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習いごとは魔術です  作者: サフト
1章 魔術を身につけよう!
25/47

25 アメ玉のでどこが判明!

 

 ユーリが、まあ落ち着いてとエミリアを軽くなだめるとこっちに顔を向けてきた。

「ミリィの話し方ですが、全身にかゆみを伴うので、いつものように話していただけますか?」

 わたしの敬語って全身がかゆくなるの?

 それは大変。元に戻さないとだね。

「了解〜。敬語って大変だからこっちのが良いよ」

 言葉を崩すとエミリアが顔を赤くしたまま心配そうな顔をした。



「アレルギーでしたら、侍医に診ていただかなくては」

「そこまで酷くはないので心配には及びません。ミリィの言葉使いに関しては、以前のままで結構ですので。寛大に受け入れて頂けますか?」

 にこやかに語りかけるようにとエミリアに向かい合うユーリ。

 ユーリにキラキラとした瞳を向けるエミリア。



「ユリウス様がそう仰るのでしたら、わたくしは構いませんわ。ですが一つお聞きしても?」

「なんですか?」

「この方はどう見ても使用人の子供にしか見えませんが、クレーメンス様やユリウス様とはどういった関係の方ですの?」

 エミリアがわたしを胡散臭そうな顔で見てるよ〜。エミリアの中でわたしって変な子認定されちゃってる?

 ユーリは不思議そうに瞬きをした。



「ミリィが自己紹介したのでは?」

 しましたとも。あの赤面自己紹介を。わたしが頷くとエミリアも同じように頭を縦に振った。

「ええ、クレーメンス様のお宅に居候なさっていて、フクハンチョウとかビカイインと言う社交クラブに入っている方だとお聞きましたわ」

 お人形さんみたいなエミリアが言うと副班長も美化委員もお上品な響きに聞こえるね。



「ミリィ、いつの間にそんなクラブに?」

 もちろんこっちのクラブじゃない。クラブに入っている余裕がないのはユーリも知っているはず。そもそもどんなクラブがあって、どうやって入るのかも知らないから入りようがないよ。

「向こうの学校でのわたしの役割だよ」

「そうでしたか。たくさんの役をこなされていたとは、とても心強いですね」



 そんな大げさな役回りじゃないんだけどなぁ。

 副班も美化委員もクラブじゃないし。副班なんて、ジャンケン決めだから運だよ。

 説明するの大変だからそのままで良いや。

「それでユリウス様、この方はどういった方ですの?」

 エミリアはどうしてもわたしが何者なのか気になるらしく、ユーリに答えを求めてきた。

 不思議そうな顔でわたしを見てくるユーリ。



「こちらでの立場が居候と言うのは間違いでは?」

「違うの?」

「違いますの!?」

 あ、エミリアと声が被った。

「ミリィはご自分がこちらに来た事をエミリアに説明していないようなので、クレーメンスの代わりに僕が改めて紹介しますね」

「ええ、よろしくお願いしますわ」

「以前に話したと思いますが、ミリィはニジガオカから我が国へいらした魔術師見習いさんです」



 ああ、わたしって魔術師見習いだったんだね。でもちょっと訂正。

「見習いの見習いで〜す」

 にこっと愛想笑いするわたしをエミリアがうろんな瞳でチラッと見た。

「確かに以前、ユリウス様からそのようなお話をお聞きしましたわ。ではその方がこちらの……」

 エミリアは改めてわたしの身体に上から下へ視線を流すと、言いづらそうに切り出した。

「まだわたくし達と同じ年齢の彼女に大役が果たせるのでしょうか?」



 疑わしそうな視線を送ってくる。

 ちょっとは魔術が使えるようにはなったとはいえ、魔術師のオーラを感じないわたしにエミリアが何か思う事があっても当然だよね。

「ミリィは僕が見つけ出した人材ですし、クレーメンスも彼女の素質を認めていますので期待の人材ですよ」

 にっこりと言ってのけるユーリ。

 わたしってそんなに期待されてたの!?

 まだ魔術師になるなんて決めてないんだけどなぁ。

 エミリアは不満そうな顔を引っ込め取り繕うように笑った。



「そ、そうですわね。ユリウス様とクレーメンス様がお決めになられたのでしたら……わたくしにも何かお力になれる事がありましたら、お申しつけ下さいませ」

 ユーリがエミリアの手を取り、王子の微笑みを浮かべる。

「エミリアに力を貸していただけると助かります。ミリィの事をお願いしても?」

 エミリアの顔が真っ赤に染まっているけど熱中症、大丈夫かな?

