序章 少年は今日も夢を見る
タイトルは全く考えていなかった見切り発車の投稿です
今日もまた夢を見る。相も変わらず同じ夢。
僕が見たことがない景色。知らない街。そこで仲良く歩く一組の家族。
今夜の夕ご飯の話をしているのだろうか。和気藹々とこの料理が好きだとか、あれは最近食べてない、など話している。
僕が立っているところからでは両親の顔は見えない。でもあれが僕の両親だということはなんとなく解っている。
なぜなら両親の間で幸せそうに手を繋いでいるのは紛れもなく「僕」なのだから。
『待って、僕はここにいるよ』
いくら叫ぼうとしても声が出ないし。足も動かない。
顔を見たい。触れたい。抱きしめて欲しい。
欲求は膨らんでも体がそれを叶える命令を無視する。
今にも泣き出しそうな僕に、もう一人の「僕」だけがこちらに気付き近づいてくる。
そして「僕」は決まって僕の隣に立ち、囁く。
『ーーーー「僕」は俺一人で十分だ。お前はいらない』
これは夢だ。悪夢だ。
物心つく前に両親には捨てられたのだから、あれはきっとこうであって欲しかったという幻想だ。
でももう忘れなくてはならない。こんな僕にも「守りたい存在」が出来たのだから。
弱さなんて見せてはいけない。欠点ばかりの僕だけど「彼女」の前では強くいなければならない。
せめて「大切な人」と交わした最後の約束だけは守らなければ。
そうしなければ無くなってしまう。
こんな僕がこの世界でーーーー生きる理由が。