表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TOKYO DUNGEON  作者: 心
7/10

冒険者ギルド

「それでは冒険者ギルドについてご説明させて頂こうかと思っているのですが、坂江様は冒険者ギルドの事をどれくらいご存じですか?」


 〈綺麗なお姉さんに様付けされるのって何かいいな…いやいや、違うだろ俺!〉と俺の心の中の天使と悪魔が戦っているが、今は涼音さんの質問に答えなければ!!俺は頭の中の邪心を振り払うと質問に答えた。


 ギルドについてはダンジョンに入るための許可証〈ギルドカード〉の発行と素材の買い取りしか知らないので、それをそのまま伝える。


「その認識で間違いはありませんが、冒険者様のサポートや他にもクランの申請や受理、クエストの斡旋や修練場の貸し出し〈無料〉、戦闘スキルを習得出来なかった方への生産ギルドへの斡旋などのサービスを行っております」


冒険者ギルドとは俺が思っていた以上に色々とやっているようだ。


その色々がよくわかってない訳だけど…。


「色々質問しちゃってもいいですか?」


「はい。わからないことがあれば何でもどうぞ!」


 〈この人、笑顔だと可愛いのね!敦士兄ちゃん…何だか俺もわかるよ…!〉


哀愁を漂わせて2階へ行った、いや、逝った自分の義兄弟の姿を思い出しながら遠慮なくこの時間を楽しむべく質問を始める。


「修練場の貸し出しっていうのは何となくわかるのですが、クランの申請と受理、クエストの斡旋と戦闘スキルを習得出来なかった人への生産ギルドへの斡旋っていうのは?戦闘スキルを習得できない人なんているんですか?」


「それでは順番にご説明させて頂きます。クランとは一定の目的を達成するために集まった5人以上の集団のことを指します。パーティーが大人数になったらクランになると思っていただければわかりやすいでしょう。ちなみに複数のクラン、または複数のパーティーが集団でダンジョ攻略の為に集まることをレイドともいいます。レイドは最前線でしか組まれることは殆どありませんけどね。冒険者ギルドではその設立申請、受理を行うことができます。次にクエストの斡旋というのはギルドや個人から発行される任務だとお考え下さい。例えば…〈○○ダンジョンの○層にいる○○からドロップする○○を○個獲ってきて下さい〉とかがわかりやすいですね。このような依頼を私たちが斡旋し、それを冒険者様が完遂することでお金が支払われるというシステムになっています」


 なるほどなぁ…。クランは大多数、パーティーは少数って感じね。


ルーキーの育成をやっているクランもあるようだし、素性を知っている人たちとダンジョンに入れるなら安心だ。クランに入るのもいいかもな…。


次に説明されたクエスト!これは重要だ!クエストを受けてダンジョンに潜れば魔石と資源とクエストの報酬で一石三鳥だ。


〈敦士兄ちゃんに初級の中層くらいはソロで大丈夫だと言われてるし、パーティーを組めば頭数で分配になってしまう。一石三鳥を考えると収支によってはさっきの冒険者のようにソロのメリットもあるなぁ。ま、そこはダンジョンに入ってみて考えるか…〉


「最後の質問にお答えしますね。先に答えを言ってしまうと、戦闘スキルを習得出来ない人はいます。ステータスが使えるようになって初期表示に戦闘スキルが無い場合、半年間、ダンジョンに潜り続けて戦闘スキルが1つも習得できなければ、生産スキルに強い適性があると考えられております。逆に生産スキルを全く習得出来ない人もいれば、両方に強い適性を持った冒険者様も中にはいらっしゃいます」


 〈クランとかパーティーとかソロとかそんなこと考えてる場合じゃなかった!?え?ってことは俺も戦闘スキルが無い可能性もあるってことなのか!?〉


「その…習得出来る出来ないっていうのは何か理由があるんですか?」


 涼音は少し困った顔をすると、少し申し訳なさそうにぱっちりした目を上目使いで俺の質問にしっかり答えてくれた。


〈この人怖い!絶対に自分の魅力がわかってる!わざとだろ絶対!?〉


「申し訳ありません…。スキル習得には謎が多く、経験値と言う人もいればセンスと言う人もいますし、実際のところ私たちも冒険者様も習得条件はよく知らないしわかっていないんです。それこそダンジョンから帰ってきたら見たこともないスキルを習得していたとか、やったこともない剣術を習得していた…何て話もあるぐらいです。お力になれず申し訳ありません。ですが心配しないで下さい。ここ『東京』では戦闘だけが全てではありません。生産ギルドにも億万長者は沢山いますので」


 〈励まそうと思って言ってくれてるのだろうけど、俺が東京にきた目的は億万長者にもなりたいけどッッ、そうじゃないんだよ……!!〉


 そんなことを俺が考えているとハッと思い出したように涼音さんが話始めた。


「あ、どうせスキルの話をしたのなら1つご忠告を。ダンジョンに潜る冒険者様はレベルとユニークスキルは勿論、スキルの情報は他人には漏らさないことをお勧めいたします。ダンジョン内では犯罪の立証が難しく、レベルとスキルから弱いと判断されれば襲われる可能性もありますので他言する際はお気を付け下さい。わざとルーキーをパーティーに誘って後ろからバッサリなんてことも過去ありましたので」


あれ?やっぱりそんな物騒なんですかダンジョン。ペルソナちゃんと仕事しろ!