 でも、目は生き生きとしてるから問題ないかな。



「もちろんですわ、何なりと!」

 ちょっと待ってよ、なんだかいや〜た展開を感じるんだけど。

 その予感は見事に的中。

「ではお言葉に甘えて。僕やクレーメンスに用ができた際には、ミリィに社交についての授業をお願いできますか?」

 そう来たか!

 これ以上勉強を増やされたらたまらないよ。



「ユーリ、それはどうかと思うよ。エミリア様にも都合があるし、わたしにも都合があるよ」

 勉強漬けの夏休みなんて受験生がすることじゃないの〜。

 イヤだよそんな夏休み!

 わたしの心の叫びは届くはずもない。それどころか……。

「このエミリア、ユリウス様とクレーメンス様のお力になれるよう尽力しますわ!」

 ユーリの提案にエミリアが乗っかったよ。



「よろしくお願いしますね」

 この二人はわたしの話なんか聞いていなかった。

 わたしをスルーして追加の授業が決まっちゃったよ〜。

「もう帰っても良いかなぁ。家に帰りたい」

 わたしの呟きは二人の耳には届かなかった。この話はもうおしまいとばかりに話題は別のことへ。

「ところでエミリア、クレーメンスに何か用事があったのでは?」

 ユーリの言葉にエミリアは思い出したように口に手を当てた。



「そうでしたわ、わたくしとしたことが。クレーメンス様にいつものアレをお持ちしたので、お渡ししようとクレーメンス様を探していたのですわ」

 アレってなんだろう、なんて思っていたら思わぬところからクレーメンスさんの乱れた食生活が発覚した。

「クレーメンス専用栄養補助食品ですね。クレーメンスでしたら今は温室にいると思いますよ」

 栄養補助食品って例の罰ゲーム的な味のラインナップのアメ玉に違いない。



 提供元はエミリアだったのね!

「ちょーーっと待った!」

「なんですの? 大きな声は淑女としてはしたなくってよ」

 さっそくエミリアからのダメ出し。そんな事はどうでも良いのよ。

「あのアメ玉って、エミリアが定期的に持ってきてるの?」

「そうですわ。ブローマン家の菓子職人が丹精込めて作った物をクレーメンス様がとてもお気に召したので、わたくしが時々こちらにお届けしておりますの。何か?」

 何かって、首を傾げられてわたしは次の言葉に迷った。



 どう説明したら良いの。エミリアはクレーメンスさんのために、あのアメ玉を持ってきたんだよね?

 良かれと思ってしているエミリアを傷つけずに、アメ玉持ち込むのやめようねってどう言ったら良いの?

 あのアメ玉がクレーメンスさんの健康に一役買ってるって信じてるみたいだし。



「急に黙り込んでなんですの?」

 エミリアって、プライド高そうだから初対面のわたしに言われたくないだろうな。

「あ〜いや、その……やっぱりなんでもない。忘れて」

 もう少し親しくなってからさり気な〜く言った方が良さそうだね。



「ミリィはあのキャンディが食べたいのに言い出せないのでは?」

 ユーリ、なんて事を言うの!

「それは違っ」

 否定の言葉はエミリアの声によって遮られた。

「まあ、そうでしたの。でもあのキャンディはクレーメンス様ようですのよ。どうしても召し上がりたいのなら別のを持ってきますわ」



 ユーリのバカ〜〜。話が変な方に向いちゃったじゃないの。

 エミリアが嬉しそうにしてる。この顔はわたしがアメ玉を食べたくて仕方ないって思い込んでる顔。遠慮したいのに断れない。

「いや、あの、無理にとは……」

 引きつりながらユーリを見ると、にっこり微笑まれた。これは確信犯?



「ユリウス様、わたくしそろそろ」

「ああ、そうでしたね。クレーメンスが待っていますね。僕はまだミリィと話がありますのでどうぞ」

「では失礼してわたくし温室に行って参りますわ」

 エミリアは優雅にお辞儀をすると、軽やかな足取りで温室がある方に歩いて行った。




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