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習いごとは魔術です  作者: サフト
1章 魔術を身につけよう!
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03 美里、あたふたパニック!

 

「その様な心配もご無用です。こちらから無理を言ってご息女をお預かりするのです。ミリィ様は身一つでお越し頂ければ、衣食住必要な物は当家でご用意させていただく手筈になっております」

 わたしはゲームの話からどうして家計の話に飛んだんだろ?

 そんなことを考えていたからアントンさんの話を聞き逃していた。



「あら、それなら助かるわぁ。ね、パパ」

「そうだなママ。アントンさん、家の美里をよろしくお願いします」

「ご両親からのご承諾に私の主人も喜ぶ事でしょう。こちらにお越しの際はミリィ様にこれをお持ちいただくよう、主人より仰せつかりました」

 大人の会話はどんどん進む。



 あれ、今お父さんから美里って言われた気がするんだけど……。

 お父さん、アントンさんにわたしの何をお願いしたっていうの?

 お父さんがアントンさんから小さな紺色の箱を受け取っているよ。

「境界越えの日時ですが、こちらはいつでも構いません。明日のお越しでも問題なきよう、うさぎ堂の店主には申請済みですので」



 キョウカイゴエってなに?

 うさぎ堂の店主……アントンさんは壱兎に何をシンセイしたの?

 わたしはあたふたパニックに陥って、和やかに話をするお父さんとお母さん、それとアントンさんの顔をぐるぐる見ることしかできなかった。

 なんかわたし置いてけぼりにされてるよーー!?




 アントンさんが来た時と同じように丁寧なお辞儀をして帰っていくと、わたしのあたふたパニックもちょっと落ち着いてきた。

 そしてむくむくとふくれ上がるのは『???』の疑問の種。

「今のは全部わたしの話をしていたの!?」

 わたしはもちろん二人に疑問を投げつけたよ。



 だって、三人はわたしがどうとか話をしてたんだよ。わたしの目のまえで。

 ちょっとくらい説明してくれても良いじゃない。

 大人って子供の知らないところで、なんでもかんでも勝手に決めちゃうことがあるからイヤになっちゃう。

 子供にだって、聞く権利や決める権利があっても良いと思うの。



 わたしが詰め寄ってもお父さんもお母さんも顔色一つ変えずにのほほんとしているんだから。

「あら、そうよ」

「パパ達は美里の習いごとについて話していたんだぞ」

 なんだ、わかってなかったのか?

 みたいに言わないでよね。

 わたしは探偵じゃないんだから、わかるわけないでしょう!

 今、習いごとって言ったけど聞いてないよそんなこと。

 わたしはアントンさんが持ってきた手紙を読んでいないんだから。



 そうだ、あの手紙!

「アントンさんが持ってきた手紙に何が書いてあったの?」

 そこを説明してくれなきゃわからないじゃない。

 なのに家の両親ときたら……。

「お? 美里に説明するのを忘れてたよ、あははは」

「あらぁ、そうだったわね。私達ったら興奮しちゃってうっかりさんだったわぁ。うふふ」

 あはは、うふふじゃないわよ!

 この親は〜〜っ!



「それでアントンさんはなんの話をしに来たの? キョウカイゴエとか、明日とか、うさぎ堂の壱兎ってなんのこと!?」

 わたしの疑問攻撃に二人は顔を見合わせた後ニッと笑った。

「だぁかぁらぁ、習いごとの話よ」

「それだけじゃないぞ。外国に留学できるんだぞ」

 遠足前夜の子供のようにわくわくとした表情の両親を前に、わたしの眉間にシワが寄る。

 二人は声を合わせて行った。

「「それもただで!」」



 ちょっと、待ってよ。

 なんの習いごとかも知らないのに、わたしの意見聞く前に勝手に話を進めちゃったなんて、そんなのってない!

