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Artificial Selection  作者: 宮本護風
第一高校編
4/15

出会い 3

クロエは寮の部屋で、鳥たちの鳴き声に起こされる。昨日は職員に寮の生活の説明、学校の規則、制服についてや、成績の決定方法などの説明を受けているうちに、すっかり日が暮れてしまい、登校は明日からということになった。


(気持ちのいい朝ね。日本は自然が私を目覚めさせてくれるのね)


そう思いながらクロエは父に教えられた日本の素晴らしさを早速感じられたような気がした。クロエはおもむろにベッドから身体を起こし、学校に行く準備を始めた。昨日支給された制服に袖を通し、なんだか新鮮な感じにとらわれる。


(今日は初めての登校日だから、いい印象を持ってもらえるようにしないと!)


クロエは初めての登校に意気込んでいた。だがもう一つ、気がかりなことを心に残していた。


(INOで一番の能力の持ち主か……)


昨日職員から聞いた話がクロエの頭から離れなかった。朝の支度をしながらそのことについて考えていると、今日からはそれを見極めるのが専らの自分の義務だとクロエは思った。


髪の手入れも済み、香水もつけて、出かける支度は整った。


「それじゃあ、行くわよ! 今日も頑張っていこう!」


クロエはそう自分を奮い立たせて寮の部屋から飛び出して、学校へと向かった。




寮から学校までは、大きな道が伸びている。クロエはその道を歩いていた。周りの生徒たちはクロエに注意を向けっぱなしでいる。


「おい、お前、あの女の子知っているか?」


「知らねえな。転校生じゃないのか?」


「すごく綺麗な子だな……」


多くの男子生徒たちがクロエに釘付けになる。無理もないだろう、彼女の美しさは初対面の人間ですらも惹きつけるものであった。


「どうしてみんな見てくるのかしら?」


クロエはそのことにまるで気づいていない。クロエは謙遜しているようにも取れるし、周りには嫌味を言っているようにも見えた。


クロエがしばらく歩いていると、みんなが急ぎ出す。


「おい、もう始業時間だぞ!」


「マジかよ!? 遅れたら大目玉くらっちまうぞ! 急げ急げ!」


そんなやり取りが繰り返され、クロエの周りからは、すっかり人がいなくなって、クロエは道に一人ぼっちになってしまった。クロエは転校初日ということもあり、まずは職員室に向かうことになっていたので、登校時間も遅めに設定されていた。クロエは急ぐ必要はなかった。


それからしばらくすると、後ろから駆けてくる音が聞こえる。


「遅刻だ〜! 早く行かないと〜!」


その女生徒は前を見ずに走っていた。クロエが気づいて、後ろを見たときにはもうすでに遅かった。


「きゃっ!」


クロエと女生徒は大きな音を立ててぶつかる。二人はその場に倒れこんだ。


「いててて。すみません、大丈夫ですか!?」


女生徒はすっと立ち上がり、倒れこんでいるクロエに安否確認をする。


「うーん……。 ええ、大丈夫よ。少し痛かったけどね。前を見て走らないと、今みたいにぶつかっちゃうわよ、気をつけるようにしないと」


クロエは女生徒に注意をする。


「はい、ごめんなさい……」


「わかってくれればいいのよ。私はクロエ=アシュフォード、今日この学校に転校してきたの、宜しくお願いします。あなたのお名前は?」


注意を受けて落ち込む女生徒に、クロエは自己紹介をする。


「私の名前は九条愛佳です! こちらこそお願いしますね! わからないことがあったらなんでも聞いてください!」


小柄で前を向いて走ることもできない愛佳にそう言われても頼りにならなさそうだとクロエは心の中で、申し訳なさを持って思った。


「私のことはクロエって呼んでね。愛佳って呼んでもいいかしら?」


「はい、愛佳って呼んでください! それにしてもクロエさん、とっても綺麗ですね! 美しすぎて思わず見とれてしまいます……」


愛佳はクロエをじっと見ている。


「ありがとう、お世辞でも嬉しいわ。それより敬語なんて使わないで。もっとフレンドリーに行きましょう?」


「そうですね! あっ、早速使っちゃった……」


愛佳の天然っぷりに思わずクロエは吹き出してしまう。


「笑わないでよ! クロエひどいよ!」


「うふふふ。ごめんなさい。それより急がないと、遅刻するんじゃないの?」


「そうだった! 急ごう!」


愛佳はいきなり駆け出す。クロエは思わず置いていかれそうになる。


「待って愛佳! 私を職員室に連れて行ってはくれないかしら? まだこの学校のことよくわからなくて……」


「わかった! じゃあ私についてきて!」


そう言って愛佳は再び駆け出す。


「待ってったら!」


クロエも必死にそれについていく。愛佳は遅刻が掛かるととても足が速くなるようだ。そんなことを思いながら、クロエも走っていた。


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