「ダンジョンは無法地帯ってことですか?街は治安が良さそうですけど…。それとユニークスキルって言いましたけど何ですかそれ?」


「勿論、ダンジョン内も法律は街と同じです。ですが殺されて死体を燃やされたり、埋められてしまえば、冒険者様は行方不明という扱いになり、モンスターにやられたのか人間にやられたのか判断出来かねます…。生きていればまだ犯人を探すこともできるんですが…。それとユニークスキルでしたね。ユニークスキルとは固有の特殊スキルです。ユニークスキルは習得条件は勿論、秘匿度が通常スキルよりも高く情報提供もあまりないためスキル数も不明です。しかし、そのどれもが強力なスキルであるという噂はありますね」


街の中は『ペルソナ』により治安は守られているとはいえ、ダンジョンまでその目が届くことはないのだろう。厳しい基準が設けられていて人員不足だって言ってたもんな。


それに燃やされたり埋められたらダンジョンを捜査したってわからないよな…。ダンジョン内を全部掘り起こせなんて言えないや。ペルソナの皆さん、さっきは仕事しろなんていってすいません。


「敦士兄ちゃんに聞いてはいたけど、クランに入るかしばらくは初級ダンジョンをソロで頑張ろうと思います…。ユニークスキルは是非習得してみたいですね。習得できればですけど…」


「フィールドの広いダンジョンは日帰りでは行けないのでソロでは厳しいかもしれませんが初級のダンジョンはそれほど広さもありませんし、最初は初級ダンジョンで力をつけるのがもいいでしょう。そんな遠い目をしなくても、ユニークスキルも通常のスキル同様ダンジョンから戻ったら習得していたとの報告もありますから頑張っていればきっと習得できますよ。さて、ギルドの説明は以上ですが何か質問はありますか?」


「いえ、大丈夫です。それにある程度は敦士兄ちゃ、兄さんに教わっていますので。」


「ふふふ、工藤様はあぁ見えてそれなりに腕が立ちますからね。それなら大丈夫でしょう。それではこちらの書類に坂江様のサインをこことここの2箇所にしていただけますか?サインを書いたらこちらの機械に両手、こちらの機械に毛髪を一本入れるか、このナイフで指を軽く切って血を入れてください」


敦士兄ちゃんはギルドからそれなりの信頼を得ているようだ。その言葉は自分のことではないが尊敬している人を褒められるのは嬉しかった。


流石に、自分の指を自分で切るのは抵抗があったので、棒状の機械に髪の毛をいれた。その後、指先まですっぽり包み込める血圧を測る機械のようなものに両手を入れると機械が作動し始めた。


涼音さんの話によるとDNA、指紋、静脈のデータを採っているらしい。「何でこんなにデータが必要なんですか?」と俺が言うと「ふふ、冒険者様には必要なことなんですよ?両手を欠損したらどうするんですか?」と言われた。聞かなきゃよかったよ…。


それから3分くらい涼音さんと親交を深めているとギルドカードが出来上がったようだ、涼音さんは俺にキャッシュカード程の大きさのカードを手渡してきた。


「こちらがギルドカードになります。利用する際は悪用を防止する為に静脈、指紋、DNAの3つのセキュリティーのどれかで本人確認をしますが、残高内でのクレジット機能や銀行、ギルドでの預金、引き出し機能もついておりますので紛失しないように気を付けてくださいね。紛失した場合は再発行に10000DYと日数が掛かりますのでご了承下さい。それではこれで登録のほう全て完了致しました。長い時間お疲れ様でした」



俺はお礼を言うと2階の酒場に敦士兄ちゃんを呼びに行くことにした。


2階に上るエレベーターの扉が開くとそこは1階の内装とはがらっと変わり、年季のきいた木材を使った酒場が広がっている。窓は無くお洒落なランプに照らされた樽のテーブルと大きな木製のカウンターはファンタジーに出てくるような酒場の雰囲気を醸し出していた。


酒場にはまだ時間が早いのか、ちらほらと人がいるくらいで空いている。


店内をぐるりと見回すとカウンターの端っこで小さくなって飲んでいる敦士兄ちゃんを見つけると俺は敦士兄ちゃんに向って言葉をかける。。


「ギルド登録終わったけど…?だ、大丈夫?」


葉はその光景が面白かったのか笑いを耐えなが敦士に喋りかけるが敦士はこちらの声が聞こえていないようだった。俺は敦士兄ちゃんの肩を叩く。


「あぁ…今、忙しいんだ。ほっといてくれ…。」


「敦士兄ちゃん戻ってきて!!!俺だよ!葉だよ!!!」


生気のない顔をした敦士が葉の必死の呼びかけで生気を取り戻す。


「お、何だ葉か…。登録は終わったのか?」


未だに涼音さんの言葉を引きずっているようだけど大丈夫かな…。


「終わったよ。顔色悪いけど、まだ涼音さんとのやり取り引きずってるの?大丈夫?」


「……。大丈夫だ…。うん…」


うん。大丈夫じゃないな。


「そんなに気にすることないと思うけど。兄ちゃんの事、腕の立つ冒険者だって褒めてた」


腕の立つの前には、あぁ見えてもって言葉がついていたが…。


「本当か!?涼音さんが!?俺のことをか!?」


俺の肩を両手でブンブンと前後に揺らしながら、俺を問い詰めてくる。


ちょっと!レベル6の本気のブンブンは駄目だって!!


「おち、落ち着いて!ブンブンは駄目!ブンブンは駄目!!ウヴォロロロロロ…」


その後、解放された俺はゲロを片付けにきたウェイターのお姉さんに軽蔑されながらも、俺はさっきの涼音さんとのやりとりを敦士兄ちゃんにはなすのであった。


ちなみに、しばらく酒場でブンブンゲロと陰でいわれていたのは葉は知らない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