「ただだからって、勝手に決めないで!!」

 子供が怒ったって、親にとっては大したことない。痛くもかゆくもないみたい。

「まあ、落ち着け美里」

「ちゃ〜んと説明してあげるわ」

 お父さんに両肩をポンポンた叩かれ、お母さんからはウィンクが飛んできた。




 二人の話によると…………。

 わたしが一週間前に出会った銀髪青眼の少年ユーリと、アントンさんはセーデルフェルトって言う国から来たんだって。

 地図のどの辺にあるのか聞いたら、セーデルフェルトは地球儀や社会の世界地図で探してもない国だって教えられた。

 どんな国か詳しく聞いてみたら、騎士や魔術がある国だって答えが返ってきたよ。

 答えになってないよね。



 そのセーデルフェルトには魔術士と言う人がいて、魔法のような力が使えるみたい。

 魔術士の中で一番偉くて強い魔力を持っているのが魔術師長で、アントンさんの主人。

 魔術士はセーデルフェルトには欠かせない役職で、魔術士になれる人はごく僅か。

 騎士と同じように国を守る役目があるから、魔力を持った人が途絶えるのは死活問題なんだって。



「手紙によると、セーデルフェルトにはその魔術師長ほど強い魔力を持つ人がいないらしいぞ。魔術師長からの手紙には、後任を探すためにユーリに境界越えをさせたと書いてあった」

 商店街を案内する前に、家に寄ったからお父さんもお母さんもユーリのことは知っている。

 ユーリと顔を合わせたのはお母さんだけだけど、後で色々うるさく聞かれたよ。

 どういう関係かとか、どこで知り合ったのかとかね。

 そういえば、初めてうさぎ堂で会った時のユーリは人探しがどうとか言っていた。



「じゃあ、ユーリも魔術士なの?」

「それは本人に聞いてみるんだな」

「ママ達知ってるけど教えてあ〜げない」

 この二人がこういう意味深なことを言う時は、何度聞いても教えてくれない。

 誕生日やクリスマスのプレゼントが何か聞いても教えてくれないのと同じ。

 はっきり言って家の両親、面倒くさい。



「なんでそれがわたしなの?」

 お父さんは自慢顔でわたしの頭をグシャグシャに撫でてきた。

 やめて! 髪が乱れるわ!

「手紙には一週間前にユーリが美里に会った時、お前に何かを感じたらしいと書いてあったぞ。さすが、パパとママの子だ!」

 いや、訳のわからないことで誉められても嬉しくないし。

「赤い糸でも見えたのかしらぁ。それとも美里ちゃんにビビッときちゃったのかしらね」

 お母さんはおっとり夢みる夢子ちゃんだ。

 余計な勘ぐりはやめてったら!



「他にはなんて書いてあったの? キョウカイゴエとか明日がどうとか言ってたよね?」

「大魔術師様が美里に会いたいらしいぞ。境界越えは説明が難しいなぁ。パパの専門分野じゃないからな」

「一度セーデルフェルトにおいでってご招待されたのよ〜。境界越えなんて難しいことはスルーしちゃえば良いのよ〜」

 結局、キョウカイゴエの意味がわからない。

 招待ね〜。なんだか怪しい。

「ちょっと待ってよ。習いごととか留学って言っていたじゃない。その話はどこから来たのよ?」

 二人は顔を見合わせ、エヘっと笑う。

「とりあえず見学だ。楽しいぞ〜、行ってこい」

「春休みは宿題もないし暇でしょ〜。旅行だと思って行ってらっしゃいな」

 ちょっと、今話そらしたわね!



 これがわたしが両親から聞いた話。

 普通なら信じないだろう話だけど、家の親はアントンさんの話を信じた挙句、まるまる受け入れちゃった。

 ロープレ好きのお父さんに、ラノベ好きのお母さんだからその手の話に順応してるのかなぁ。

 月にはかぐや姫がいて、宇宙人やサンタだっているって、言い張る二人だよ。

 この二人どこか感覚がズレているんだから、まいっちゃうよ。

 わたしの気持ちが追いついていかないのに〜。



「お父さんもお母さんも、大人なのに怪しい話を信じるんだね?」

 地図や地球儀に載っていない知らない国に行かされるなんて冗談だよね?

 二人とも騙されているんじゃないの?

 疑いの目でお父さんを見ると、お父さんは突然ポンっと手を打った。

「美里が疑うのもわかるぞ。そうだ! ちょっと待ってろよ」

 お父さんは受話器を取るとどこかに電話をかけ始めた。



「あ、もしもし俺だ…………。お前の店がゲートになってたなんてな…………ああ、わかってる他言はしない。そもそもこんな話、誰も信じないだろ。それでちょっと聞きたいことがあるんだが…………ああ、そうだ。セーデルフェルトって国についてだ」

 どこに電話しているんだろ?




お立ち寄りいただきありがとうございます。

4話〜更新ペースがゆっくりになりますm(._.)m

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