、ゴロツキ共々ポカンとしてしまったわ!

挙句、ゴロツキに同情されて見逃されただけでなく、飴玉まで貰っちゃったわ!!

もう、すっごーーく恥ずかしかった!

本人は魔力さえあればとか言ってるが、こいつは基本チキンだと思う。

でなければ、偶々話しかけてきた幼女にまでビビって逃げ出したりしない。

まあ、そんな訳で絡まれる度に逃げていたら、不必要に時間をくって七日も到着にかかってしまったのだ。

本当に疲れた…。

私達は王都で一番グレードの低い宿屋に宿泊する。

酷く嫌な顔をされたが個室から出ないことを条件に宿泊が許可されたのだ。

なお、旅費と宿泊費用としてドラゴンの鱗を一枚換金した。

現在金貨十九枚(金貨一枚ここに来るまでに使用)とドラゴンの鱗四枚となり、まあ、人間の生活を送る分には暫く困らない。

「で、王都まで来たからにはダンジョン設置するわよ。」

「遂に我が家が…!」

感無量とばかりに拳を握る。

「そこで、ダンジョンを設置するのにどの程度のポイントが必要になるのか教えて頂戴。」

「うむ。まず、ダンジョンの見た目を選ぶ。

その後、ダンジョン作りにポイントを支払う。

まず見た目で一番安く済むのは普通の洞窟型だな。

これがポイント二百。」

「一番高いのは?」

「最も高いのは城型のダンジョンでポイント一万」

「お高い!と、いうかそんなの支払えるダンジョンマスターがいるの?」

「最初は安く済ませて、ポイントを蓄えて手に入れるというのが一般的だな。」

「人間の買物と変わらないわね。」

「まあ、『買う』『支払う』という表現を使う事もある」

「成る程…。と、いうか生まれたてほやほやなダンジョンマスターはどうやってポイントを貯めるの?」

普通にしてたら貯まらないのは彼が痛いほど理解している事だろう。

「生まれたてのダンジョンマスターはカーミラ様より御祝儀として三千ポイント貰える。

それを使ってダンジョンを作るのだ。」

「……つまり、私達はその三分の一のポイントでダンジョンを作るわけね。」

「…そうなる。」

費用の圧縮計画を早急に立たねば!

「まずは外見は一番安い洞窟で決まりだな。」

「…まって!」

私は待ったをかける。

何せダンジョンは通勤の関係で街中に作らねばならないのだ。

王都内ど真ん中にいきなり洞窟はおかしいだろう。

「おかしいと言われても、ポイントがないのだから仕方ないだろう。」

むっとして言われてしまうが、果たしてそうか。

「見た目をすっ飛ばしてダンジョンって作れないの?」

「は?」

眉を寄せてキールが言う。

「意味がわからない。」

「つまり、外見は既にあるものを使用する。」

「?」

まだピンと来ないようだ。

「例えば、王都内に使われていない古城があったとする。」

「ふむ。」

「そこにダンジョンを作れば?」

「…玄関は人間が作ったもので代用するということか。」

ダンジョンとは言わば建物である。

それも人外が作る建物だ。

外見を選んでダンジョンを作るという言い方をした時点で『外見』と『ダンジョンを作る』は分離している。

分離しているならば、節約可能であろう。

でなければ分離している意味がない。

大体洞窟の外見だろうが城の外見だろうが中身は迷宮並みの広さとなるのだ。

外見なんてどうでもいいはず。

ならば、既にあるものを持って来るべきだ。

「だが、何にする?」

「そうね…。明日は王都巡りしましょうか。

探せば長年誰も住んでない屋敷とかあると思う。

その屋敷にダンジョンを設置してしまいましょう。」

不法占有だが人外にそんな常識は通用しない。

「成る程。では明日は王都巡りだな。」

「ええ、それよりも重要な事があるわ。」

「なんだ?」

「私の家。」

いつまでも宿屋暮らしはよろしくない。

明日は不動産巡りもしなくては。

「まずは職場を決めないと自宅を決められないから早急にダンジョン設置場所を検討しなくては…」

「私も早く家が欲しい。」

私達の思いは図らずも同じとなった。


そして翌日。

私達は王都巡りをしていた。

隣町に住んでいた癖に今日まで来た事がなかったのでとても新鮮である。

王城を中心に城壁に囲まれた王国最大の広さを誇る都市である。

観光目的に歩く者もいれば、この地に根を下ろし生活している者もいる。

人は常に多くいてさらに流動的でもある。

また、人間だけでなく、獣人、エルフなど多彩な人種が大きな迫害もなく平和に暮らしていたりもする。

まさしく、当初の目論見通りここでダンジョンを開けばさぞや色々な種類のお客様がご来店してくださるだろう。

問題は店舗だ。

どこに店舗を構えるかが焦点になる。

王都をじっくり見て回った結果、予想通り空き家は数多くあった。

元貴族が住んでいたという立派な屋敷から掘っ建て小屋まで種類は豊富。

場所も王都の真ん中一等地から外れの外れまで。

選び放題である。

王都の一等地はやめた方が無難だろう。

そんなところにダンジョンが出来たら即効で駆除する。

かといって外れでは、このたくさんの人たちが来てくれるとは思えない。

栄すぎない程度に栄えている場所…。

本気だして駆除するまでもないと思わせる場所がベストだ。

と、なると貴族が近くに住んでいるのはアウト。

でも貴族が通えない程遠かったり道が整備されてなかったりしてもアウト。

さらに、私が住む家の家賃が高すぎてもアウト。

王都の物価が隣町の一割増しなのが気にくわない。

丸一日、王都を巡って足が棒のようになってしまったがこれといってベストな場所がなかった。

私達は公園のベンチに腰掛けて一休みする。

私は水を銅貨一枚で買って飲む。

キールは飲食不可なので金のかからない良い男だ。

「どうだ?」

「んー、ピンとこないわねぇ。」

私はぼんやりと考える。

ベストな場所って案外ないなぁ。

もう迷いすぎてわからなくなってきた。

ここは一つ初心にかえろう。

我が社の来訪客は冒険者に限定しない。

しかし、メインの客層になるのは間違いない。

ならば、まずはメインの客が通いやすい場所に設置するべきだろう。

冒険者にとって通いやすい場所とはどこか?

はっ!

私はベストな場所に気づき立ち上がる!

そう、確か空きもあったはずだ!

「あったわ!ダンジョン設置場所に相応しい場所!」

「何!?どこだ!」

冒険者が通いやすく、たとえ貴族でも安全に通える場所。

子供も大人も女もそこでは対等になれる場所。

それでいて政治的に王家が強く出れず、王家勅命での駆除が不可能な場所!!!

そう、その完璧すぎる場所それは…


「冒険者ギルドよ!」

確か二階に空き部屋情報があったわ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