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習いごとは魔術です  作者: サフト
1章 魔術を身につけよう!
16/47

16 魔術修行とフェルト語と。

いつもお立ち寄りいただきありがとうございます。

今回ちょっと更新が遅れてしまいましたm(_ _)m

 

 行きは異世界につながるゲート、うさぎ堂の冷蔵庫からセーデルフェルト王国に。

 帰りはクレーメンスさんの異世界転移術で境界があるうさぎ堂の冷蔵庫の中に飛ばしてもらう。

 異世界転移術は高度な魔術で、使うと疲労で眠くなっちゃうんだって。

 それを考えると、毎週末わたしがセーデルフェルトに通うのはどうかと思う。クレーメンスさんの青白い顔が紫色になったら大変だ。それに元の世界に帰れなくなっても困るからね。

 その辺を聞いてみたら。



「この前は職務の立て込みもあって、ちょ〜っと魔力欠乏症の症状が出ましたが、これからはスケジュール調整をし考えて使用するので大丈夫ですよ〜。それと国王様から貴重な食べ物の定期便が届くようにもなったので、そのお陰か回復も通常時より若干早くなっているのです」

 そう言ってクレーメンスさんはわたしに栄養満点だと言う『星樹の実』を見せてくれた。



 取扱注意の紙が貼られた木箱には、リンゴくらいの大きさでアーモンド型をした緑色の木の実が入っている。

 クレーメンスさんが木の実に向けて、円を描くように人差し指をクルクル動かす。

「星樹の実はこうやって魔力の熱でむきま〜す」

 木の実に触っていないのにパカッと二つに割れちゃった。

 赤紫色の実と小さな黒い種が沢山入っている。

 星樹の実を手に取ったクレーメンスさんが、すごいでしょ〜とわたしに見せてきた。

「こうやって横に切るとほ〜ら、お星様の形になっちゃうんです」



 星型の果物に心たりがある。

 確か元の世界でもこんな果物があったよ。

 親が商店街で八百屋をやっている友達がいて、遊びに行った時におやつに珍しいフルーツを出してくれたことがあったから。

 名前は忘れたけどね。わたしが友達の家で食べた果物と、星樹の実はあまり似てないけど切り口だけは似ている。

 中身の見た目はスイカに似た果物は、食べてみたらみずみずしさはあまり感じなかった。食感はバナナでイチゴみたいに甘酸っぱい味。

 まだ青いバナナにイチゴソースをかけて食べてるみたい。



「疲れが取れて頭がすっきりシャキッとしませんか〜?」

 特に何も感じないけど、美味しかったから気分的には効果ありになるのかな。

 クレーメンスさんが期待のこもった瞳でわたしを見てくるから、なんか言ったほうが良いよね。

「なんだかちょっぴり嬉しい気分になります」

 わたしの感想に星樹の実を頬張りながら何度も頷くクレーメンスさん。



 クレーメンスさんが体調は心配しなくても良いと言うから、わたしは毎週末セーデルフェルトに行くことになった。



 金曜に学校の宿題を終わらせて、土曜の朝にセーデルフェルトへ。フェルト語と魔術の訓練を受けて、日曜の五時には元の世界に帰ってくる。

 平日学校、週末異世界のわたしの二重生活が始まった。



 魔術って魔力を杖の柄の部分に付けた魔石に溜めて使うんだって。

 力が溜まると魔石が光って光は杖先に流れ力となって使うことができる。

 クレーメンスさんみたいに熟練した魔術師は、杖を使わず指一つである程度の魔術は使いこなせるようになるらしい。



 一流の魔術師の話はともかく、わたしが魔術を習い始めて数週間が過ぎた。変化のない杖に、自分に魔力があるのか不安になってきてる。

 才能がないのかそれとも杖作りに失敗したのか、じゃなかったら材料が悪いのか……。



 フェルト語の勉強をしながら杖を振り回してみても、わたしの杖ってば反応なし。

「電池を入れて光る魔法のスティックだったら良かったのに。こうやって高速フリフリしたら光らないかなぁ……」

