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我々のダンジョンは九時開店五時閉店を目指します!

さて、財産はないよりかはマシではあるが、悲しいくらいに少ない。

しかも、魔力が千十三ポイントと端数が存在するのが気になる。

おそらくこの端数をやりくりして彼は生きてきたのではなかろうか。

「まさしく。ダンジョンの外でも絶望や恐怖は存在する。

しかし、ダンジョン内部とは違いそれを取り入れても魔力への変換率が悪く常に弱者のままであった。」

「変換率…」

「これは私の感覚なのだが、ダンジョン内部と外部では同じ量の絶望と恐怖を手にしても魔力になる量が違う。」

「その恐怖や絶望は数値に直せないの?」

感覚的なものは厄介だ。

「…難しいな…」

「なら、基準を作りましょう。人間一人が生み出す恐怖と絶望を百とした場合、ダンジョン内部と外部ではどのくらい差が生まれる?」

「人間は個人差が大きい。男と女、手練れと新人、年齢、宗教観などで生み出される恐怖や絶望量には開きがあるぞ。」

「それはわかってる。でも、今は情報がないのだからそういうところは考えないで数値化する。

共有出来る基準があれば見通しが立てやすくなるし、その後集めた情報を元手に変更を加えていけば正確な数値は導きだせる。

何より多くの絶望や恐怖を生み出す奴を狙って呼び込めば効率よく恐怖や絶望を手に入れられるってものよ。」

「おー。」

パチパチパチパチ

キールが拍手する。

「ならば、あくまで感覚だが、その例でいけばダンジョン内部ならば百丸々魔力ポイントに変換可能だが、外部だとその百分の一に減少する。」

「外だとたったと一ポイントしか手に入らない…」

ならば、早急にダンジョンは必要だな。

「だが、手にした恐怖と絶望はカーミラ様に半分捧げなくてはならない。」

「え!?それっていつ捧げるかこっちで決められないの!?」

私の問いに頭を横に振るキール。

まじか!

最初は奉納しないでいこうと思ったのに、まさかの強制徴収!

しかも、半分ってえげつない!

さすがは邪神を名乗るだけはある!!

「と、いうことは、今の例でいうとカーミラ様に捧げる分を差し引いたら五十ポイントしか手に入らない計算になるわけね…」

ずっと外にいた彼は本当によく生きていたと思う。

家なき子って辛い!!

だが、今の時点で焦ってダンジョンを設置すれば失敗するのは火を見るより明らかだ。

魔力はたくさん欲しい私達だが人が来すぎても問題なのだ。

何せこっちはダンジョン経営失敗者と初心者タッグ、せめて最初は誰が来訪しているのかきちんと把握、管理出来る人数がいい。

後、通勤がし難い場所は困る。

街から近い…と、いうか、街中に欲しい。

週五日ペースで街から出て日帰りする未成年奴隷はあまりに目立つ。

あと…

「ねえ、ダンジョンって閉じれるの?」

「意味がわからない」

「ほら、私は九時五時で帰る訳だけど、その間トラブルがあって呼び出されるのは勘弁なわけ。

つまり、ダンジョンも朝九時開店、夕方五時終了にしたいわけよ。」

「…聞いたことないな。」

「じゃあ、私が知らないうちに死ねばいい。」

「こらまて!それは奴隷の態度としてどうかと思うぞ!」

なにやらご立腹なキール。

「はいはい。で?聞いたことがある、ない、は置いておくとして可能なわけ?」

「ダンジョンが深ければ深い程冒険者は寝泊まりする。

まだ入って来てない冒険者をシャットアウトすることは可能だが、既に入って来てしまっている冒険者の動きをこちらの都合で決めることはできまい。」

「二十四時間営業休日無しってありえないから。

外部のお客様は明日の来訪をお待ちするとして、内部の連中か…。

…逆に言えばこいつらさえなんとかすればいいわけね。」

「…まあ…」

「どうせ、最初は魔力の関係で狭いダンジョンなんだし、寝泊まりする冒険者は来ないでしょう。

これは追い追い考えるってことで。」

「…どうにもならんと思うがな。」

「それをなんとかするのが魔力であり魔法でしょうが!」

ダンジョンに限定すればダンジョンマスターの魔法は通常の魔法より使い勝手がいいはずだ。

普通なら出来ないことも出来るはず!

「さて…」

私は彼から聞いた話を頭から整理する。


・魔力はポイント管理可能。

・魔力の元手は人間の恐怖と絶望。

・ダンジョン内部と外部での入手差により魔力の変換率に差異がある。

(その差はなんと百倍!)

・手にした恐怖と絶望は魔力にする前に半分カーミラ様に強制徴収される。


ここに私の希望を加える

・ダンジョンは九時開店五時閉店

・ダンジョンは街中設置必須!

・ダンジョン初期は冒険者の入退店管理をする。

・どんな人間がより多くの恐怖と絶望を落とすのか情報を集める

・ダンジョンでは可能な限り人は殺さない


殺人はしたくないが、何せ魔物が跋扈するのだ。

こちらが気をつけてもきっと死者は出てしまうだろう。

だから『出来る限り』だ。


それに、どんな人がより多くの恐怖と絶望を落とすのかを確認するうえで、冒険者以外の人間にも是非挑戦して貰いたい。

平民も貴族も王族も、勇者も魔王も、女も男も、子供も老人も。

誰もが挑戦したくなるようなダンジョンを目指そう。

ダンジョンをアミューズメントと捉えて運営してみてはどうだろうか。

あれ?それだと恐怖と絶望は生まれない?

いや、必ずこれは両立出来る。


だったら、最初の一歩、私達がダンジョンをどこに設置するか、だが。


「決めたわ!ダンジョンを設置する場所!」

「どこだ!?」

たくさんの人がいる場所。

多少怪しい人間がいても有象無象で有耶無耶にしてくれる場所。

それこそ、平民から王族までが住まう町。

我が国の首都にして王城を戴く王家直轄地!


「王都フォードブラットよ!」


王都のど真ん中に堂々とダンジョン構えてやる!







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