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転生令嬢チートに失敗して奴隷に落ちる

某日某月家、奴隷落ちした。


いや、前々からそうなるってわかってた。

どれくらい前からわかってたかというと五歳の時から。


早いって?

いや、しょうがないよ、五歳の時に前世の記憶を思い出して我が家のキャッシュフローの異常値に気づいちゃったんだから。


私は前世日本という国で銀行員をやっていた。

まあ、頑張っていい大学いって就職先が銀行なら学費の元はとれたと思うんだ。

まあ、転勤の多い職場なのがたまに傷だけどね。

でも、銀行に勤めて約5年。

まあ、新人から一歩足抜けしたくらいの頃。

仕事の流れがなんとなくわかってきて営業の楽しさが見えてきたかなって頃に初の転勤辞令。

行き先は飛行機に乗って一時間の大都会でした。

いやー、栄転栄転!

るんるん気分で送別会をして貰い、軽く酔っ払った帰り道。

トラックに跳ね飛ばされて帰らぬ人となりましたとさ。


その記憶が蘇ったのが五歳の頃。

そして、我が家のヤバさに気づいた。

この家、支出に対して収入がない!!

父親は物欲が抑えられない典型的なダメ男。

あれもこれもと買い続ける。

母親も同じく。

毎日毎日飽きもせず今日は晩餐会だ、明日は舞踏会だと渡り歩いていた。

当然、ドレスだ宝石だもその都度買い漁っていた。

凄い支出だ。

こちらの金銭を日本円に置き換えて計算してみたら月々数百万の支出!

対する収入は日本円換算で百万円ちょっと。

意外にあるって?

でもこれ正確には収入じゃないんだ。

独り立ちした姉が冒険者になって私達の食い扶持を稼いできてくれたお金。

つまり、借金。

姉が善意で無担保無利息で貸してくれていたから今までなんとか凌いでこれた。

それでも足りない分は貸金業者からの借入。

と、いうかこっちがメイン。

貸金業者から金を借りると利息が発生する。

その利息を姉から借りたお金で支払う。

すると、翌月まで返済は待ってもらえる上に、少しでも元本を返すとまた借りれるから、借金は減らないどころか寧ろ増える。

典型的な闇金業者にカモられているんだけど、そういう業者を取り締まる法律がないから、そういうのにカモられた私達が悪い訳で。

しかも、闇金業者は闇金業者を呼ぶ。

一社借りたら二社、三社と増えるのにそう時間はかからなかった。

そうなってくると姉の稼ぎじゃ足りなくなってくる。

それに姉だっていつまでも黙って金を運んできたりはしない。

時を追うごとに姉と両親は衝突を繰り返した。


そして、私が十六歳の時。

まあ、現在なんだけど。

姉は唐突に家に帰ってこなくなった。


両親はお金を運んでくる姉が戻らなくなって憤慨していた。

でも、私は違う。

姉は死んだと思った。

冒険者という仕事はモンスターを狩って、その討伐料金で暮らしている。

滅茶滅茶危険な仕事なのだ。

いつだって死と隣り合わせの仕事。

死なずに今まで来たのがおかしいのだ。


だが、姉の死で金の供給が止まった我が家の没落は早かった。

借金取りが押し寄せてあっという間に全てが剥ぎ取られてしまった。

屋敷、家具、貴金属、衣類、芸術品、とにかく、全てを売り払った。

売り払ってもなお足りない分は自分を差し出さなくてはならない。

つまり、奴隷落ち。



私は奴隷になる気のない両親に売られた。


まあ、こうなる前に前世の記憶でチートだろって思ったんだけどね。

私も頑張ったんだ。

でも五歳の子供の話なんてちっとも聞いて貰えない。

口を酸っぱくして言っても、子供扱いだし、両親はうるさく言われるのが大嫌いだから、そのうち私を煙たがるようになった。

両親の周りには悪い大人と馬鹿な大人しかいなかった。

私がいくら理路整然と現実を突きつけても悪い大人は私を遠ざけ、馬鹿な大人は私の話を笑い飛ばす。

漫画や小説のように子供の話を真摯にきいて、力を貸そうみたいな人は探してもいなかった。

そうこうしているうちに現在。

ええ、自業自得ですよ。


そして、今、まさに今!

奴隷商人が数枚の金貨を父親に渡し、代わりに父親が私を奴隷商人に押しやった。

「すまんな…」

と、涙を落とす父親。

ええ、ちっともすまんなんて思ってないでしょう。

今月はその金貨で残りの借金返済を免れるなとしか考えてないことは長い付き合いでわかります。

「お父様…」

私は潤んだ瞳でお父様などと呼び彼の顔を見上げた。

「レティシア…」

父親がさっさと行けよと言いたいのをぐっとこらえて私の名を呟いた次の瞬間!

「死ねえぇぇぇぇ!」

父親の股間を思いっきり膝蹴りしてやった!

白目を剥いて両膝をつき両手で股間を抑える父親と、前かがみになる奴隷商人。

せめて一発叩き込まなきゃ気が済まなかったのだ!!

正直まだ足りないから!!!


こうして、私は前かがみになってる奴隷商人の首根っこをひっ掴み奴隷市場へと向かったのだった。


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