「むやみやたらと振り回しても無駄ですよ。それより前回のテストですが、スペル間違いが多くありました。特にこの単語は二度目の間違いですね」

 ユーリがやったばかりの答案用紙をわたしの目の前に見せてきた。



 午前はクレーメンスさんから魔術を習って、お昼過ぎにユーリが来てフェルト語を教えてもらっているのだ。

 答案用紙を見たわたしは頭に手を置いた。

「あちゃ〜、また間違えちゃった」

「はい、おでこ」

 にっこり微笑むユーリの手にはトランプのカード大の白い紙。紙にはわたしが間違えた単語が書いてある。

 うっ、と怯むわたしにユーリはお構いなしにおでこやほっぺたに紙を貼っていった。

 これをなんとかやめて欲しいのだけど。



「顔に貼っても覚えられないよ」

 わたしが口を尖らせ抗議すると、ユーリは何度も頷いた。

「ええ、そうですね。文字が反転しては読みづらいでしょうね。では、こうしましょう」

 ユーリはわたしのおでこから紙を一枚剥がすと、今度は文字の書いてある方をわたしに向けて貼り付けてきた。



「これなら読めますね」

 満足そうに頷くユーリ。

 そういう問題じゃないよ。

 こんなに目の前に貼られて読めるわけない。顔じゅうに貼るのはやめて欲しいな。

 それになんだか、ユーリに遊ばれてる気がするんだよね。




 わたしが魔術を習って一ヶ月後。

 元の世界では五月の連休明けになる。

 今までなんの反応も見せなかった魔石が淡く光ったからもうびっくり!

 あまりに嬉しくて、ユーリの手をとって飛び跳ねちゃった。わたしの反応にユーリは苦笑してたよ。

「落ち着いてください、まだこれからです」

 魔術の道は長いみたい。

 イノシカを撃退した時に偶然現れた線香花火のような丸い玉。あれを杖先に出せたのは元の世界で梅雨入りした頃。

 わたしが指一つで魔術を使えるようになるのはまだまだ先。



 魔術訓練はひたすら杖に念力を込めて振り続けるのかと思っていたら、そんなことはなかった。

 線香花火の火玉、杖に魔力の光を灯せるようになったわたしはステップアップ。

 今までイメトレをして光を灯す訓練をしていたのが、これからはクレーメンスさんが出す課題をこなす方法に変わったのだ。

 その課題なんだけど、ちょっと変わっている。

「床を拭いてみましょ〜」

「玉子の殻を割ってみましょうね〜」

「今日はちょっとレベルアップして、ブーツの紐結びで〜す」

 日常生活を手を使わずに魔術ですることから始まった。

 魔術の基礎は生活からなんだって。



 時にはクレーメンスさんからおつかいを頼まれて、それを魔術を使ってこなしていったりもする。

「泉の水を汲んできてくださいね〜」

「薬草を採ってきてくださ〜い」

「この種を土に植えて、魔術で育てましょ〜」

 今まで手を使ってやってきたことが、魔術でささっとできちゃうのはすごく便利。

 わたしにはまだささっと、とはいかないけれどいつかはユーリみたく簡単にできたら良いな。向こうの世界で使えないのが残念だけど。



 クレーメンスさんから出される課題は一日で達成できるわけじゃない。

 いくつかの階段を上るようにして完璧にできるようになる。

 例えば課題の最終目標が泉の水汲みでも、それができるようになるまでには、達成しなくちゃいけない小さな項目がいくつかあるのだ。

 水の塊を作って空中に浮かせましょうとか、ぷよぷよ浮かせたまま持ち運びましょう。などなど。

 小さな目標を達成しながら一つずつ身につけていく。



 昨日は魔術を使って上手に土を掘れたけど、今日は薬草を摘んでからカゴに入れる前にしおれて地面に落ちちゃったりもする。

 簡単にクリアできたり、上手くできずに苦戦したりするから、魔力を上手に使いこなせるようになっていくのもけっこう大変なんだよ。




次回はユーリ視点になる予定です。

不定期更新になってしまうかもしれませんが、お立ち寄りいただけたら幸いですm(_ _)m

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